ハライン10
「くうぇぇぇぇえ~ぇぇ~」
縛られたまま宙を舞う嬢子ちゃん。
文花が手元の縄をクイッと引くと縛られた縄がほどかれ、着物の帯回しの様に回転しながら嬢子ちゃんは地面に降り立った。
「ぅえぇえっ、うえっ」
回転の余韻でクルクル回りながら、謎の嗚咽を漏らす嬢子ちゃん。
「大丈夫?嬢子ちゃん」
文花は目の前の大きな黒い影を見つめたまま嬢子ちゃんに声をかける。
「ぅえぇえっ、大丈夫、うえっ」
回転が収まり手を頭に当てて返事をする嬢子ちゃん。
頭を振り意識をハッキリさせた所で改めて先程の黒い影を確認する。
「なによあれは、さっきの悪霊と全然違うじゃない」
そう言いながら文花の横に立つ。
「さっきの悪霊って、もしかしてこれのこと?」
文花がそう言って差し出したのは小さな赤い帯だった。
それを横目で確認する嬢子ちゃん。
その小さな赤い帯は、先程の悪霊の真ん中辺りに巻かれていたものと同じ物のようだった。
「そうよ、それ!」
「なんだか白くて長いミミズのような悪霊の真ん中にあったやつ」
「なぜに文花が持っているの?」
「あと、低級依頼にしては歯応えあるわね!」
捲し立てるように嬢子ちゃんは話す。
すると手に持った赤い帯を握りながら文花は呟く、
「これ、上級なの」
その言葉に嬢子ちゃんは文花を二度見する。
「え!?」
文花の顔を見つめ、それが冗談では無いことに気付き嬢子ちゃんは
「確かに低級依頼であの数の悪霊はあり得ないけど」
「上級って事なら納得ね!」
文花と嬢子ちゃんが話しているうちに、先程の大技で立ち込めていた土煙が晴れていく。
すると、黒く大きな影が姿を現していた。
それは嬢子ちゃんと対峙していた小さい悪霊より遥かに大きく、禍々しい空気を漂わせていた。
「あれがここの悪霊の親玉ね!」
「上級だろうがこの希代の天才エクソシスト、土御門嬢子が祓ってあげるわ!」
そう言っていつもの決めポーズをする。
が、文花は険しい表情のまま嬢子ちゃんに話しかける。
「違うわ嬢子ちゃん、あの帯を見て」
そう言われて改めて悪霊の帯を見てみると、黒い。
小さい悪霊は、確か赤い帯であった。
「確かに帯の色が違うわね、あの大きいのは黒い帯みたいだけど」
「なにか違うの?」
大きい悪霊を指差しながら文花に質問する。
「あの黒い帯の色……」
「特級よ!」
文花の言葉に嬢子ちゃんは目を丸くする。
「と、特級!?」




