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君の隣を先約します。  作者: ゆきうさぎ
<第4章>
20/83

夏に恋は必要ありません(2)

午後5時00分。見慣れた、だけども少しばかり懐かしい校舎に私たちはいた。見知ったような、でもどこか知らないような、そんな人の集まりだった。よそよそしいといえばうそになるのだが、知らない仲というわけでもないため、話せばそれなりに仲良くなれた。


「よし、みんな集まったわね!」


この企画の幹事はどうやら美弥らしい。美弥は愛くるしい笑顔を振りふりまいて全体に話しかける。美弥の話によると、学校はただの集合場所だったらしく、ここから数分歩いたところでするらしかった。


「先に料理班が行って準備してくれてるはずだから」


その言葉を最後に、みんなで学校から出発した。何人かは自転車で来ていたため、私たちより先に行ってしまった。


「雪瀬さんが参加するとは思わなかったな」


歩いている途中、ひとりを狙ったかのように私に話しかけてきたのは焼けた肌が特徴的な男の子だった。背は時村ほど高くはないが、平均的に見れば高い方で、顏もどちらかといえばいい方だ。いかにも爽やかですと言わんばかりのその青年に私は「そう?」とあいまいに返事を返して前を向いた。


「だって珍しくない?雪瀬さんっていつもこういうの参加しないからさ」


いつもこういうのがあったんだな。そしてあんたはいったい誰なんだろうな。名前を教えてほしいんだけど。


「今日は美弥に誘われてきただけ」


そう、強制的に。超がつくほど強引に。誘われて、なんて優しい言葉は当てはまらないんだけど、それしか言いようがないから、とりあえずそう言っておく。また、あいまいに笑いかけて言葉を終える。と、そこへ美弥が会話に入ってきた。


「いいじゃない。直も暇だったんだし」


誰だよ、問答無用とか言って電話切ったの。私、あの電話で一度も暇なんて言葉出してないぞ。


「でもまぁお前に誘われたら断れないわな」

「なによ。私が怖いって言いたいの?」


いや怖いだろ。あれは一種の脅迫だからな、ほんとに。どうしてまかり通ってるのか不思議だよ。


「私時村君がくるなんて思ってなかったらすっごく嬉しい!」


物思いにふけっていたら、耳に甘ったるい猫撫で声が聞こえてきた。なにかと思って見れば、時村にべったりとくっつく縦巻きガールだった。時村は少し‥いや、だいぶ鬱陶しそうな顔をしてその子の受け答えをしている。やっぱり美少女でも女の子にもてるんだね。


「あー‥やっぱりああなったか」


隣で聞こえたブラックな小言はまさしく美弥ちゃんのもので。美弥のほうに視線を変えると、呆れたような、それでいてどこか軽蔑するような、そんな目の色をしていた。


「だったら何で呼んだのよ」

「あんなの呼ぶわけないじゃん。どこからか聞きつけて勝手に来たの。私了承した覚えないもの。ああいうのってうざいし、場の空気読もうとしないから嫌いなんだよね」


毒ついて吐き出した言葉に「たいして可愛くもないくせに」とさらに毒を吐いて美弥は彼女を見ていた。その様子を少し複雑に見ながら、私たちは目的の場所に到着した。目の前には青色と赤色が広がっていて、下はよく使われる色で表すならば水色で、上は夕日がきれいに染まった茜色だった。


「海だぁーー!」


美弥は潮風になびく髪をかきあげながら叫んだ。


「おーい!こっちこっち!もうすぐ焼けるぞー!」

「さっすが調理班!仕事が早い!そして私の人選さすが!」


美弥は最後に自分をほめてみんなが集まる場所まで走っていく。美弥に置いていかれた私は、はしゃぐ美弥に苦笑しながら、目の前に広がる海と夕日を見た。


「海なんて久しぶりに見た」

「空ばっかり見てるからじゃないの」


いつの間にか縦巻きガールに解放された時村が私の隣に来ていた。時村の言葉にからかうように返してやれば、時村は「違いないな」と笑って言った。


「縦巻きガールは?」

「なんだそれ?」

「さっきあんたの隣にいた女の子」

「そんな名前だったのか?」

「知らない。さっき私がテキトーに名前つけただけだもん」


気合い入れてセットしてきたんだろうなっていうのが一目でわかるよね、本当。私なんか寝起きの顏にぎりぎり化粧して寝癖整えてきただけだっていうのに。


「みんなと一緒に向こう行った」


時村があごで示した先には、確かにあの縦巻きガールがいて、となりにはなんだかチャラそうな男が立っていた。うん、ああいう方が似合うわ。


「そこの2人も水着に着替えなよー!」


名前知らないけど、見たことある顏の女の子が私と時村に声をかけてきた。そちらを見れば、女子が荷物を持ってどこかに行く姿があった。

…え、てか水着って言った?

……水着?


「あんたのこれね」


いつの間にか私の隣に来ていた美弥は「はい」と言って袋を渡した。水色の袋に入ったそれを見ると、中には茶色と白のストライプの水着が入っていた。

‥…あんたのこれねって‥。


「言い忘れたから何回もあの後電話かけなおしたんだよ?でもあんた出ないから」


寝てましたから。自分でもびっくりするぐらいぐっすり。


「だから持ってきたの」


だから着ろっていう副音声が聞こえてくるのは私だけ?

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