第4通 副作用
少しでも長く生きたい。そう願う悠平と美代子であったが現実は二人の想像を絶する苦しみとの闘いであった。主治医は少しでも長く生きるのなら抗がん剤を投与するしかない。そう二人に伝えた。二人も一般知識としては抗がん剤の知識はあったが、まさか自分が使うはめになるとは思っていなかったし、それで苦しむとは思ってもいなかった。
薬の副作用は思った以上に辛かった。髪の毛は抜け落ちるし、体中が痛むし、食欲もないので相変わらず横ばいでチューブによる流動食の措置がとられた。手紙は辛うじて書けていたが、悠平にはある思いが芽生え始めていた。
手紙を書けなくなるくらいなら抗がん剤の使用は止めたい。その思いが強くなっていた。結局抗がん剤の投与は3日で止めた。すると体の調子は戻り嘘の様に改善した。
ただ、主治医は二人にこう言った。
「抗がん剤は副作用も大きいですが、ガンの進行は食い止められます。それを使わないと言う事は、ガンの進行速度は早くなります。それだけは覚えておいて下さい。」
悠平と美代子の闘病生活はまだ始まったばかりである。
我が子へ 其の四
痛い、辛い、苦しい。そんな事を手紙には書きたくなかった。けれど、抗がん剤ってドラマや映画で見るよりもハードなものだよ?父さん、お前がどんな死に方をするか恐らく見る事は出来ないけれど、父さんと同じガンで死んで欲しくないな。余りにも辛かったから、父さん逃げた。抗がん剤の投与はすぐ止めちゃった。この手紙を書けなくなるくらいなら止めてくれ。そう先生にお願いしたんだ。父さんの生き様を死ぬギリギリまで自分の手で書き残したいからでないと、死ぬに死ねない。そう思ったからだ。幸い食欲も出てきたし流動食早く解除されると良いけど…。じゃ、またな。