表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/178

87「魔窟⑤」

魔窟の最下層は思ってた以上に最悪の環境だった。

最下層の深部から熱波が吹き付けて来れば、地面は焼けるように熱い。

エリザの氷の魔法がなければ立っていることさえ難しいだろう。

第四階層と最下層のスロープは比較的涼しいので馬車を、その場に残して私達だけで奥に進んだ。


「ここが最下層か」

「少し空気が薄い感じがしますわ」


ルーンの指摘は間違いなかった。

私達は少し歩いただけなのに肩で息をしている。

周りの環境のせいもあって、その場にいるだけで体力が少しずつ奪われて行く。

これでモンスターに出くわしたとしたら短期戦に持ち込まなければならない。

戦いに手間どえば手間どうほど不利になって行くからだ。

第四階層と同じくルーンの光の魔法で洞窟内を照らす。

すると、赤色の肌をした火竜が辺り一面に群がっていた。


「何だよ。随分ちっぽけな奴じゃないか。こんなの楽勝楽勝」


ガルドの言う通り目の前にいる火竜は3メートルほどの大きさ。

これまでのモンスターとは比較にならないぐらい小さい。

しかし、見た目で判断するのは大きな間違いだ。

この火竜は魔窟の最下層を支配しているモンスターなのだ。

実力はいかほどに。


――火竜――

種類:群れで行動する小型の竜

全長:3メートル

知性:高い

耐性:火炎耐性

弱点:光の魔法に弱い

特徴①:炎を吐く

特徴②:素早い

生息場所:魔窟・最下層

倒し方:角を叩き割る


毎度おなじみの火炎耐性持ち。

光の魔法に弱いのならばルーンのレイやホーリランスが有効。

しかし、注意しなければならないのは素早いことと炎を吐くことだ。

火炎獣王と同じで魔法の詠唱に入ったら狙われてしまうだろう。

とくに炎を吐く攻撃は気をつけなければならない。

なぜならば瞬時に炎を吐けるからだ。

耐火性の武具は装備しているから大丈夫だと思うが。

それでも直撃を食らえば死に至る。


「タクト、どんな作戦で行くんだ?」


まずは動きを封じたいところだがグラシスは効かないだろう。

火炎獣王と同じで炎で焼かれてしまう。

ならば、ドラゴンブレスで攻撃をする方法もあるが詠唱時間が必要だ。

何せ最上級魔法だから時間がかかる。

それまでガルド達に時間を稼いでもらうのがいいな。


「よし、ガルド達はエリザの詠唱が終わるまで時間を稼いでくれ。エリザはドラゴンブレスを頼む!ルーンは念のため護衛に回ってくれ」

「「わかった」」


エリザは両手を翳して魔法の詠唱に入る。

ルーンは後方で待機。

ガルド達は火竜を惹きつけるため火竜たちに向かって行った。

すると、火竜は一目散にエリザを狙って来る。

それを受けてガルド達が火竜を追撃する。


「お前らの相手は俺達だ。凍て尽せ!『氷霜剣!』」


ガルドの大剣が火竜を捉えようとした瞬間、火竜が身を翻して攻撃をかわす。


「外されただと!」


ガルドの氷霜剣は空を切り不発に終わる。

次いでマリアーヌがガルドを飛び越え火竜の前に立ちはだかる。


「ここがお前の死に場所だ『五月雨!』」


マリア―ヌは火竜を目掛けて連撃を放つ。

しかし、火竜は素早いステップで間合いをとって連撃を避ける。

早い。

しかも計算し尽くされた回避行動のように見える。

五月雨は降りしきる雨の如く連撃を加える攻撃だ。

それに加えて相手を凍らせることが出来る。

懐に入れば直撃するが間合いをとれば無理なくかわせる。

それを瞬時に見抜いての回避行動だろうか。

だとしたら火竜はこれまでに戦ったことのない知性の高いモンスターだ。

私がマリアーヌ達に気をとられている隙に別の火竜がエリザの傍まで迫っていた。

