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95「夜戦」

翌朝、ドワーフ村を早めに出発し、北東に広がる丘陵地帯にやって来た。

ミッドガルの丘陵地帯はどことなく地の果てにいるかのような雰囲気がある。

大地は赤褐色に染まり、ゴツゴツとした岩が辺りに転がっている。

昔、火山が爆発して溶岩が流れ出して出来た丘陵地帯だけに当時の面影を残していた。


「地獄に迷い込んだみたいだな」

「魔窟と比べればカワイイものよ」

「まあな。あそこは地獄そのものだったからな」


さすがに魔窟の暑さにはうだるものがあった。

もう一度、行って来いって言われたら、素直に断るだろう。

日もだいぶ傾き西の空が赤くなっている。

私は開けた場所に馬車を止め野宿の準備をはじめた。


いつもは運転手付きで馬車を借りるのだが、ドワーフ村ではそう言うシステムはなかった。

馬車は自分達で運転して荷運びをしているとのことだった。

まあ、私が馬車を運転できるから、わざわざ運転手もいらないのだが。


「ガルド、こっちを手伝ってよ。うまくテントが張れなくてさ」

「何だよ、まだテントを張っていないのか」


ガルドはプリシアから杭を取り上げると地面に叩き込んだ。

さすがは手慣れたものだ。

あっという間にテントが出来上がった。


「さすがはガルドね。頼りになる」

「褒めても何も出ないぞ」


何食わぬ顔をしていたガルドだったがまんざらでもない様子。

その証拠に他のテントまで張りはじめた。


「料理が出来たわよ」

「今日は何だ?」

「野菜カレー」

「何だよ、一品だけか?」


ガルドはお腹を摩りながら野菜カレーを見やる。


「仕方ないでしょ。材料が少ないんだから」

「ドワーフの村で仕入れて来なかったのか?」

「ナイルの街まで、そう遠くないから」

「俺は食べ盛りなんだ。これじゃあパワーが出ないよ」

「そんなに文句を言うならガルドにはあげない」


エリザが怒ってガルドのお皿を取り上げる。

ガルドは申し訳なさそうにエリザに頭を下げていた。


「エリザ達の料理はいつ食べてもうまいな」

「タクト、わかっているじゃない。はい、おかわり」

「おかわりはガルドにあげてくれ。私はもう十分だ」

「いいのか、タクト?じゃあ、遠慮なくもらっておくぜ」


ガルドは私のお皿に盛られたカレーにがっつく。

よほどお腹が減っているのだろうか、あっという間に平らげた。


「ふー、食った食った。さて、少し横になるか」

「おい、ガルド。仮眠は少しだけにしておけよ。今夜は夜戦になるのだからな」

「わかってるって」


そう言ったそばからガルドはいびきをかいて眠りはじめる。


「こいつはいつも緊張感がないな。騎士には向かないタイプだ」

「まあ、ガルドも騎士にはならないだろうからな。けれど、こういう所がガルドの良いところでもあるんだよ」

「そんなものなのか」


すると、目の前の地面がボコりと盛り上がる。

それはひとつだけでなく、馬車を取り囲むようにそこらじゅう。

目をキラリと光らせながらこちらの様子を見ていた。


「おい、ガルド。起きろ。モンスターのお出ましだぞ」

「何だよ、気持ちよく眠っていたところなのに」


ガルドはブツクサ文句を言いながら大剣を手に取る。


「地潜りだ!」


――地潜り――

種類:群れで行動する大型の土竜

全長:3メートル

知性:低い

耐性:土魔法耐性

弱点:光の魔法に弱い

特徴①:夜行性

特徴②:日中は地下に潜んでいる

生息場所:ドルトンの丘陵地帯

倒し方:太陽光を浴びせる


今は夜だから太陽光は浴びせられない。

しかし、光の魔法なら代用できるだろう。

まずはエリザのアースクエイクで地潜りを地上に押し上げる。

