うなぎちゃんとカチューシャ1
エピソード10:うなぎちゃんとカチューシャ
ガヤガヤ
ザワザワ
飲食店のお昼時とはいつも賑わうものだが、いつにも増して賑やかである。
「うな重の並一つと上二つ」
「毎度有り難うございます~」
「お待たせしました、うな重の特上です」
元気な声が店内に響き渡る。
「並二つあがり」
テキパキ動く割には静かに話す青年が、出来上がったうな重をカウンターに置く。
「ありがとう、お兄ちゃん」
特定保健用食品みたいに跳ねる少女が、元気よく喋る。
そう、ここは鰻屋。
そして今日は夏の土用の丑の日である。
鰻と言えば土用の丑の日と言うくらい、鰻屋一番の書き入れ時だ。
当然鰻木みうなの家は鰻屋なので、この日はお客さんいっぱいで大盛況なのだ。
普段はみうなの両親二人が鰻屋を営んでいる。
さらに合間を見て兄の鰻木ガウナが鰻修行をしながら、忙しい時などは手伝い的な事をしている。
普段はそれで十分廻っているのだが、今日の様な大賑わいの日などは、みうなも手伝いに入っているというわけだ。
「うな重おまたせしました~」
元気よくうな重の並を運んだみうなに、お客さんが声をかける。
「みうなちゃんはいつ見ても元気だねぇ」
みうなはそんなお客さんに、笑顔で元気よく返事をする。
「私は鰻パワーでいつも元気満タンだよ~」
そんなやり取りをしながら特定保健用食品のように、跳ねながら小気味良く動く。
兄のガウナもみうなちゃんも、小さい頃から手伝っているからか手際よく動いてすっかり看板娘である。
「うな重並あがり」
「は~い」
みうなが出来上がったうな重を運ぼうとした時、奥から声がする。
みうなと雰囲気は似ているものの、落ち着いた感じで話しかける。
「みうな、お昼の営業時間ももうすぐ終わりだからそろそろ上がっていいわよ」
そう声をかけたのはみうなのお母さん。
みうなとはまた違った大人の女性の趣がある。
「ありがとうね、手伝ってくれて」
頬に手を当てて、みうなちゃんに優しく微笑えみながら話す。
「どういたまして~テヘッ」
みうなも跳び跳ねながら元気に笑顔で返す。
ガラガラと扉が開き、お客さんが入ってくる。
「ぁ、私がいくね~」
みうなが再び元気よく跳ねて、入って来たお客さんへと向かう。
入って来たお客さんは、みうなより背が高く落ち着いた感じの女性だった。




