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宣告-SENKOKU ~余命宣告を受けた父から愛する家族へ贈る365通の手紙~  作者: 佐久間五十六


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第310通 比例しない2つ

 生後2ヶ月程経過した勇斗と雅は少しずつ大きくなって、成長するのがはっきりと確認出来た。それとは比例しないものが悠平の健康状態であった。

 ガンの進行も少しずつ進み確実に悠平を苦しめ出していた。いくら医学の進歩が日進月歩だとしても、STAGEの進んだガンを劇的に改善させる特効薬や治療方法は無かった。

 それを恨んだ所で、自分に出来る事など何一つ無い事が悠平にとっては苦痛であった。抗がん剤は拒否したが、放射線治療や経口薬のお陰でガンの進行を遅らせてはいたが、それは無駄なあがきであった。切除不可能部位への転移が一番恐れていた事であったが、肺や大腸に転移が見られていた悠平にとって、それらが進行して行く事は、死に直結するものであった。

 最早抗がん剤の使用しかそれらを食い止める手立ては無かったが悠平は頑としてそれを拒んでいた。


 我が子達へ 其の三百十

 最近は手紙を書くのも辛くなってきたから、ナースの皆さんのお力を借りて代筆してもらったりしている。自分の意思さえしっかりしていれば、ペンを持たなくても辛くても何とかなるのであるものだな。自分の体の事だ。何を言われても悪くなっているのは確かだし、分かる。それでも隠されるよりは言って貰った方が、良いのだがここまで悪くなっていると、もうそんな事はどうでもよくなってる。いつ意識を失っても、死んでも良いような気持ちで毎日を過ごす事が、どれだけ精神的にしんどいのか、と言う事さえ分かっていてくれれば父さんの苦労も少しは報われるのかもしれない。

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