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悪役令嬢という面倒くさい役割、もう捨ててもいいですか?~辺境ルート? 是非、お願いします!  作者: トロ猫


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第40話

 今日、ようやく卒業式当日となった。

 ここ数日は、馬車に詰める荷物の買い出しをしたり、オリビアの部屋にあるものを現金に換えたりしていた。

 昨日一昨日は、傭兵ギルドを訪れ領地への移動中の傭兵も雇った。傭兵は金貨二十五枚で四人のパーティを雇うことができた。

 傭兵は数人のパーティを組んでいて、それぞれレベル分けされているという。レベルは1から5とあり、5が最大のレベルだと説明を受けた。今回はそのレベル3に当たる『アルカディア』という評判のいいパーティを勧められたので、その人たちをお願いした。

 アルカディアの道中の食事や野営以外の宿泊費は私持ちとなる。

 妖精たちとカルがいるので、傭兵を雇わなくても問題はないと思う……だが、リリや御者、それにこれから購入予定の馬もいるので安全第一で旅をするに越したことはない。

 御者兼そのまま現地に残ってくれる使用人を雇うつもりだ。リリが馬の扱いをできるということで、最低でも二人ほど探しているが……こちらは難航している。やはり、ド田舎に移住したい者は少ないらしい。あと正直、学園関係の人からのオリビアの評判がよくない。こればかりは短期戦で評判をひっくり返すことは厳しい。

 

 制服を着て、準備を済ませる。今日でこの制服ともおさらばだ。

 侍女の部屋の細かい片付けをしていたカルに声をかける。


「この制服って、売れると思う?」

「生地はいいから売れるとは思うが、売っていいのか?」

「特に思い入れのあるものじゃないし、必要はないかなと」

「制服好きな性癖野郎になら高く売れるかもな」


 制服にはオリビアの名前が刺繍されてあるし、制服収集が趣味の性癖の手元に渡るのは……嫌だな。

 部屋の扉に手を掛け、カルに伝える。


「それじゃ行ってくるけど、終わったらすぐに戻ってくるから」

「ああ。オリビア、卒業おめでとう」

「ありがとう、カル」


 卒業する本人以外は式典に参加できないので、カルはお留守番だ。

 ディーネとダンは、他人に見えないので卒業式に参加する。


 校内にある式典用の豪華なホールに入り受付を済ませると、深紫のローブをとベレー帽を渡される。


「ご卒業おめでとうございます」

「ありがとうございます」


 ホールには卒業生と学校関係者しかいないはずだが、思っていたより人数が多かった。この学校、結構生徒多かったんだね。オリビアは、そういうことには興味がなかったので記憶がなかった。

 大人数のおかげで特に注目されることなく指定された席に座ろうとした瞬間、知っている声に呼ばれる。


「オリビア、一体ここで何をしている!」


 元兄のカイルだ。忙しくて、ほんの少しだけ存在を忘れていた。私にこんな質問をしてくるってことは何も知らないのだろうか?

 あしらうように返事をする。


「そんなの、今日卒業するからに決まっているじゃないですか」

「何を言っているんだ。お前はまだ二年だろ」

「飛び級試験に合格しましたので」

「は? 嘘を言うな。今年、飛び級試験に受かったのはルナヴェル子爵という方だけだぞ」


 私がルナヴェル子爵だから……ああ、カイルはどうやら本当に何も知らされていなかったようだ。道理でここ二週間、カイル襲撃に遭わずに平和だったんだ。


「カイルさん、ランカスター公爵から何も聞いていないのですか?」

「カイルさん……いや、ランカスター公爵とはなんだ、父上と呼ばないか」


 カイルを哀れな目で見る。あの全裸紳士、息子に何も説明していないの?


「私のこと、本当に何も聞いていないのですか? 私と公爵家の縁を切る等の話です」

「確かに先週……お前のことはもう家族ではないから、助けを求められても関わるなと言われた。だが、父上はいつもそんなことを言っているから問題はないだろ」


 問題しかないだろ。あの全裸クズ……カイルに子爵位は貰ったぜザマァしようと考えていたが、なんだかカイルもあいつの犠牲者のような気がしてきた。


(オリビア、こいつやっちゃう?)

(ワシも土の棺桶をいつでも出せるぞ!)

(ううん。大丈夫)


 仲良くはなりたくないけど……卒業式という晴れ舞台に免じて今日は放置してやろう。

 そう思っていたら、ミレーヌ先生に声をかけられる。


「ルナヴィル子爵、ご卒業おめでとうございます」

「ああ、ありがとうございます」

「卒業後は王都に残られるのですか?」

「い、いえ。領地に向かう予定です」

「そうですか。もしよければ、耐久性の高い植物の本を幾つか差し上げます」

「それは嬉しいです」

「では、後ほど職員室にきてください。カイル・ランカスター君もご卒業おめでとうございます」


 ミレーヌ先生に悪気はない。ただ、無意識に私の代わりにカイルをドン底へと落とし、去っていっただけだ。


 カイルを横目で見れば、今までに見たことない困惑した顔をしていた。

 



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