うな重10
「さあ、早くそのタレをよこすのじゃ!」
ポニーテール?尻尾?を振りながら叫んでいる。
うな重にそう言われるとなんだかあげたく無くなってくる。
「いっぱい喋っちゃったし、喉がカラカラじゃ〜」
いっぱい喋ったと言っても、ほぼ分からない、知らないとしか言っていない気がする。
みうなから受け取ったマイタレをブラブラさせながらうな重を見ていると
「テイッ」
うな重が尻尾を振りナニかをこちらに向かって飛ばして来た。
これは覚えている、朝初めて見た時と同じだ。
蒲焼のタレは右手に持っているので左手を上げる。
ペチョ
上げた左手で顔に向かって来たナニかを防ぐ。
「ちいっ」
うな重が悔しそうに呟く。
「同じ攻撃は二度は通用しないよ」
どこかの少年誌の様な台詞を言ってニヤつく。
そう、朝と同じ様に鰻のヌルヌルを飛ばしてきたのだ。
「モぉ〜、二人とも仲よくして〜」
みうなが顔を膨らまして怒る。
カワイイけど。
私は蒲焼のタレをみうなに渡し手水舎で手を洗う。
「みうなはこのヌルヌル頭に乗せてて大丈夫なの?」
杓子で手を洗いながら聞いてみる。
「仮にも神様ナノじゃ。毒とか害とかあるわけないじゃろ!」
「むしろ聖なる粘液、聖水みたいなものじゃ!」
なんだかうな重が怪しい解説をし始めた。
「なるほど〜」
みうなが謎の説明で納得しかけている。
「聖水とか言われても余計に怪しさ満点なんだけど」
うな重の方を見ながら訝しげに話す。
「まぁまぁ、ほらうな重」
みうながマイタレを近くにある石造りのベンチに置くと
ヒョコ
うな重がみうなから外れてベンチに座る?乗った?
「うまい!」
相変わらず器用に小分けの容器に入った蒲焼のタレを飲んでいる。
「うまいのじゃ!」
美味しそうにタレを飲んでいるうな重を見て嬉しそうにしているみうなを見ていると、まぁいいかって思ってしまう自分が居る。
ひとしきり飲み終えると、また器用に容器のフタを閉めてみうなの頭にヒョコっと飛んで戻った。
まるで自分のホームポジションはここであると言わんばかりにこちらをチラッと見る。
その行動にまたちょっとイラッと来たが、みうながこちらを見ていたので引きつった笑顔で返す。
結局そんなこともあってか、みうなの頭には鰻が乗っかっている。
見た目のインパクトは凄いがみうなは気に入っているようだ。