マズイ。


「やらせないわよ。感電しちゃえ!『雷撃弾!』」


プリシアがすぐさま反応して新必殺技の雷撃弾を火竜にぶつける。

しかし、火竜はひょいっと身を横にずらして雷撃弾を交わした。

雷撃弾は地面にぶつかり爆発して雷撃を放出する。

その雷撃が火竜の足を捉えて感電させた。

雷撃を受けた火竜は白い煙を登らせながら沈黙する。


「へへへん。今の見た?これが私の新必殺技よ」


プリシアは得意気に鼻の下をこすりながら自慢して来る。


「プリシア、とどめを刺せ!火竜の角を破壊しろ!」


私が指示を出すとブツブツ文句を言いながらプリシアは火竜の角と角の間に爆弾を仕掛ける。

そして爆弾を爆発させて火竜の角を粉々に打ち砕いた。

これでやっと一体仕留めることが出来た。

まだ残りは29体もいる。

こんな感じでトロトロやっていたら私たちの体力が持ちそうにない。

一気に肩をつける方法を考えなければ。

そんなことを考えている隙に3体の火竜がエリザを取り囲む。


「エリザ!」


3体の火竜は一斉に炎を吐いてエリザを焼き尽くす。

炎に焼かれながらエリザは悲鳴を上げる。

その悲鳴は地獄の底から叫ぶような悲痛な叫びだった。

いくら火炎耐性のある武具を装備しているからと言っても炎の直撃を受ければひとたまりもない。

エリザは真っ黒焦げになって地面に倒れ込んだ。


「エリザさん!」

「エリザ!」

「エリザ!しっかりしろ!」


私はエリザの所へ駆け寄ってエリザを抱き起す。

エリザはすでに虫の息で小さく呟く。

「火竜を倒して」と。

ルーンはすぐさまリザレクションの魔法を唱える。

リザレクションは回復魔法の最上級魔法で相手を生き返らせることが出来る。

以前にルーンに覚えてもらっていた魔法のひとつだ。

ルーンは祈るように両手を組んで詠唱を続ける。

その隙を見てまた火竜がルーンを狙って来た。


「させるかよ!奥義!『大車輪!』」


ガルドは剣を突き立てると体を高速回転させて火竜に切りかかる。

それに応えるように火竜が身を翻してガルドの攻撃をかわす。

しかし、負けじとガルドも大車輪を再び放つ。

それは紅蓮サソリ戦で見せた大車輪の連続攻撃だ。

いくら素早い火竜と言えど大車輪の連続攻撃には着いて行かれない。

不意に背後をとられてガルドの大車輪の餌食となった。


「これで2体目。まだまだやれるぜ!」


ガルドは大きく肩で息をしながら呼吸を整える。

こんな戦い方を続けていたら、こちらが全滅してしまう。

別の戦術を考えなければ。

私はこれまでの戦いの経験を思い返して瞬時に計算する。

素早い動きを封じることができないならば動きを遅くすればいいと。

それにはルーンのスロウの魔法が使える。

スロウは時系の魔法の中級魔法なので、それなりに詠唱に時間がかかるが。

これまでにも何度か使って来たことがあるから大丈夫だろう。

まずはエリザを生き返らせるのが先だ。


「ガルド、マリア―ヌ、プリシア。ルーンに火竜を近づけさせるな!」

「そんなの持ち承知よ。奥義!『大車輪!』」


ガルドは大車輪の連続攻撃で火竜を追い詰めていく。

それに合わせるようにマリアーヌが奥義を放つ。


「冥府に帰れ『紫電一閃!』」


マリア―ヌは火竜の角を目掛けて刺突を放つ。

紫色の雷光が空に走ると火竜の角を打ち砕いた。

ガルドとマリアーヌは連携しながら確実に一体一体、火竜を仕留めて行く。

一方でプリシアはルーンの周りに地雷弾を放ち防御線を築いていた。


「ルーンには指一本触れさせないんだから」


ガルド達の活躍に応えるようにルーンは口元を引き締める。

必ずエリザを救うと胸に誓って。

そして、魔法が放たれる。


「冥界に彷徨いし御霊、大いなる息吹を受けて、神の前に降臨せよ『リザレクション!』」


