レッスン1『冴えない俺がダンスをしたら』
世の中には様々なアプリがある。
スマートフォーンという小さな画面でアプリを起動させたものならば多種多様な世界を見せてくれる。
と言っても俺はソシャゲ中毒なんだが――
何気ないゲームライフを楽しんでいただけだったのに……
某ダンスアプリが令和という時代を彩った瞬間。
窓から外を見るとダンスで踊り狂っている人間が急増した。
突然の出来事に戸惑いを感じたが、俺以外の人間はそのアプリ色に染まっていった。
まあ、どうせ俺には関係ない出来事だし所詮一過性だろう、と考えつつも正直興味はある。
小柄だし気も弱い。一度も彼女が出来たことのない、まさに『冴えない』俺がやったらバッシング間違いないだろう。そう心の中で自分を卑下させていたら――
「ケンタ! あんたもやらないの?」
クラスで一番美人の市川リンが俺に話しかけてきた。
まじか、今まで話しかけられなかったのに……某ダンスアプリは時代どころか俺の青春すら彩ってくれるのか。
「あ、あ、ああ。考えてみる」
コミュ障は相変わらずのようだ。
やはり周りを見渡してみると教室はダンススタジオと化していた。
体育の授業でダンスを嫌っている人がやたら多い記憶もあり、俺もその一人なのだが、もはやダンス嫌いは今となっては人権がないようだ。
「ホント! 一緒に踊りたいんだから……アンタと」
恥ずかしそうに頬を染める彼女は逃げるように奥の方へと行ってしまった。
え? 今なんていった? 聞き間違えじゃ無いなら――
彼女はいつのまにか女友達と共にダンスを踊っていた。
腰や腕をくねらせて楽しそうに笑う姿。
スカートがひらりと舞ってピンク色のパンツが露出しているのに気付かない様子だった。
俺は家に帰るとバッグを床に放り投げて某ダンスアプリをインストールしようと試みる。
とんでもないダウンロード数だな……時代を作り替えたアプリの実力か。
よし! 俺も今日をもってダンス星人になる!
いずれは市川リンとカップルチャンネルが――なんてね。
妄想は程ほどに、そうと決めたら俺は頬をパンッと打って意気込んだ。
ポチッとな!
そう、この日から俺の人生は変わったのである!