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97「国境封鎖」

翌朝、私達はミッドガルとグラハムの国境までやって来た。

しかし、国境は封鎖されていて行商人達が足止めされていた。

行商人達は群がり国境警備隊に文句を言っている。


「おい、何があったんだ?」

「アルタイル王国が勝手に国境を封鎖したんだよ」

「国境封鎖だと?どう言うことだ!」

「俺に聞かれてもわからないよ」


マリア―ヌは興奮しながら行商人の男の胸ぐらを掴みあげる。

行商人の男は困った顔で私に助けを求めて来た。


「参ったな。国境が封鎖されたんじゃグラハムには入国できない」

「私が訳を聞いて来る」


マリア―ヌは肩を怒らせながらアルタイル王国の国境警備隊に詰め寄った。


「国境封鎖とはどう言うことだ!」

「アトス様の指示だ」

「アトス?」

「アトス様はアルタイル王国の第一騎士団長でありマクミニエル国王の片腕だ」

「ならば、国境封鎖はマクミニエル国王の指図だと言えるってことか」

「そう言うことだ。わかったら、とっとと下がれ」


ここでマクミニエル国王が国境を封鎖したと言うことはプリム達を国内に留めることが狙いか。

しかし、プリム達はすでにグラハムに渡っている。

マクミニエル国王はそのことを知らないのか。

まあ、無理もないか。

アルタイル王国の情勢は不安定だからな。

過激派の鎮圧に力を入れ過ぎて、諜報活動に手が回らないのだろう。

それよりマクミニエル国王もアンナ女王の企みを知ったと考えた方がいいいな。

おそらく拷問にでもかけられてカイザルが口を割らせたのだろう。

しかし、これでグラハムに渡ることが出来なくなってしまった。


「タクト、どうするの?」

「とりあえずナイルの街へ戻ろう」


私達は仕方なく引き返してナイルの街へ戻った。





その頃、アルタイル王国にヴェズベルト王国からの使者達が到着し交渉をはじめていた。

しかし、交渉がまとまらず3日も膠着状態が続いていた。

アルタイル王国からは第一騎士団長のアトスを筆頭に各大臣達が並ぶ。

一方、ヴェズベルト王国からは第二騎士団長のエミリアを筆頭に使者達が並んだ。

アトスが議題の進行をはじめる。


「私達の要求は以前示した通りだ」

「それは受け入れられない。法外な資金提供は脅し以外の何物でもない」


エミリアは屈することなく要求を弾き返す。


「脅しとは心外な。私達はカイザルにそれだけの価値を見出しているのですよ」

「カイザルにそれだけの価値はない」

「ほう、随分ときっぱり断言しますね。私達はあなた方の企みは知っているのですよ」


エミリアは唇を噛み締めてアトスを睨みつける。


「まあ、そんなに怒らないでください。私達は喧嘩をするためにこの会談を開いた訳ではないのですから。では、あなた方の要求を聞きましょう」

「無償でのカイザルの身柄引き渡しだ」

「無償ですか。クククク」

「何がおかしい?」

「これは失礼。ただ、あなた方の要求が滑稽だったものですから」


サラーニャのババアはあくまでこちらの要求を飲まないつもりだろう。

まあ、10億ゴールドなんて法外な金額を提示されたのだから仕方ないが。

それでもカイザルの身柄は確保したいらしい。

カイザルの知っている情報が目当てのようだな。


さて、交渉はどうするかだな。

マクミニエルは資金提供を強く推して来た。

それは過激派を制圧するための軍資金にするつもりだからだろう。

資金提供はあまり芳しくないことだが、いくらでもやりようはある。

実際に財布を握っているのはアトスなのだから。

既にここにいる大臣達には根回ししてある。

地位を保証する代わりにアトス側につくと言う条件を飲ませた。

マクミニエルを支持している大臣達は一握りもいない。


だからと言ってサラーニャのババアに無償でカイザルを渡す訳には行かない。

仮に貸しを作るためにカイザルを引き渡してもサラーニャのババアは聖女を祀り立て軍事力を強化するだろう。

そうなってしまっては貸しも貸ではなくなる。

常に剣を突き立てられている状況になるのだ。

それでは政権をとったとしても都合が悪い。

アトスは右手を広げて価格を提示した。


「では、これではいかがですか?」

「高い」


無論、エミリアは首を横に振る。


「困りましたね。私達もだいぶ譲歩しているつもりなのですけどね」


すると、エミリアが右手の人差し指を立てて言って来た。


「これなら受け入れよう」

