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処刑された無名の少女僵尸は道士に偏愛される  作者: 雨海月子


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第37話 静かなる日々

 彼はあの日以来、しばらく私の部屋に来なくなった。葉夫人にそれとなく聞いてみた時の返事は、「お仕事がお忙しいようです」と答えが返ってくるだけ。けれど、それだけではないと思ってしまった。彼が私の寝台で眠った時から、様子がおかしい気がしたのだ。聞いてみても、「疲れてるみたい」と言われただけで、何も話してはくれなかったけれど。


「あの人は、今度は何をしようとしてらっしゃるのかしら。太陽を作るのって、何を使うのかしらね?」


「りりりりりり」


 深紅(ホンファ)にそう話しかけたりしながら、彼が来ないなら来ないで私はゆっくりと過ごしていた。図鑑の他の絵を見たり、葉夫人と話したりする。新しい刺繍を作りたいと持ち掛けてみると、葉夫人は新しい絹布をくれた。なので何の頼みもないけれど、また刺し始めた。


「今度は何に……ああ、そうだわ。あなたの姿を刺して、彼の手元に置いてもらいましょうか」


 私が撫でてあげながらそう言うと、小さな人魚は嬉しそうに笑う。その顔や綺麗な尻尾を、すべて絹布の上に描き出す遊びを始めた。


「まあ、皇后さま。今度もまた素晴らしいものをお作りになっていらっしゃるのですね」


「あの人が来た時に見せて、せっかくだから驚かしてみようと思って。ああ、ほら、こっちを向いて……そう、いい子」


 人魚は私の言うことを素直に聞く子で、私の言葉もちゃんと理解している。私は時折、葉夫人と一緒に外に出た。と言っても、糸の追加を取りに行ったり、庭に出て少し桜を見たりする程度だ。他の場所は、彼と出歩きたかった。迷子になる自信もある。


「ねえ、葉夫人。最近は人の出入りが多い気がしない?」


「皇后さまには本来、もっと沢山の女官がついているべきだったんですよ。最近はお元気になられましたし、姿を現す女官を増やしております。皇帝陛下からのご采配でございます」


 女官の淡い姿をやけに沢山見かける気がすると思って聞いてみると、そう返ってきたので私は納得することにした。確かに、私が今は皇后らしいので――正直、それらしいことをほとんどしていない気がするから、実感はまだ薄い――沢山の人を使う立場になるのだ。


「何か、私にできたり必要なことってあるかしら?」


「皇后さまはゆったりお座りになられたまま、刺繍をされておればよろしいのですよ。そこにおられるだけで、皇后さまのお仕事をなさっていると言ってもよろしいです」


 葉夫人にはそう言われたので、おとなしく刺繍に戻る。こうしてみると、彼に会いたかった。

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