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第6通 果物

 悠平は果物も大好きであった。リンゴ、オレンジ、バナナetc. 流動食以外で口に入れられるのは、スイーツと果物だけだった。

 病気を受け入れた訳ではない。心の中にはまだわだかまりが残っている。悠平の心は腐りかけた果物の様なものであった。そんな状態をギリギリの所で支えてくれたのが、スイーツや果物であった。

 特に悠平が好んで食べたのが柑橘系の酸味の強いオレンジやグレープフルーツだった。バナナも好きだったが、大酒飲みでヘビースモーカーであった悠平にとっては、刺激の強い果物と言えば柑橘系のフルーツであった。

 入院して以来病室から出たのは外出で出たきり一度の事であった。それでも他の患者と交わりたい。親しくなりたい。そんな気持ちは悠平の心の中には少しもなかった。

 元々人間関係の苦手な悠平にとっては、残されたわずかな時間を縁もゆかりもない人との交流に割く事は考えられ無かった。


 我が子へ 其の六

 明日で父さんが入院して1週間になります。時が経つのは恐ろしく早いもので、父さんの残りの命の終わりも少しずつ、少しずつ近付いている事になります。父さんはきっとこの手紙を読んでいる頃にはきっと、この世にはいないんだろうなと考えると寂しい気持ちで一杯になります。最近思う事はあります。人間の真価はどう生きるかではなく、どう生きたかであると思っています。そして人生の長短ではなく、中身の濃さが大事なのであると。入院していると、普段当たり前に出来ていた事が出来なくなって、無力感を覚える事もあります。今日は丁寧語で書いてみたけど、なんかぎこちなくて変だね。明日からは普通に戻すとするよ。

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