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86「魔窟④」

最下層に近づく度に環境は悪くなって行く。

第四階層は第三階層ほどの熱波はなかったが地面が熱を持っている。

卵を落とせば目玉焼きが出来るくらい熱い。

私達はエリザの氷の魔法で地面を凍らせて、その上を歩いているから大丈夫なのだが。

これ以上、熱を持つようになれば命の危機さえ感じるようになるだろう。


「この暑さは堪えるわね」

「エリザの氷の魔法がなかったら今頃、干上がっていたぞ」

「汗びっしょりで気持ち悪いよ」


プリシアは気怠そうに服を肌蹴て左手で団扇。

さすがにこの暑さでは思考回路も低迷して来る。

冷たい水風呂にでも入ってさっぱりしたいところだ。

しかし、モンスターがいるかもしれない場所で、そんな呑気なことはできない。

まずはモンスターを討伐して安全を確保しないと。


すると、目の前から炎の輪が現れる。

それはひとつではなく数十も。

迷うことなく暗闇の中を歩きながらこちらへ向かって来る。

私はルーンに光の魔法で辺りを照らすように指示を出した。

ルーンは手のひらサイズの光の玉を創ると天井目がけて投げた。

小さな太陽のような光の玉が洞窟内を照らす。

その光に照らされて姿を現したのは炎の輪をまとった獅子だった。


「あいつは?」


――火炎獣王――

種類:群れで行動する炎の獅子

全長:5メートル

知性:高い

耐性:火炎耐性

弱点:雷の魔法に弱い

特徴①:炎の鬣を纏う

特徴②:鋭い牙と爪で攻撃する

生息場所:魔窟・第四階層

倒し方:頭部を切り落とす


「こいつらは火炎獣王だ。その名の通り火炎耐性を持っているから厄介だぞ」

「また、火炎耐性かよ。俺の出番がなくなるじゃないか」

「そんな泣き言を言っている暇はないぞ」


隙をついて火炎獣王が先制攻撃を仕掛ける。

一気に間合いを詰めるとガルド目がけて爪を立てた。

ガルドは身を翻しながら大剣で攻撃を受け止める。

すかさずマリアーヌが火炎獣王目がけて剣を振り払った。

しかし、火炎獣王は大きな口を開けてマリアーヌの剣を受け止める。


「くぅ……やる」


マリア―ヌは強引に剣を引き抜き間合いをとった。

さすがにこれまでのモンスターとは一味違う。

素早さももちろんだが、考えて攻撃をして来ている。

こちらの隙をついて瞬時の攻撃。

それに加え牙で巧みにマリアーヌの攻撃を受け止める。

伊達に獣王と言う名がついている訳ではないようだ。


「タクト、どうやって戦うの?」


素早い相手には、まずは動きを止めるのが必須。

エリザのダイヤモンドダストが有効的だが、詠唱に時間がかかる。

素早くて知性の高い火炎獣王ならば、間違いなく詠唱に入ったエリザを狙って来るはずだ。

それは避けなければならない。

ならば詠唱時間の短いルーンのグラシスで動きを止める方が得策。


「よし、ルーン。グラシスで火炎獣王の動きを封じてくれ!」

「わかりましたわ」


ルーンは祈るように両手を組むと詠唱に入る。

すると、火炎獣王はルーン目がけて駆けて来る。

すかさず私はガルド達にルーンの護衛に入るよう伝えた。


「させるかよ!」


ガルドはルーン目がけ駆けて行く火炎獣王の隣に迫ると大剣を振り払う。

火炎獣王は、その動きに反応し高く飛び上がり攻撃をかわす。

すかさずマリアーヌが火炎獣王の頭部目がけて刺突を放った。


苦しそうな唸り声を上げて火炎獣王はバランスを崩し倒れる。

すると、別の火炎獣王がガルド達を飛び越えてルーンに飛びかかる。


「私がいるってことを忘れないでよね。目をくらませ!『聖光弾!』」


プリシアは火炎獣王の頭目がけて聖光弾を放つ。

聖光弾は火炎獣王に当たると弾けて光の飛礫を放った。

火炎獣王は強烈な光に目をやられて、その場に倒れ込む。

周りにいた火炎獣王達も同じように攻撃を止めた。


やるじゃないか。

火炎獣王が攻撃体制に入っていたら爆裂弾で応戦するのが妥当だが。

聖光弾に切り替えるなんてプリシアも成長したものだ。

聖光弾はダメージを与えられないが、強い光で相手の目を眩ませられる。

魔法詠唱の時間を稼ぐならもってこいの爆弾だ。

その間にルーンは詠唱を終えて魔法を放つ。


「大地よりい出し伊吹よ、漆黒の鎖となりて、かの者を絞殺せ『グラシス!』」


火炎獣王の足元に魔法陣が浮かび上がると地面から無数のツタが伸びて来る。

そして火炎獣王の体に巻きつくとキツク締め上げた。

火炎獣王はもがきながらツタを外そうとするがツタはキツク締め上げる。


「よし、動きを止めた。エリザ、インテグニションで火炎獣王に攻撃だ」

「わかったわ……て。タクト、あれを見て!」


エリザが指を指した方を見やると火炎獣王が炎の鬣を使ってツタを焼き払っていた。


「鬣の炎でツタを燃やすだと!なんて頭のキレる奴だ」


これではグラシスの魔法を使った意味がない。

所詮、グラシスは下級魔法だから仕方ないと言えばそれまでになるが。

しかし、これで火炎獣王の動きを止める方法がなくなってしまった。

プリシアの聖光弾で目を眩ませても一瞬のことだ。