そしてルーンのサザンクロスでダメージを与える。

残った地潜りはガルド達で個別に撃破する。

この戦術で行こう。

と、私が指示を出そうとした時、エリザが叫んだ。


「タクト、上を見て!」

「ブラッドバットだと!」


空を埋め尽くすほどのブラッドバットが群れを成していた。


――ブラッドバッド――

種類:群れで行動する吸血蝙蝠

全長:1メートル

知性:低い

耐性:なし

弱点:光の魔法に弱い

特徴①:夜行性

特徴②:超音波を出して獲物を察知する

生息場所:洞窟

倒し方:心臓を一突きにする


「二種類も相手にするのか?」


空にはブラッドバッドの群れ。

地上には地潜りの群れ。

同時に相手をしなければならないようだ。


この展開ははじめてだ。

ブラッドバットはダイヤモンドダストで動きを封じてからサザンクロスでダメージを与える。

そして残ったブラッドバッドは個別に撃破する戦術だ。


両方を合わせた戦術を考えなくてはならない。

まずはエリザのアースクエイクで地潜りを浮かび上がらせる。

次いでルーンのレイで軽くダメージを与える。

同時にエリザのダイヤモンドダストで動きを止める。

そこへルーンのサザンクロスで大ダメージを与える。

この連携攻撃で大半のモンスターは倒せるはずだ。

残ったモンスターは個別に撃破する戦術で行こう。

魔法の詠唱の時間はガルド達に稼いでもらうが。


「よし、エリザ、アースクエイクを頼む。ルーンはレイだ!」

「「わかったわ」」


エリザは両手を突き出して、ルーンは祈るように詠唱に入る。


「ガルド、プリシア、マリア―ヌ。エリザ達の詠唱が終わるまで時間を稼いでくれ」

「任しておけ。この鍛え上げた大剣の切れ味を味わうがいい」


ガルドは高く飛び上がり、大剣を振り払って上空のブラッドバッドに攻撃を加える。

しかし、ブラッドバッドはヒラリと軽く身を翻して攻撃をかわす。


「見えづらいうえに当たらない。何だよこいつら」

「蝙蝠は口から超音波を放って障害物を捉えるんだ。むやみやたらと攻撃してもかわされるだけだ」

「じゃあどうするって言うんだよ?」

「そんなの決まっているだろ。こうするんだよ!」


マリア―ヌは切っ先をブラッドバッドに向けると高く飛び上がり刺突を放つ。

ブラッドバッドは避ける間もなく串刺しにされる。

考えたな、マリア―ヌ。

刺突ならば超音波と接する面積が小さい。

反射した超音波を捉えるブラッドバッドも避けきれないだろう。


しかし、これだけの数のブラッドバッドを一体一体狙っていたのでは効率は悪い。

まあ、あくまで時間稼ぎが目的だ。


「タクトさん、準備ができましたわ」

「順番は違うが、ルーン頼む!」

「天空より溢れしし光、数多の閃光となりて、大地を貫け『レイ!』」


ブラッドバッドの地面に魔法陣が浮かび上がると空が曇りはじめる。

そして降りしきる雨のように光の光線がブラッドバッドを捉えた。

ブラッドバッドは光の光線を受けてよろめきはじめる。

これで狙いやすくなったはずだ。


「ガルド、閃光剣でとどめを刺せ!」

「俺の新たなる必殺技を受けてみよ。貫け!『閃光剣!』」


ガルドの刺突が閃光を放ちながらブラッドバッドを捉える。

ブラッドバッドは避ける間もなく一突きで心臓を貫かれた。


「こいつはいいぜ」


ガルドは喜んでいるようだが効率が悪い。

ブラッドバッドは100もくだらない数はいる。

それを一体一体仕留めて行ったら夜が明けてしまうものだ。

と、ブラッドバッドが標的を変えてエリザを狙って来た。


「ちょっと、あっちへ行ってよ」


ブラッドバッドはエリザの周りに群がって飛びながら鋭い牙で吸血をはじめる。


「痛いって!」

「プリシア!聖光炸裂弾でブラッドバッドを追い払え!」