エリザの下に魔法陣が浮かび上がると聖なる光がエリザを包み込む。

そして天界から白い羽をつけた女神が舞い降りて来るとエリザに口づけを交わす。

すると、ビクンとエリザの体が跳ねて呼吸が戻った。

エリザは静かに目を開けると傍にいた私の顔を覗き込む。

「私は……」そう呟いて辺りを見回す。

まだ意識がはっきりしていないようで事態を飲み込めていないよう。

私はエリザを強く抱きしめると安心させるように頭を撫でた。


「ちょっとタクト。苦しいわ。抱くならもっと優しくして」

「フッ。エリザが無事ならばよかった。よし、作戦を続行するぞ」


ガルド達の活躍で火竜を20体まで減らすことが出来た。

しかし、ガルド達の体力の消耗も激しい。

次で確実に仕留めなければ全滅もありえるだろう。

私は覚悟を決めてルーンに指示を出した。


「ルーン、続けざまに悪いがスロウの魔法で火竜の動きを鈍くさせてくれ!」

「わかりましたわ」


ルーンは両手を胸の前で組むと祈るように詠唱をはじめる。

すると、再び火竜がルーンを狙って攻撃して来る。

バカのひとつ覚えもいいところだ。

私は続けて指示を出す。


「エリザはウインドウブレイドで火竜をけん制してくれ!」


ウインドウブレイドは風系の下級魔法だが直線状に風の刃を放つので火竜を遠ざけるのには有効だ。

詠唱時間も短くてすむし連発できるのが何よりありがたい。


「さっきのお返しをするわよ。空を駆ける疾風、風神の風となりて、空間を切り裂け『ウインドウブレイド!』」


エリザの前に魔法陣が浮かび上がると風が刃となりて火竜に襲いかかる。

火竜はすぐさま反応してウインドウブレイドをかわす。

しかし、ウインドウブレイドの効力はこれからが本番。

風の刃は波状になりながら火竜を切り裂て行く。

ダメージは大きくないが火竜を怯ませることは出来た。

そして、ルーンの詠唱が終わると、


「時の狭間よりいでし御霊、かの者を時空の歪みに引き落とせ『スロウ!』」


火竜達の足元に魔法陣が浮かび上がると白い鎖が伸びて来て絡みつく。

もがけばもがくほど強く締まり、その動きを鈍らせる。

よし、かかった。

素早さを封じられればいくら知性の高い火竜でも攻撃を防ぎようはない。

総攻撃だ。


「一気に畳みかけるぞ!火竜の角を破壊するんだ!」

「これでお終いにしてやるぜ。奥義!『千手雷光!』」


ガルドの周りに無数の剣が現れると火竜の角を目掛けて斬撃を放つ。

紫色の雷光を放ちながらエネルギーを圧縮させる。

火竜は避けるすべもなく直撃受けて地面に倒れ込んだ。

次いでマリアーヌが奥義を放つ。


「冥府に帰れ『紫電一閃!』」


マリア―ヌは切っ先を火竜の角に合わせ。

一閃の雷光が空を切るが如く、刺突を放つ。

火竜の角は粉々に砕け散り沈黙する。


「私もいるってことを忘れないでよね。粉々に砕け散れ!『爆裂粉砕!』」


プリシアは火竜の頭に爆弾を乗せて行く。

そして間合いをとってから一斉に爆発させた。

火竜は成す術もなく爆裂粉砕の餌食になり角は粉々に砕け散った。


ガルド、マリア―ヌ、プリシアの総攻撃で火竜達を全滅させることに成功した。

戦いが終わるころにはガルド達の体力も限界を迎え、そのまま倒れ込んだ。

思っていた以上に体力の消耗が激しい戦いになった。

火竜の手強さもそうだが、何よりこの環境がマイナスに働いた。

うだるような暑さの中で理性を保ちながら戦うことは思っていた以上に難しい。

ルーンのスロウが発動していなかったら間違いなく私たちは全滅していただろう。

今回は私たちの粘り勝ちということだな。

ルーンの回復魔法でガルド達の体力を回復させ、魔鉱石の採掘に取り掛かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