友達は悪魔のようで魔女でした(6)
凛久side
雪瀬を送って、家の前から走り去って、近くの公園で夜空を見上げていた。
3年生に上がってすぐの頃だっただろうか。家にいると、兄貴がいつもきまってある生徒の話をしていた。その子は男みたいな顔をした女の子だという。そう聞いた瞬間、その女の子を憐れんだけど、それでも顔がいいと聞いて、少しでも憐れんだ自分を悔やんだ。兄貴からいろいろと話を聞いていたが、実際には見た覚えはないし、関わることもないと思っていたから気にもとめていなかった。それがよくなかったのか、この前の生徒指導から関わりをもつようになってしまった。なにより兄貴のかなりのお気に入りで、職員室に行けば、必ずといっていいほどあいつは兄貴の隣にいた。連日で見たときはさすがに兄貴を疑った。惚れてんじゃないかって本気で考えた。本人は違うと否定したけど、あれは好きなんだと思う。そんな雪瀬が家で晩飯を作るようになった。まぁ兄貴がそう仕向けたみたいだけど。最初は俺は反対だった。これがばれたら、言い訳のしようがないからだ。でも、
「あいつの飯、すげぇうまいんだよなー」
まさしく胃袋をつかまれたってやつだ。それもがっつり。もってかれた。俺も、兄貴も。そのせいと言っちゃあなんだが、それ以来兄貴は飯を作ることを放棄した。はた迷惑もいいとこだ。飢えるっつの。見殺す気かって言ったら、雪瀬を家に呼ぼうとかわけわかんねぇこと言いだして、あげく明日もなって約束までこぎつけた。かなり強引なやり口だったと思う。俺だったらぶち切れてる。間違いなく。とか言って、俺も兄貴に便乗して雪瀬に飯作ってもらってんだけど。
そんなことを考えてたら、ポケットに入っている携帯が震えた。画面を見れば、さっき電話をしたオーナーからだった。明日バイトに入れだったら嫌だなーなんて考えながら、出ないわけにもいかないため、嫌々ながら携帯を耳に当てた。
「どーしました?」
「あの子、もう一回誘ってみてくれない?」
内容は予想とは全く違うことだった。
「なんでまた、」
「お客さんで、彼女の顏だけ見た方があの子探してたから」
「‥ああ、」
なるほど。確かに顔だけ見ればイケメンだ。でもなぁ、
「ついさっき断られたばっかりですから。ちょっと無理ですね」
それだけ言って、俺は携帯の電話を切った。向こうからまだ声が聞こえてきてたけど、そんなの俺からしたら関係ない。
「………」
さっき。
俺はどうしてあんなにホッとしたのだろうか。どうしてあんなに安堵したのだろうか。時給が下がらずにすんだから?時給が上がったから?…雪瀬が話を断ってくれたから?もやもやした感情が俺の中に生まれる。なぜと考えればきりがなくて、俺はとりあえず空を見上げた。そしたら、ふとさっき雪瀬が呟いた言葉と呟いた雪瀬の横顔が浮かんだ。「きれー」と小さく言った雪瀬の横顔は本当に綺麗だった。‥って何考えてんだよ俺!顔がいいんだから、きれいに見えるのは当たり前だろ!
「…帰ろ、」
なんかもうよくわかんねぇや。寝たら直るだろ、このもやもや。
俺は公園のベンチから立ち上がって、家の方へと歩きだした。