「1億ですか?」

「違う。100万だ」

「クククク。100万ですと?これは愉快だ。クククク」


アトスは嘲るように笑い飛ばす。

そして心を刺すような鋭い目つきでエミリアを睨みつける。


「100万だなんて冗談ですよね。これは国家間の交渉事なのですから」

「これで飲めないのならば交渉は決裂だ」

「よろしいのですか?あなた方が喉から手が出るほど欲していたカイザルを諦めるのですよ」

「無論、それも覚悟の上だ」


これはちょっと雲行きが怪しくなって来たな。

サラーニャのババアがここまで覚悟を決めていたとは。

しかし、アトスとしても面目がある。

100万だなんて破格な値段で受け入れる訳には行かない。

何とか値を釣り上げなければ。


「わかりました。それでは5000万で手を打ちましょう」

「いや、500万だ」


こいつ足元を見て来やがるな。


「ならば3000万で」

「800万だ」

「ええい、1000万でどうだ。これ以上は負けられない」

「いいだろう。1000万で取引をしよう」


交渉が締結される。

1000万で交渉をまとめるなんてアトスも冷静さを欠いたか。

まあ、こちらの資金提供の要求はもともとハッタリのようなものだ。

サラーニャのババアの寝首をかくためのモノだからな。

それに、こちらは既に聖女と魔水晶の対策は講じてある。

聖女と魔水晶を手に出来るのも時間の問題だろう。


両方の代表者が書面にサインをして交渉が成立する。

資金提供は後日、支払うと言うことでエミリア達はカイザルを連れてヴェズベルト王国に戻って行った。





私達は酒場のテーブルを囲んで話し合っていた。

酒は喉を潤わす程度に嗜んで。


「これからどうするんだ、タクト?」

「国境が封鎖されていたんじゃグラハムには入国出来ないわね」

「カイザル達みたいに密入国でもする?」


それもひとつの手だが、これだけの大所帯じゃすぐに見つかってしまうだろう。

密入国で捕まりでもしたら投獄されてしまうのがオチだ。

しかし、ここで手をこまねいていても時間が過ぎるばかり。

その間にプリム達はどんどん遠くへ行ってしまう。

私は答えを求めるようにマリアーヌを見た。


「まったく方法がない訳でもない」


みんなの視線がマリア―ヌに集まる。


「グラハムの使者を装うんだ。タクト、ダゼル国王からもらったメダルがあるよな。それを使うんだよ」

「その手があったか!」

「アルタイル王国とグルンベルグ王国は歴史的に見ても対立がない。友好関係こそ築いていないが、交易は比較的自由に行われている。経済的観点からも両者の関係は親密だ」


マリア―ヌのアイデアならばうまく行く。

ダゼル国王からもらったメダルはサラーニャへ入港する時にも有効だった。

グラハムからの使者を装えば国境は問題なく通れるだろう。

そしてグラハムに渡ったらダゼル国王の支援を受ける。

プリム達がグラハム内にいればすぐに見つけられるはずだ。

機運は私達に向いて来たのか。


「よし、マリア―ヌの作戦で行こう」

「使者を装うなら服装もそれなりのものにしないとね。これじゃあただの冒険者だし」

「そうだな。まずは服飾店に行って衣装を揃えよう」


私達は酒場を後にして服飾店に駆け込んだ。





アルタイル王国の王室でマクミニエルはアトスの報告を受けていた。


「カイザル引渡しの交渉は1000万で締結しました」

「1000万だと!10億ではないのか?」

「強かに交渉は進めましたが、向こうの覚悟の方が上で」


マクミニエル国王は椅子の肘掛を叩きながら苛立つ。

サラーニャの小娘はマクミニエルの足元を見て来た。

1000万程度では過激派の鎮圧までには及ばないではないか。

ただでさえ懐状態が悪いと言うのに。

これで交渉のカードはなくなってしまった。

後は聖女と魔水晶を小娘よりも早く手に入れることだけだな。


「アトス、もちろん、次の手は打ってあるのだろうな?」

「滞りなく」

「ふむ。さすがはワシの片腕だけのことはある。頼りにしているぞ」


これで聖女と魔水晶を手に出来ればアルタイル王国の軍事力も強化できる。

それに何よりサラーニャの小娘の鼻を空かすことが出来るのだ。

小娘の泣き叫ぶ姿が目に浮かぶようだ。

マクミニエルは薄ら笑いを浮かべながら外を見やった。

その後ろからアトスが冷ややかな目つきでマクミニエルを睨んでいた。


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