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藍の輝きもう一度  作者: シャボン玉
4章 藍の輝き

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4章2話 ヒーローインタビュー

 俺がプロになり、三度目の夏を迎えていた。相変わらず灼熱の暑さが埼玉を襲っている。それでも暑さに抵抗し、高校生は白球に青春をかけ、県内各地で激戦が繰り広げられていた。

 そんな夏の土曜日、俺は初めて一軍に登録された。この時期は疲労で故障が出やすい。内野手のレギュラーが脇腹の肉離れになり、急遽前日に野手コーチから一軍登録の連絡を言い渡された。

 埼玉ドームの大声援の中、俺は七番サードで先発出場。二つの四球に決勝のタイムリーとなるプロ初安打を放った。ヒットはかなり偶然だった。一軍の投手はレベルが違う。俺なんかでは軌道を見て打ちに行っても差し込まれるだけ。割り切って狙い球を絞り、外れたら空振りでも良いぐらいの気持ちで打席に立ったのが功を奏した。運よく狙い球がやや甘めに入り、センターにはじき返した。

 そして、そのヒットでの得点でレオネスが勝利。俺はヒーローインタビューに選ばれた。


「放送席!放送席!今日のヒーローはもちろんこの方。プロ初出場でみごとな決勝タイムリーを打った矢上真選手です」

 三塁側、レフトスタンドからの声援と共にレオネスの青フラッグがバタバタと揺れている。グラウンドから観たその光景は想像を遥かに超えた爽快さだった。

「初出場で初ヒットが決勝のタイムリー。素晴らしいデビュー戦でした」

「ありがとうございます!」

「まずは六回の一点ビハインドで迎えた先頭打者での場面、フォアボールを選びました。同点に追いつくきっかけを作りましたが、どのような気持ちで打席に立たれたのでしょうか?」

 ・・なかなか分かっているな、流石だ。

「はい。雄太さんが好投していたので絶対に塁に出る!と強い気持ちで打席に立ちました」

 正面の三塁側スタンドから拍手や黄色い声援が飛ぶ。

「十二球粘ってのフォアボールにガッツポーズ。こちらにも熱い気持ちが伝わってきました」

 さらに大きな拍手を呼び起こした。

「ありがとうございます!」

「そして、同点で迎えた八回ツーアウト二塁の場面、あの場面はいかがでしたでしょうか?」

 ようやく、タイムリーの質問がきた。

「はい、鈴矢がツーベースで出て、流れがきてたので繋ぐ意識でコンパクトにいきました」

 ファンの反応もまずまずだった。

「そして勝ち越しとなるタイムリーとなりました。その時にお気持ちはいかがでしょう」

「はい、打てて良かったです」

 定番の返しでやや笑いを取れたがいまいちか。

「さて、お手元にはプロ初安打のメモリアルボールがありますが、どなたにお渡しますか?」

「えーーー、そうですね。両親にと思ったのですが」

 俺は隣を向いて続けた。

「隣にいる妻に贈りたいと思います」

 三塁側から爆笑と嵐のような拍手と野次が巻き起こり、ぐちゃぐちゃになった。

 隣にいるアナウンサーは口に手を当て、隠しきれない驚きを見せる。その様子が一層ファンを盛り上げる。パシャパシャとシャッター音が鳴り続け、フラッシュはとてもではないが目を向けられない。

「わ、わたしに?」

「受け取ってくれる?」

 彼女は涙目になりながら頷いてボールを受け取った。

「まこっちゃんからボールもらいましたぁ‼」

 全開笑顔でそう叫ぶと、受け取ったボールをサービス精神旺盛に三塁側、レフトスタンド側と順番に掲げて見せた。

 歓声はドームの屋根とスタジアムの間の隙間から溢れ出るような大きさだった。

 スタンドからは即席で「ま・こ・と!な・つ・き!」のダブルコールが沸き起こる。

 いつまでも続くコールを惜しむようにアナウンサーは自身の夢を締め括った。


「えーーー以上、ヒーローインタビューをわたくし、レオネス公式サポーターの矢上夏希が担当させていただきましたぁ‼」


 埼玉レオネスがかつての輝きを取り戻したのはちょうどこの頃だった。

 令和の常勝軍団として日本シリーズを何度も優勝することになる埼玉レオネス。

 当然、監督やコーチ含め多くの選手の活躍があった。

 だが、多くの評論家や著名なOBは口を揃えるように矢上真を絶賛する。

 エースでも4番でもない。主要なタイトルとは無縁。プロの中では恵まれた才能は無かった。

 それでもヒーローインタビューに立った回数は毎年、チーム内で最多を誇っていた。

 勝利に導く矢上真の気迫や純粋に野球を楽しむようなプレーは、観ている者の記憶にいつまでも残り続け、天才と呼ぶ人も少なくない。

 そして、いつしか矢上真と矢上夏希の掛け合いが見られるヒーローインタビューは埼玉ドームの風物詩となり、パ・リーグを盛り上げていた。


 そんな矢上真、矢上夏希の共演。その一歩目となるこの日、埼玉ドームで沸き起こった熱狂が天まで届きそうだった。

 そして、天に昇っている太陽は夕方前だというのに埼玉ドームだけでなく日本全体を照らし、沸騰させている。

 埼玉の県北、二人の故郷でも同じく暑かった。

 その故郷のとある校舎に花壇がある。

 そこには、暑さに負けじと力強くまっすぐに伸びた向日葵が風に揺れていた。

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こちらで過去編を描いています。 【藍の軌跡
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