ハライン3
それは先週、まだ梅雨は明けず空を黒い雲が覆っていた午後のこと。
下校途中だった文花の携帯電話が震え、通知音が鳴る。
ハライ~ン♪
その音を聞き、文花は立ち止まって画面に目をやる。
その隣で一緒に歩いていた嬢子ちゃんにも通知音が鳴り、同様に画面を見た後、文花と嬢子ちゃんはお互いの顔を見る。
「来たわね!ハラインからの悪霊退治の依頼」
嬢子ちゃんは嬉しそうに文花に話す。
「嬉しそうだね、低級依頼だからって油断しているとこの間みたいにまた呪われちゃうよ」
依頼内容を軽く確認した文花は、嬢子ちゃんを一瞥し釘を指す。
「ぁ、あれはちょっと油断しただけよ、今度は任せて!」
嬢子ちゃんは文花に向かって小さくガッツポーズする。
「その謎の自信も何度目よ」
と軽く突っ込みを入れながら依頼内容の確認を終えた携帯電話をしまう。
文花と嬢子ちゃんの通知音が同時だったのは、二人がコンビで動いているからである。
退魔士検定に受かったとはいえ、まだ3級。
悪霊退治には二人で対応することになっていて必然的に嬢子ちゃんは文花と一緒になるのである。
公園に近づくと嬢子ちゃんの後方から車が近づいて来る。
その車が嬢子ちゃんの近くに止まる。
嬢子ちゃんはよく車で学校に送り迎えしてもらっている。さすが社長令嬢なだけある。
と言いたいところではあるが、学校に直接来るわけではなく、近くの公園まで文花と一緒に歩いてそこに迎えに来てもらっている。
理由は二つある。
一つ目、嬢子ちゃん的には途中まで文花と一緒に歩いて帰る事が出来て、その方がいいのだろう。
二つ目は、迎えに来た車が……軽トラだからである。
嬢子ちゃんは隣街にあるホームセンターを経営する社長さんの一人娘だ。
ホームセンターには購入した木材などを運搬するための車の貸し出しサービスがある。
貸し出す車は軽トラからバンなど何種類かあるが、その中で空いている車で嬢子ちゃんを迎えにきているのである。
たまに空いてない日などは、駅まで歩いて電車を使ったりしている。
この間は迎えに来た車は大きめのトラックだったが、今日は軽トラの様だ。
嬢子ちゃんは、運転してきたメイさんに軽く礼を言いこちらを向く。
「じゃあ文花、土曜日に向かうわよ!悪霊退治!」
そう言って嬢子ちゃんはメイドさんが運転してきた軽トラに乗り込む。
文花は車に乗りこんだ嬢子ちゃんに向かって手を振りながら
「じゃあ土曜日、遅れずに来てね」
そう言って軽トラを見送った。




