ジッパー団4
そうして私達は古墳公園から商店街に向けて歩き出した。
「くれぃプ、くれぃプ……」
うな重がみうなの頭の上でうわ言のように呟いている。
よっぽどクレープが食べたかったのだろうか。
いや、きっと私の方が食べたいという想いは強いはず、と謎の負けず嫌いが発動してしまうぐらいだ。
「この商店街にクレープ屋さんが出来るなんて、凄いね〜」
みうながそんな事を言いながら一緒にクレープ屋さんに向かう。
みうなの家のうなぎ屋と、私の家の魚屋がある商店街は駅前ということもありそれなりに栄えている。
とは言っても駅ビルとかでは無く無人駅だし、住宅街にあるというだけで人通りが多くても通勤時間帯だけだし。
そんなホドホドの商店街になんと、あのオシャレの代名詞でもあるクレープ屋さんが出来たのだ。
これはもはや事件である。
しかも女子高生になったからには食べない訳にはいかない、いやむしろ女子高生の義務教育である!
「いや〜、ホントだよ」
「あの夢のクレープが食べられるなんて」
うな重程では無いにせよ、クレープ屋が出来ると聞いた時には家でコッソリ小躍りしてしまう位には嬉しかった。
踊りすぎてお姉ちゃんとかににちょっと怒られはしたが、まぁそれは置いておくことにしよう。
クレープ屋がオープンしたのは数ヶ月前なのではあるが受験生だった事もあり、未だに食べれていなかったのだ。
どうせ食べるならやはり女子高生になってみうなと一緒に食べて帰りたいという想いもあって、それがまた受験勉強の原動力となったまでもある。
そんな夢のクレープが最近のカチューシャうなぎ騒動のせいで有耶無耶になっていた。
それがやっと一緒に食べにいけるのだ。
お昼ご飯を抜いてお腹ペコペコにするぐらいでないとクレープ様に失礼な程だ。
いや、うなぎパイは食べてしまったが、あれはみうながくれた偉大な御菓子、ノーカウントだろう。
まだまだ私のお腹には十分な余裕があるのだ。
「くれぃプ、くれぃプ……」
うな重は未だにみうなの頭の上で呟いている様だ。
尻尾がパタパタとしてちょっとカワイイ。
ぁ、カワイイのはうな重では無くみうなの方なのだが。
「ぁ、見えて来たよ」
みうなが指差す方向に目的地のクレープ屋さん、ジッパー団が見えて来た。
「さぁて、入団しに行きますか」
みうなとそんな会話をしている内にクレープ屋さんに到着した。