うなさんぽ1
エピソード5:うなさんぽ
「お邪魔します」
そう言ってみうなの家の居間にあがる。
「ヒロちゃん、ここどーぞ」
みうなが、居間にある昔懐かしのちゃぶ台の側にある座布団を座りやすく動かしてくれた。
うなぎちゃんこと鰻みうなからヒロちゃんと呼ばれている私、西尾一色 は今、鰻屋であるみうなの家の居間に居る。
なぜかと言うと、ゴールデンウィークも過ぎて連休気分も抜けてきた辺りで悩ましい現実が近づいているからである。
定期テスト。
一応うちの学校はここらではそこそこの進学校で、私も結構頑張って入った学校なのだ。
受験の際にはここの居間で、みうなと一緒に頑張って勉強をしたのがもはや昔懐かしい。
その為、テスト前にはここで一緒に勉強するのがいつもの流れになっていたのである。
ちゃぶ台の上にノートやら筆記用具などを準備していると
「何するんだじぇ?」
みうなの頭の上から声がする。
あぁ、受験の時とは違うことが一つあった。
あのカチューシャ鰻が居るんだった。
みうながうな重に答える。
「今からね、テスト勉強なんだ」
うな重がピクッと動き、少し震えた声で喋る。
「お、お勉強なのかじぇ……」
そう答えたうな重は、スポッとみうなから飛び外れてちゃぶ台の横に降り立つ。
「ちょっとお散歩行ってくるじぇ」
なんだか逃げる様に立ち去ろうとするうな重に、みうなは声をかける。
「晩ごはんまでには帰って来てね」
それに合わせて私もうな重へ声をかける。
「てら~」
まぁ勉強中に騒がれたりしたら困るし、みうなとの貴重な時間を満喫出来るのは願ったり叶ったりである。
うな重が居間から出た辺りでみうなに話しかけた。
「そういえば、うな重って普通に出歩いても大丈夫になったの?」
みうなはうな重の方を見送った後、私の方を向き答える。
「うん、文花ちゃんに色々聞いた後にうな重一人で何回か出掛けてみたけど大丈夫だったみたいだよ」
「へぇ~」
古墳休憩スペースで文花ちゃんから少々難しめの話を聞いて、ここら辺一体が不思議ワンダーランドであると知ったからか、
最近は鰻が歩いたり埴輪が喋ったりしてもあまり驚かなくなってしまった。
まぁ、元々みうな自体が不思議ワンダーランドみたいなものだし、さほど変わらないのかと、自分を納得させる。
「よし、じゃあ始めますか」
私がそう言うと
「うん」
みうなが小気味良く返事を返した。
ここから私とみうなはお勉強。
こうしてうな重のお散歩が始まったのである。




