第2通 食欲不振
自覚症状はまだそれほどまで無かった悠平であったが、以前は呆れる程の大食漢であったが、入院してからは、食欲がわかず極度の食欲不振に陥っていた事を美代子は心配していた。
美代子と担当医は悠平の病状を告知するかしないかで、議論したが、結局本人(悠平)の意志を確認したところ、治療方針として、病状は包み隠さず告知して欲しい。それがどんなに悪いものであっても。
その方針に従い悠平の意志を確認して、それを受けて担当医は余命2年の宣告をした。悠平は特段動揺する事もなく、悠平は落ち着いていた。
それでも心の中に葛藤を抱えていた事は、美代子にも手に取る様に分かった。それでも取り乱す事もなく、自分の病気を受け入れて表面的には落ち着いていた。
だが、次第に病魔は悠平を蝕んで行くにつれ、悠平の気持ちの糸も切れてしまう。辛い時にこそ、人間としての真価が問われる。そんな事を言っても今の悠平には寝耳に水であったのは間違いない。
我が子へ 其の二
父さん、何だか前より痩せてしまったみたいだ。食欲不振だし、食事は美味しくないし、病院給食よりも美代子(母さん)の料理の方が食べたいし旨いはず。体が重くて何だか自分の体ではないみたいに感じてしまう。こんな事を書いて良いのか迷ったが、書く。父さん、お医者さんから今日余命2年の宣告を受けた。お前らがこの言葉の意味を知るのは、最低でももう15年先の事だろう。最近イライラするんだ。今まで当たり前に出来ていた事が出来なくなって行ってしまう事が多くなってしまったから。でも父さんは最後まで向き合う。自分の病気と。