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第五章:揺れる想い

目の前に立つ蒼蓮そうれんの姿が、まるで幻のように桜依さよの目に映っていた。


銀の髪が夜風に揺れ、その瞳は静かに桜依を見つめている。


けれど――


桜依は言葉を失ったまま、ただその場に立ち尽くしていた。


 


(誰……?)


 


知らないはずの誰か。


けれど、どこか懐かしい気配を感じてしまう。


胸の奥が、妙にざわめく。


 


「……お前、桜依か。」


蒼蓮の低く静かな声が、夜の空気を震わせた。


その瞬間、桜依の胸の奥で何かがふっと灯る。


 


「……どうして、私の名前を――?」


かすれた声で問いかける桜依に、蒼蓮はほんのわずか、目を細めた。


 


「ずっと……見ていた。」


その言葉の意味を理解する前に、空気がまた揺れた。


社の奥から――何か、異変の気配。


 


「……何?」


桜依が戸惑うより早く、蒼蓮が鋭く顔を上げた。


 


「戻れ。」


 


その一言。


だが桜依は――もう、以前のようにすぐには動けなかった。


自分の胸の奥が、何かを求めている。


あの人と、もっと話したい。


もっと……知りたい――


 


そんな気持ちが、確かにあった。


 


けれど――


 


「さよっ!」


社の奥から、柚羽ゆずはの声が響いた。


その声に、桜依ははっと我に返る。


 


「母様……?」


 


振り返ったその瞬間――


蒼蓮の姿は、もうどこにもいなかった。


ただ、静かな風だけが桜依の頬を撫でていた。


 


 


――第五章、了。

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