うな重3
登校初日は入学式とか簡単な説明ぐらいで、午前中には下校となった。
私はみうなと近くの公園に向かう。
この公園は何故か古墳があって、その出土品が置いてあるこじんまりとした展示館があり、そこにちょとした休憩スペースがあるのだ。
小さい頃、みうなと一緒に公園で遊んだあとは決まってここで休憩するのがお気に入りだった。
休憩スペースには丸テーブルと椅子がいくつかある。
ちょうど誰も居ないので、その一つに座る。
「さぁ、説明してもらうわよ」
静かなトーンだが力強くこう切り出す。
「へ、なんのこと〜?」
みうながとぼけたような気の抜けた返事を返す。
「その頭の鰻のことよ!」
カチューシャについている鰻を指さして、そう言い放つ。
てへっ。
みうなは軽やかに微笑んだ。
「やっぱりヒロちゃんにはわかっちゃうか〜」
そう言うとみうなは同じテーブルにある隣の椅子に座った。
「いやいやいや」
「鰻推しのみうなでも、さすがに頭の上に鰻が乗ってたらツッコむわ!」
そう言いながら頭の鰻を見るとやっぱりこちらを見てる気がする。
「以外と似合ってて、気付かれないかなと思ってたのに〜てへっ」
うなぎちゃんが頭の鰻のリボン?ヒレ?を触りながら微笑む。
「また笑ってごまかそうとしてる〜」
いや笑顔は間違いなくカワイイのだが誤魔化されないぞ。
「で、なんで鰻を乗せてるのか説明してよ」
私は話を続ける。
「えーとね」
みうなが考え込んでいるような顔で話し始める。
「空から降ってきて、頭にくっついちゃったの」
「へー、くっついちゃったんだ」
平静を装うとしたが、
「なんでやねん!」
関西人でもないのに自然とツッコミを入れてしまった。
「それで頭から取れなくなってそのまま高校デビューしたっていうの!?」
私は矢継ぎばやに話す。
さすがに頭の鰻は派手な高校デビューだと思う。インパクトばつぐんだ!
うなぎちゃんはそんなヒロちゃんに驚く事なく静かに座っていたかと思うと、そっと手を出した。
「いや、普通に取れるよ」
出した手がカチューシャにかかると、
取れた。
鰻が?
いやカチューシャ?
「へ!?」
私はその光景に口から変な声が出てしまった。
「しかも歩くよ」
うなぎちゃんがカチューシャから手を離すと、
ヒョコヒョコ
「ふぇえ!?」
またもや私は変な声を出しながらツッコむ。
「鰻が歩いてる!?」
私達二人しか居ない部屋に声が響き渡った。