うな重9
うな重が渋い顔をしつつも語り始めた。
「だって神様見習い?とかだから神様だって言っちゃダメだって言われてるし…」
さっきまで神様って主張しておいてナンヤネン。
このまま聞いていればまだまだ吐露しそうなので暫く黙って見ている事にする。
「帰り方とか分からないし、美味しいものを食べれるならまぁいいかな〜とか思って無いのじゃ」
なんだか思って無い事?まで喋り始めた。
「それに神様だって言いふらして騒ぎになると勝手に来た事がバレて怒られちゃうのじゃ」
神様なのに怒られるとか、誰に?
「へぇ~そうなんだ」
みうなが初耳の感じで頷く。
「みうなは知らなかったの?」
私が驚いて聞き返す。
「うん、そうだよ」
みうなが屈託のない笑顔で返す。
「家とかで頭の鰻の事は聞かれなかったの?」
私は再び聞き返した。
「パパとママは特に気にして無かったかな~」
「お兄ちゃんには聞かれたけど最近頭に鰻を飼ってるって言ったら『そうか、みうならしいな』って褒められたよ」
それは褒められているのか?と思ったが
「そういえばなんでうな重って呼んでるの?」
「神様とかだとなんだか仰々しい名前とかがあるんじゃないの?」
ふと気になった疑問を私が聞いてみる。
「えとね〜、うな重が言うにはなんか長い名前がある?つく?らしいんだけど〜」
みうなが喋っているとうな重がかぶせてきた。
「だって長くて難しくてよく覚えきれないのじゃ(汗」
自分の名前すら覚えられないのか、とツッコもうとしたが確かに神様の名前とかって長ったらしくて難しいのが多いな〜と思いツッコむのを辞めた。
うな重に返事を返すようにみうなが続ける。
「だから私が名前付けてあげたの」
「それがうな重?」
私が不思議そうな顔で話すと
「私(鰻木みうな)の上に鰻が乗っかっているから、うな重だよ!」
みうなが自信満々のドヤ顔で説明した。
正直理由がよくわからないが説明の身振り手振りがカワイイから良しとしよう。
「帰り方わかんないならうちに暫く居ていいよ~」
そう言いながらうな重を撫でる。
自分の頭を自分で撫でている不思議な光景だが、またそれがまた良い。
私のあげたカチューシャに鰻が乗っかっているのはちょっぴり気になるが、みうなが言うなら仕方がない。
「まぁ、うな重だっけか。暫くの間だと思うけどよろしく」
私がそう言うと。
「うむ、苦しゅうないぞ」
うな重にそう言われてまたイラッとした。