それに聖光弾の攻撃から外れた火炎獣王達が追撃して来る。

それらをかわしながらインテグニションを放つには分が悪い。

どうする……。


「よし、ルーン。ループで火炎獣王の動きを止めてくれ」


ループは下級魔法のひとつだが相手の行動を繰り返させる効果がある。

攻撃の手前でループをかければ攻撃体制に入ってから攻撃の手前までの行動を繰り返させることが出来る。

一体のモンスターにしか有効でないのがたまに傷だが、使い方次第では有効に使える魔法だ。

そして次いでエリザに指示を出す。


「エリザ、インテグニションの準備をしてくれ」

「わかったわ」


エリザは両手を前に翳して魔法の詠唱に入る。

そこを狙って火炎獣王がエリザに飛びかかる。

すると、詠唱を終えたルーンがループを発動した。


「時の迷宮に迷いし子羊、輪廻の道をいざ行かん『ループ!』」


魔法陣がルーンの足元に現れると光の時計が火炎獣王の頭上に現れる。

時計の針がぐるりと一回りすると攻撃体制に入っていた火炎獣王が元の位置に戻る。

そしてループするように同じ動きを繰り返しはじめた。


「おい、何だよ。バグってるのか?」

「ループの効果だ。それより火炎獣王の頭を切り落とせ」

「お前はそこで見ていろ。私がやる。苦しまなずに逝かせてやる『霧雨!』」


マリア―ヌは剣を構えると火炎獣王の懐に入る。

そして無数の連撃を一点に集中させて火炎獣王に浴びせた。

ループをしていた火炎獣王の頭がゴロリと転げ落ちる。

すると、周りにいた他の火炎獣王の顔つきがキリリと変わった。


これまでは自分達が優勢だったので、はじめて身の危険を感じたのだろう。

こちらを警戒するように辺りをウロウロしはじめる。

今までにはない反応だ。

知性が高いだけにいろいろと考えてしまうからだろう。

次はどんな戦術で行くのか。

私達がどんな戦術で向かって来るのか。

これで知性の低いモンスターが相手ならば間違いなく突進して来るはずだ。

だが、それはしない。

それが私達の勝機を産む。

私はプリシアに次の指示を出す。


「プリシア、爆霧烈弾で火炎獣王の視界を奪え!」

「任せてよ。目の前を覆い隠せ!『爆霧烈弾!』」


プリシアが地面に爆弾を叩きつけると白い煙が辺りを覆い尽くす。

私達の姿を隠し、火炎獣王達は視界を奪った。

火炎獣王達は攻撃体制をほどき辺りを警戒しはじめる。

狙い通りだ。

知性の高いモンスターほど視覚情報に頼りがちになる。

それは人間である私達がいい例なのだが。

定かではないが、脳と目が近い位置にあるからだと言う説もあるらしい。

まあ、いずれにせよエリザの魔法詠唱の時間を稼ぐことが出来た。


「よし、エリザ、一気に畳み込むぞ!」

「暗黒の冥界に走りし閃光、天を裂く轟音と共に、その紫電の雷で大地を貫け『インテグニション!』」


火炎獣王の足元に魔法陣が浮かび上がると上空に鈍色の雲が立ち込める。

紫色の稲妻を走らせながら戸惑っている火炎獣王目がけて無数の雷が降り落ちた。

辺りは一瞬、まぶしく光り火炎獣王から白い煙を立ち上らせる。

直撃だ。

火炎獣王達は地面に倒れ込んでうごめている。

さすがは第四階層のモンスターと言うことだけのことはある。

インテグニションをまともに受けても気絶していないのは大したものだ。

だが、これで私達の勝機が見えた。


「ガルド、マリア―ヌ!とどめを刺せ!」

「言われるまでもない。苦しまなずに逝かせてやる『霧雨!』」


マリア―ヌが火炎獣王の背後をとるとためらわずに連撃を放つ。

無数の連撃が火炎獣王の首に直撃すると頭がゴロリと転げ落ちる。

それを見てマリアーヌは他の火炎獣王にも同じ攻撃を加えて行く。

手際の良さ、決断の速さ、剣技とどれをとっても見惚れてしまう。

負けじとガルドが奥義を繰り出す。


「お前だけにいいところを持ってかれてたまるかよ。奥義!『大車輪!』」


ガルドは火炎獣王の頭上に飛び上がると大剣を真っすぐに突き立てる。

体を高速に回転させながら切りかかり火炎獣王の首を刎ねて行った。

大車輪のライン上にいた火炎獣王の首を一気に刎ねる。

この豪快さがガルドの奥義の持ち味だ。

マリアーヌとは違った魅力がある。

自分では自覚していないようだが、ガルドはみるみるうちに腕を上げているのだ。


ガルドとマリアーヌが競って火炎獣王にとどめを刺してくれたおかげでエリザ達の魔法は回復出来た。

プリシアも覚えた必殺技を使いたいとせがんでいたが、それは後でのお楽しみということで納得させた。

まあ、次の戦いで使用するのかはわからないけど。

だが、各段にモンスターは強くなっている。

次が最下層だがどんなモンスターが待ち構えているのか。

油断も過信も禁物だ。

確実に勝てる戦術をとらなければならない。

長期戦になればこちらが不利になる。

私たちは休憩がてら軽い食事をはじめる。

ここへ来てのドワーフが渡した冷凍器は役だった。

中の食べ物はすっかり冷えていて火照った体に染み渡る。

じんわり滲んでいた汗もすっかり引いて行った。

私達は十分な休息をとってから最下層へ向かった。


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