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悪役令嬢という面倒くさい役割、もう捨ててもいいですか?~辺境ルート? 是非、お願いします!  作者: トロ猫


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第48話

 カルに頼り過ぎた自分に反省する。


「次回からはちゃんと言う」

「ありがとう」


 カルに笑顔を向けた後に、公子の側で横たわるエリアス少年の身体を確認する。

 額から血は出ているが、これは比較的浅い傷だ。問題は鞭で打たれ、蹴られたのだろう身体だ。

 服を捲り確認すれば、今日だけではない傷痕が多数あった。


「酷いわね」


 ディーネにエリアス少年を確認してもらうと、見た目は酷いが内蔵の損傷や脳震盪等はないようだ。ひとまず安心する。カルがエリアス少年の額の血を拭いながら尋ねる。


「この子……ここに置いて行くのか?」

「私だって鬼じゃないのよ。もちろんこんな場所からは連れ去るわよ」


 ジェラルドが消えたとしても、ここに残ったエリアス少年の扱いが改善するとは思えない。シュヴァイツァー公爵は自分に有利になるのならばクリストファーの殺害、その罪をオリビアに着せようと工作するような人物だ。従者の一人二人など、彼にとっては蠅以下の存在だろう。


「この子がいなくなったら問題にならないか?」

「手っ取り早いのは……死んだことにするかしら」


 公子と間違えてジェラルドが連れ込んだ賊にエリアス少年が誘拐されたという案も考えたが、これは公子の記憶とつじつまが合わず不自然だ。

 その後にエリアス少年の行方を捜索なんぞされたら都合が悪い……やはり、エリアス少年は死んだことにするのが都合がいい。

 気を失っている公子を見ながら、苦い顔をする。公子が目覚めた後に従者が死んだと聞いたら、この子は自責の念にかられるだろう。でも、カルにまた記憶を奪う力を使わせるわけにもいかない。

 いや――子供でも公子はあの公爵の息子だ。先ほど公子を試した時、彼は私にエリアス少年の回復を嘆願するのでなく脅すという選択を取った。私は今、他人の気持ちの心配をする余裕などない。私の脇が甘ければ、それは私だけでなくカルやリリにも影響する。

 カルが心配そうに尋ねる。


「オリビア、何かあるのか?」

「ううん。カル、この子の収納はできそう?」

「アランってやつと同じ部屋になるが、このくらいの大きさならできるぞ」

「お願い。後で、できるだけ早く医者に見せに行きましょう」


 エリアス少年の服の一部と靴を脱がせ、カルに収納をお願いした。気を失っているようだし、このままカルの収納で眠っていてもらおう。

 すでにこと切れていた小鹿を回収する。ディーネが気を失った公子を水の魔法で包み、ダンが土魔法で雑にジェラルドを抱える。そうやって貴族たちが優雅にお茶会をしている近くまで移動する。公爵邸の回りには森が多く、姿を見せずに移動することができた。

 連れて来た、すでにこと切れていた小鹿の頭を撫でる。


「ごめんね。あなたを使わせてもらうわ」


 ディーネの水魔法を使い、小鹿の体内に残っていた血をすべて地面一面に撒く。エリアス少年の大きさならこれだけ血を流せば致命的な出血量だろう。DNA鑑定とかこの世界には存在しない。技術ない中、肉眼だけで人か獣の血か見分けはほぼ不可能だろう。ディーネに毛を含む血以外のすべての小鹿の痕跡は回収してもらった。

 エリアス少年の靴と服を血糊の近くに転がせる。


(ダン、後は私とカルの今までの足跡を消してもらえる?)

(任せるのじゃ)


 綺麗に私とカルの足跡だけが消える。

 ジェラルドの手を公子の首元に添え、口角を上げる。


「これで完全犯罪ね」

「なんだよ、それ」


 気が抜けたようにカルが笑う。 


「じゃあ、カルは私が叫んだら気を失ったフリでもしていてね」


 さて、演技を開始しよう。

 息を吸い大声で叫ぶ!


「誰か! 誰か! 助けて!」


 渾身の演技で叫んだが――誰も来る気配がない。


「おかしいわね」

「そんな、か細い声なんか届かねぇよ」


 カルが苦笑いしながら言う。


(オリビアどん! ワシに任せろ)


 そう言いながらダンが土魔法で特大のメガホンを出す。

 確かにこれなら声は届くかもだけど……


「大きすぎて抱えられないわよ……」


 カルと妖精の三人がかりで抱えてもらったメガホンに向かってもう一度叫ぶ。


「誰か! 助けて!」


 ようやく何かガヤガヤとこちらに向かってくる声が聞こえ始めたので、気を失っていた半裸のジェラルドの腹に蹴りを入れ起こす。呻きながら目を開き始めたジェラルドが困惑しまま何度も瞬きをする。


「何が――」

「おはよう、《《先生》》」

「オリビア――」

「アルト卿! おやめください! 公子が死んでしまいます!」


 大声で叫ぶと、ジェラルドがさらに困惑した顔をした。


「は? 何を――」


 ジェラルドの言葉が終わる前に公爵の警備隊、それから貴族の数人が現場に到着したので縋るように彼らに向かって走る。


「助けて下さい! アルト卿が! アルト卿が公子を!」


 警備隊と貴族から見えたのは、頬から血を流すオリビアの姿、横たわる侍女、それから血だまりの上にある子供の靴、そして首を絞められる公子とその犯人だ。

 すぐに警備兵がジェラルドを拘束すれば、悲痛な喚きが聞こえる。


「ち、違う! 私ではない! 違う!」


 必死にそう叫ぶジェラルドの声が心地よい。ああ、これだ。オリビアはこれを欲していたんだ。

 高揚した気持ちで連行されていくジェラルドを見ていると、野次馬の貴族の中に紛れていた元父親と目が合う。

 あの表情、私が何かしたと覚っているようだ。

 元父親に向けて薄笑いを浮かべると、目を逸らされた。


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