表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
処刑された無名の少女僵尸は道士に偏愛される  作者: 雨海月子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/59

第18話 花を愛でる、彼と話す

「きみは、花と刺繍が好きだったからね。ここに長居しては体に障ってしまうけれど、見せる分には問題ないと判断したんだ。ずっと眺めていてくれて、嬉しいよ」


 彼はどうして、私がそういうのを好きなのかを知っているのだろう。それはわからないけれど、あまり教えてくれそうになかった。降り注ぐ花を見上げていると、彼がそっと私の肩を抱いてきた。相変わらず、壊れ物を扱うように抱きしめられてくるから、悪い気はしない。ほんのりと体温のある手に頬や髪を撫でられた。


小鈴(シャオリン)、甘いものを用意させたんだ。一緒に食べようね」


「ええ」


 彼が用意してくれたのは、上品な餡子を柔らかい皮で包んだ饅頭だった。私が食べる姿をニコニコと彼は眺めているけれど、私が「食べないんですか?」と聞くと、「ああ、そうだね」と言って饅頭に口をつけた。


「聞いたのですけれど……、あなた様だけは生きていらっしゃる、じゃないですか。この世界の中で。だったら、ご飯は食べないと、いけませんよ」


 彼は私にそう言われて、目を見開いたように見えた。にこにこ笑っていた彼の笑みが、一瞬消えたことにぞくっとする。怖かった。何故か、怖いと思ってしまった。私には何ひとつ、害意や悪意を向けてきたことのない人なのに。


「ああ、でも、そうだったね。僕だけは、ご飯をちゃんと食べないと……でも、きみも食べるんだよ。今のきみの体を維持するのに、きみも何かを食べないといけないから。この世界でご飯を食べる必要があるのは、僕ときみだけだからね」


「……わかりました」


 どうやって食事は用意されているんだろう、とかを思った。幽霊たちの世界で、当たり前のように飲み物や食べ物が用意されているこれは、何なのだろうと。けれど彼は私の膝の上に頭を乗せて寝転がってきて甘えてくるから、その頭を撫でる方に意識が行く。

 —―彼と話していると、よくこうなる。頭がぼんやりしたり、思考がふわふわとしたり。彼といる時の私は、一人でいる時の私とは絶対に違う。けれど、それを上手に伝えられたことはなかった。


「ほら、お口を開けて」


 自然と言われるままに口を開くと、彼は私の口に半分にした饅頭を入れてくれた。もぐもぐ、と咀嚼する。おいしい。彼は私がものを食べている姿を見ているのが、好きなようだった。


「ん……やっぱり、おいしいです」


「ふふ。用意させて良かったよ」


 彼はそう言って私の膝に頭を乗せたまま、すりすりとお腹に頬を摺り寄せてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