3階層 ー月の国ー 2
助ける…とは言ったがまずはアリュールをどうにかしなきゃならないな。
このままだと埒が明かないし開花状態だってずっと続くわけじゃない。
「…?」
その時、俺の目に映ったのは薄い糸だった。
本当に本当に薄い。
しかし、真力が練られた確かな糸。
「フンッ!」
おれはその糸を迷わず切った。
ドサっとアリュールが倒れ込む。
「なるほどね…。」
どうやらアリュールを操っていた構造は思っていたよりも単純だったらしい。
見たまんま、糸で操っていたのだ。
びびらせやがって!
しかし、種がそれだと分かったのなら正面からこのクソギツネを叩けるな。
『グラルル』
「唸り声特徴的すぎだろ。」
俺は炎を纏わせた刀を構える。
「来いよ。お前のその無駄に多い尻尾俺が切り取ってやるから。」
『グラァァアア!』
狐は吠える。
そして炎の塊を出現させた。
正面から食らうのは流石に痛そうだが後ろにアリュールがいるからな…。
攻撃ごと斬るか。
「【秋桜】!」
瞬間、俺の刀から放たれた赫い炎は細かく分かれて狐を切り刻む。
『グラァァアア!』
「うるせぇよ!」
そうして俺はまた畳み掛ける。
「【向日葵】」
俺は豪快に狐の首を切り落とした。
しかし、なんと再生しやがった。
「え」
『グラァァアア!』
「あっ、ちょまっ…ああああああ!!」
予想外の展開に俺は止まってしまい、狐にどつかれてぶっ飛ばされた。
いってぇな。
「いてててててて。」
擦り傷が増えたけどあんまり問題はないな。
それからなんか背骨もイッテル気がするけど問題ないな()
よし、何も問題なし!
さて、本当の問題はあの狐をどう殺し切るかだな。
あの再生速度は異常だ。
ゆっくり再生していくならまだしも首を切って瞬きしたらまた首が生えているなんてのは化け物すぎる。
しかし、ふと狐が振り回している尻尾に目がいく。
元は9本あった尻尾は今も健在でーーいやまて。
なんか一個減ってるな。
「ふぅむ?」
これ9回倒せば倒れてくれる感じか?
しかし、さっきのどつきを受けて思ったが確実にパワーアップしている。
パワーアップをあと8回繰り返す感じですか?
クソゲーですか?
「…ま、なんとかなるか。」
俺はもう一度刀を構える。
おそらくコイツを倒す最適解は俺の体力があるうちに最速でコイツを9回殺すこと。
しゃぁっ!いったるぜ!
「はぁぁぁ!」
俺はまっすぐ狐に駆け出して行った。
◇◆◇
俺は8回殺したあたりでなんとかなるっしょとか思っていた自分を殴りたくなっていた。
なんか急に最後の一本になった尻尾が光り出して炎のビーム出してくるようになった。
あとついでに残像みたいなの残して消えて瞬間移動するみたいなことしてくるようになった。
まじのクソゲーだ。
なんでこんなことしてんだ。
「フゥーッッ」
今、俺がこの化け物に勝つ方法はただ一つ。
【満開】を使い、俺の体をぶっ壊してコイツを倒し切ることだ。
俺は俺の体が完全に動かなくなる前にコイツを倒し切らなきゃならないがまだ他の魔物の残党がいることに加えて尻尾がなくなっても復活されたらだいぶ困る。
しかし他に解決する方法もない。
仕方ない。
「【満開】」
俺の体温が上がり、心臓の鼓動が加速していく。
「いくぞ!」
『グラァァァ!』
狐がビームを打ってきたのを避けながら俺は足をなぶり斬る。
「【杜若】」
足を切られた狐は絶叫しながら噛み付く。
「焦んなって」
俺は身を低くしながら避ける。
「【苧環】」
強く地面を踏み込んだ俺はそのまま一直線に身体を切り刻み、背後に回る。
「じゃあな。」
刀身は赤黒い光を放つ。
「【菖蒲】」
最後の尻尾が斬られる。
狐は声を残す余裕もなく塵となって消えた。
「あ」
