表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
処刑された無名の少女僵尸は道士に偏愛される  作者: 雨海月子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/59

第56話 とある鬼の新しい生活

 皇帝陛下と皇后陛下から結婚のお許しをいただき、俺は彼女と暮らしている家に戻ってきた。手の中には、恐れ多くもいただいた美しい刺繍がある。


「結婚……認めていただけたね」


「これからは名実ともに、二人で暮らしていけますね。本当に、よかった」


 ほろりと零れ落ちる彼女の涙を掬ってあげる。誰とも繋がっているようで繋がっていない存在だった俺に、妻ができたということがまだどこかで信じられなかった。


 鬼は人間から転化するか、自然から生まれるかの二種類になる。俺は後者で、森の木々の中から生まれた鬼だった。鬼の中でも力が弱い俺は、道士の使い走りのように使われ続けて生きていた。道士に使われていない時は、強い鬼に使われていた。俺のことをこき使っては来たけれど、人間同士がしているような手を取ったり会話をするようなことは、誰もしてくれなかった。


『鏡の向こうに、霊と鬼が暮らせる世界を作ったんだ。僕は、そこに住んでくれる人を探していてね。きみのような、破壊衝動や負の感情に吞まれていない鬼には積極的に声をかけているんだ』


 ある日、俺のことを術で呼び出した道士は変わったことを言った。俺を術で縛るわけでもなく、命じるわけでもなく、俺に選択権のある問いかけをしてきた存在は初めて見た。それが、今の皇帝陛下との出会いになる。


『俺は……選んでいいのか?』


『うん、地上で暮らすことが好きなら、ここに残っても構わない。鏡の向こうはまだ作りたての世界だから、こちらほど明るくないだろうしね』


 それでも、その時と違う何かが欲しかった。だから、手を取った。そうしてやってきたこの世界で、俺は彼女に出会った。


『あの……あなた、鬼、なんですか?』


『あ、ああ。角がこの通り生えているし、鬼だな。その、見るのは初めてか?』


 若い人間の霊の娘だった。最初に会った時、話しかけられているとすぐに気付かなくて、戸惑っていた彼女を見て「かわいい」と思った自分に驚いた。


「初めて会った時は、霊とはいえ人間と結婚するだなんて思ってなかったなあ」


「私も……生きてた頃は誰かと結婚できなかったし、相手が鬼だなんて思いませんでした」


 ここの住民は皆、好き勝手に住んでいる。俺はあれこれと木をいじっているうちに、気づけば人間が暮らすような家を建てていた。彼女は近くで住む場所を探していたから、俺は自分の家に何も考えず、彼女を招き入れたのだ。一緒に暮らし、話しているうちに、結婚という形になったことへこれからが楽しみだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