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宣告-SENKOKU ~余命宣告を受けた父から愛する家族へ贈る365通の手紙~  作者: 佐久間五十六


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第19通 505号室

 505号室…それは悠平がいる病室の事だ。悠平は入院してからずっと1日の大半を505号室で過ごす。それだけ居心地の良い場所かと思っていたが、そうではなかった様だ。夏は暑いし、冬は寒い。それもエアコンが体にさわると言う理由だった様だが、エアコンがなければよほど体にさわるだろう。

 唯一そんな体温調整が上手く出来ない俺を救ってくれたのが、窓であった。冬はエアコンが無ければ毛布を被っていれば良いが、夏はそうはいかない。

 逃走、自殺予防の為少ししか開かないが、このゲートが何よりの助っ人であった。日陰になる位置にあった505号室において、この窓を開ける時に出来る隙間がどれほど自分を救ってくれたか分からない。最も窓を開けて寝る事は禁止されてはいないもの、あまりしないようにと言われていた事は確かだった。

 今もそうだが、痛みもない状態で普通の日常生活を送れている事は余命2年なんて、ハッタリなんだろうかと思ってしまう事も多々あった。でもハッタリで余命宣告なんてしないだろうとも思っていた。


 我が子へ 其の十八

 今ある環境に満足しているか、しないかでソイツの主観的人生観は良くも悪くもなる。それが人生の全てじゃない事なんて分かっているけど、人間にとって今を満足に生きているかいないかで、自分が幸せか幸せでないかを計れるものらしい。父さんは満足していないけど、幸せだよ。贅沢言っては駄目だよな。父さんの様な人は珍しいのかもしれない。現状には満足していないが、にも関わらず幸せであると言う矛盾。幸せの一因は充実した毎日と母さんがいるから。エアコンの温度位どうと言う事ではない。余命宣告が父さんと母さんの絆を深くしてくれた。病気に感謝するのはおかしい話だが、感謝する所は多々ある。

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