ジッパー団9
お店の名前は、魔女の森。
お店に入ると手前にカウンター、奥にテーブル席がいくつかある安心のスタイル。
店内には、ちらほらと常連客らしき人達が数人居る程度である。
とりあえずテイクアウトなのでレジに向かう。
「……いらっしゃいませ」
大人びた静かな声で声をかけられた。
容姿端麗でもの静か、黒の長髪が美しいここの店長?マスターである。
店名とその風貌からか、皆からは魔女さんと呼ばれている綺麗な女性で商店街の人達からの評判は良い。
きっとみうなも大人になると、この人に負けないくらいの美人になるであろう。
「えーとね」
みうながメニューを覗きながら指を下顎につけて考えている。
「タピオカミルクティー3つでいいかな?」
振り向きながら私に問いかけた。
「うん」
私は頷きながら答える。
指で3を出しながらみうなが元気にタピオカミルクティーを注文している。
ピョコピョコしている後ろ姿と動きがまたカワイイ。
注文を受けた魔女さんは厨房の方へと戻っていく。
ここのカフェはオシャレで美味しくて魔女さんは綺麗で、行列のできる人気店になってもおかしくないのだか、一つだけ問題がある。
それはメニューだ。
メニューというかネーミングが独創的で常連客以外は尻込みしてしまう様なラインナップなのである。
例えばカフェ定番のコーヒー。
この店では、「黒くて苦い豆汁」と書いてある。
他にもモーニングで付くゆでたまごも、「茹でた鶏の排泄物」
豆菓子も、「鳩が喰らった豆鉄砲」
サラダに至っては「ちぎった草」である。
味については間違いない程に美味しいのだが、
この様にメニュー名が独特すぎて一般受けしていないのである。
ちなみにオススメはグラタン。
熱々で焦げ目のついたチーズに中のホワイトソースがまた絶品で、一度食べたらやみつきになるのである。
メニュー名はというと「じっくり焼き上げた腐りかけの牛乳」
そうこうしているとタピオカミルクティーが出来上がった様だ。
「はい、おまたせしました」
そう言いながら魔女さんがタピオカミルクティーを、トレーに3つ乗せてこちらに向かって来る。
こんな感じで独創的なメニュー名が沢山並んでいる魔女の森。
このタピオカミルクティーだが、問題のメニュー名は。
「泥水とカエルの卵を3つですね」
タピオカミルクティーを差し出す魔女さんがこちらを見て微笑む。