「任せてよ。消えちゃって!『聖光炸裂弾!』」


プリシアが投げた爆弾が空中で爆発すると無数の光の飛礫を放ちながら炸裂する。

ブラッドバッドは、その光に目を眩まらせられて気絶した。

ボトボトといくつものブラッドバッドが地面に叩きつけられる。

一度の爆発で10体は仕留められた。


「ガルドの必殺技より効果的」

「俺のはボス向きなんだよ」


ニヒヒヒと笑うプリシアの横でガルドは苦虫を噛み潰している。

その間にエリザの詠唱が終わる。


「タクト、準備はいいわよ」

「よし、次は地潜りだ」

「深淵より蘇りし紅の、大地を胎動する血潮は、この惑星の核成り『アースクエイク!』」


大地に魔法陣が浮かび上がると大地が大きく震えはじめる。

大地が二つに裂けて中から溶岩が溢れ出す。

地潜りはたまらず地上に飛び出して来た。


「よし、ルーン。サザンクロスを頼む」

「了解しました」

「エリザはダイヤモンドダストだ」

「今度はちゃんと守ってよ」


エリザとルーンは魔法の詠唱に入る。

すると、地潜り達は鋭い爪を掲げながらエリザ達に向かって来た。


「させるかよ。貫け!『閃光剣!』」


ガルドはすかさず地潜りに閃光剣を放つ。

追従するようにマリアーヌも疾風陣を放つ。


「私の前にひれ伏せ!『疾風陣!』」


マリア―ヌの剣から放たれた無数の衝撃波が地潜りを捉える。

地潜りはかまいたちにあったかのように切り刻まれた。

疾風陣は一度の攻撃で数体の地潜りを倒した。

ガルドの閃光剣より効率がいい。


その間にまたブラッドバッドが空からエリザとルーンを狙って来た。

知性が低いがブラッドバッドも考えて行動して来ているようだ。

すかさずプリシアが反応する。


「エリザ達には手を出させないわ。消えちゃって!『聖光炸裂弾!』」


プリシアは聖光炸裂弾をまとめて放り投げる。

聖光炸裂弾は空中で爆発して光の飛礫を炸裂させた。

まるで夜空に打ちあがる花火のごとく、ブラッドバッドを捉えて地面に打ち落とした。


「やりぃ!」

「タクト、こっちはいつでもいいわよ」

「エリザ、頼む!」

「零氷が紡ぎし雫、氷雪の飛礫となりて、空間を切り裂け『ダイヤモンドダスト!』」


空気中の水分がパキパキと音を立てながら冷気を発しはじめる。

そして空間にいたブラッドバットと地土竜を凍らせて行った。

ブラッドバッドは飛行力を失い地面にバタバタと墜落する。

空にいたブラッドバッド全てが氷と化して地面にひれ伏した。


「よし、ルーン。とどめを刺せ!」

「宇宙に瞬く無数の星々よ、我の祈りに答えて、この惑星を浄化せよ『サザンクロス!』」


天空に瞬く星々の十字架が浮かび上がると星々はエネルギーを圧縮させる。

そして神が審判を下すかのごとく、光の隕石を大地に降り注ぐ。

ブラッドバッドと地潜りは光に包まれてその姿を消失させた。

ほとんどのブラッドバッドと地土竜はサザンクロスの餌食となった。


「やるじゃん、ルーン!」

「まだ残りはいるぞ。気を抜くな」

「残りは俺に任せておけ」


ガルドは残っていたブラッドバッドと地潜りにとどめを刺した。


「ササンクロスってすごいね」

「光の上級魔法だからな。あれだけの威力がある。まあ、相性も良かったのだけど」

「ルーンが攻撃を担当してくれると私も助かるわ」

「そんなに褒めないでください。これもタクトさんの戦術があったおかげです」


はじめての夜戦だが意外とうまく行った。

これもみんなが私の戦術を信じてくれたおかげだ。

まあ、少し改良の余地はあるが、それは次で生かそう。

東の空を見上げると空が明るくなりはじめていた。


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