第一話
この感情は友情なのでしょう。
大切で、守りたくて、好きで、一緒にいたい。
自分は片思いなのでしょうか。
高校生の春だった。
――彼女と出会ったのは。
入学式が終わり、腹を空かせながらバス停のベンチに腰を下ろしていた。憂鬱だったのだ。受験が不安で、勉強するのも怖くなって、学校サボって、親に叱られる。出来る限り全力で試験に臨んで、合格発表が怖くて、耐えられずにいた。
第一志望の高校が合格と分かった瞬間、なんと軽くなったか。
新学期もなんだか不安になってきたぞ。友達は出来るのか、
勉強についていけるか……留年だって…。
桜がこんなにも満開なのに、自分の心は閉ざされている。
「あれまー……5分発の先越されたか!」
腕時計を見ながら独り言を呟く女子生徒。
同じ高校の制服を身につけていた。リボンの色が赤色ということは同じ一年生ということだ。
「5分発のならまだ来てませんけど」
なんとなく声をかけた。
「え!もう10分だけどなあ。遅れちゃってるのかな」
走ってきたのだろうか、息切れをしながらベンチに座る。
隣に座った女子生徒の時計をそっと見るとどうもズレていた。
「5分ほどズレてます…時計」
「わっ!ほんと?ごめんなさいね!今何時か分かる?」
「4分になったところですよ」
デジタル時計を差し出して見せると、急いで時計の針を4分に合わせた。
「ありがとうありがとう!この恩はいずれ……」
「…いずれ?」
「あ、やっぱ変更。この恩は一生忘れません!」
「…変更された」
そんな彼女との時間はあっという間で、5分発のバスが来た。
2席が空いていて彼女が窓側に詰めると手招きをして俺を誘った。気付けば彼女はリュックを抱いてぐっすりと寝ている。 そういえば、どこで降りるかなんて知らないな。降り損ねてしまったらどうしよう、かと言って起こすのも何か悪いし。そんなこんなでバスは終点を迎えてしまった。勿論、自分の降りるバス停はかなり離れてしまった。結局最後まで起きなかったなあ。と思いながら声をかけた。
「もう終点ですよ」
今にも、勢いよく目が覚めて、寝過ごしちゃった!と
喚いていそうだ。
「わっ、あなたも終点で降りるんですか」
彼女は終点で降りるようだった。
「…どうやら寝過ごしてしまったようです」
「だはは、気をつけて」
何とも微笑ましい笑顔で手を振ってくる。
戻りのバス停は向こうの信号を渡った喫茶店の前だと親切に教えてくれた。腹を空かせながらバス停のベンチに腰を下ろしていた。上の空だった。サラサラなセミロングが肩に当たって、
寝顔がなんとも可愛らしかった。寝息の音が俺の心を安心させた。とても変人だったなあ。
第一話おわり、続く。
初めての投稿です。
一一と書いて、にのまえ はじめです。
よろしくお願いいたします。
恋愛ってなかなか面白いですよね。
友人と恋人の狭間ってなんなのでしょう。
そんな、曖昧な男子高校生を主人公としたお話です。
次回も乞うご期待ください。