そこでアリュールの存在を思い出した俺は急いで駆け寄る。
やばい地面に放置しちゃった。
「アリュール!大丈夫か!?」
アリュールは…安心したように寝ていた。
ちょっとは警戒してた感じを出してくれ。ヒヤヒヤする。
ま、無事でよかった。
「ふぅ…。」
安心したらちょっと眠くなってきたな…。
流石に【満開】は身体に応えるな。
いや、でもここで寝るのは流石…に…。
◇◆◇
普通に寝た。
なんならアリュールより起きるのが遅く3日間目を覚さなかったらしい。
なんてこったい。
灸尾は無事に完全に消滅したらしくそれ以降完全に魔物を観測できなくなったらしい。
どうやら魔物たちは灸尾の真力から生み出されていたようだ。
迷惑だ。
でも灸尾は打たれてこの世界は平和になった。
死んだ者も多くいたが長く続いたこの戦いに決着がついたことを喜びお互いを励まし合うことで復興作業は順調に進んでいるらしい。
ついでに俺は英雄になっているらしい。
きたわ。時代が。
ま、冗談はさておきソレイユ国王の配慮により俺の顔が知れ渡っているわけではなくエレボスという名前だけが有名らしい。
ありがたい。
さて、1週間ほどして身体が全開になった。
また次の世界に行かなければ。
アリュールとソレイユ国王にこのことを話したら少ない護衛と共にお見送りに行くと言っていた。
『渦』の前で集合で、もうすぐ集合時間だが…。
「エレ。」
「ん、来たか。」
振り向くとアリュールとソレイユ国王、それから少数の護衛がいた。
「君たちは下がってていいよ。」
「「「はっ」」」
アリュールが一言そういうと護衛が下がった。
「まずは私から。何度も言ったが、我が国を救ってくれたことを感謝している。本当にありがとう。本当はもう少し我が国で羽を休めて欲しかったが…貴方が言うのなら仕方がない。また来れる機会があったらぜひ立ち寄ってくれ。歓迎しよう。」
「ありがとうございます。」
「じゃ、俺からは…まあ感謝に関しては今までも言ってきたし姉上も言っていたからいいから…まあ、なんだ。短い期間だったし正直1番話してたのは牢獄だったからなんとも言えないが…俺はお前と話せて楽しかったよ。ありがとう。また会える機会があったら酒でも飲んで話そう。今度は平和な状況でゆっくりな。」
「…そうだな。ありがとう。また、会える機会があったら一緒に飲もう。俺はお前と友達になれてよかった。この国もなんだかんだ言って楽しかった。怪我については、お世話になりやした。」
俺は一礼して、横にあった渦に向き直る。
「じゃあな。」
「ああ。」
「君の旅に、幸福が訪れることを祈ろう。」
「ありがとう。」
渦に一歩足を踏み入れる。
すると、身体が渦に吸い込まれていく。
最後にアリュールが視界に入った。
すこし、寂しそうな顔をしていた。
また会えたらまじで一緒に酒飲みたいな。
◇◆◇
目を開けると、目の前に白い空間が広がっていた。
この景色は見たことがある。
そう、あれは世界を救うという俺の使命を説明された、神と会った時だ。
世界樹の…。
いやまて。
なんでここに俺はいるんだ?
渦に入った先がここ?
どういうことだ?
「いやぁ、すまないねぇ。いきなりこんなところに呼び出しちゃって。」
「っ」
俺は後ろに飛んで距離をとった。
なんだこいつは。
気配が全くない。
黒髪で高身長、オッドアイ。
雰囲気が人間のそれじゃない。
「誰だ?」
「うーん、そうだね。自己紹介をしよう。」
そういうと、ニコッと笑みを浮かべ、俺の目を見る。
「僕は【輪廻】の神。シヴァだ。」
その目には、俺の過去も未来も現在もなにもかもを見透かすような威厳があった。
この話を書き終えた感想:あれこれ2話に分けなくてよかったくね




