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84「魔窟②」

第二階層へは緩やかなスロープを下って行った。

第二階層も第一階層ぐらい広く岩がゴツゴツしている。

しかし、蒸し暑さはここへ来て弱まっていた。

地下を流れている溶岩から遠ざかったためなのか。

ほっと一息をつけるような温度だった。


「第一階層と比べて涼しいわね」

「溶岩から遠ざかったからだろう」

「まあ、これなら楽々行けるな」

「だが油断はするなよ。ここは第二階層なんだ」


マリアーヌは辺りを見回しながら警戒する。

長らく騎士団長を続けて来た経験からなのか。

メンバーの中で一番、警戒心が強い。

しかし、進めど進めど期待を裏切るかのようにモンスターの姿は現れない。

姿ばかりでなく気配すら感じられなかった。

もしかしてここの階層のモンスターは天敵に捕食されてしまったのだろうか。

それならば天敵がいるはずだが、気配すら感じない。

辺りは静寂に包まれて虚無な空気を創り出す。

私達の声が洞窟で反響して聞こえるくらい静かだ。


「モンスター、ぜんぜんいないね」

「俺達にビビって逃げたんじゃないか?」

「おかしい」

「何がおかしいんだよ」


マリアーヌは急に足を止めると顎に手をあてて考え込む。


「ここは魔窟と呼ばれるモンスターの巣だぞ。なのにモンスターがいないなんておかしいと思わないか?」

「だから言ったろ。俺達にビビって逃げたのさ」


ガルドは近くの大岩に背中を預ける。

と、大岩が微かに動いたように見えた。

目の錯覚か。

私は目をこすって大岩を凝視する。

しかし、大岩は動いていない。

ガルドはまったく気づいていないようでマリアーヌと話をしている。

気のせいか……。

と、思ったのも束の間。

周りにあった大岩が動き出して中から手と足と頭を出した。


「敵だ!」


目の前に現れたのは大岩に擬態していたブロックタートルだった。


――ブロックタートル――

種類:群れで行動する巨大亀

全長:5メートル

知性:低い

耐性:衝撃耐性

弱点:なし

特徴①:身の危険を感じると甲羅の中に隠れる

特徴②:周りの景色に擬態する

生息場所:魔窟・第二階層

倒し方:頭部を切り落とす


数は30あまり。

重そうな足取りでこちらに近づいて来る。

ガルド達はすかさず大剣を引き抜いて構えた。


「おい、タクト。あの巨大亀は何だ?」

「ブロックタートルだ。衝撃耐性を持っている。うかつに攻撃しても弾かれるだろう」

「なら、俺の奥義で真っ二つにしてやるぜ!」


そう言うとガルドは高く飛び上がり大剣を天に掲げる。


「奥義!『大車輪!』」


体を高速回転させながらブロックタートルに斬撃を浴びせる。

スイカをかち割るかのような鮮やかな太刀筋だ。

しかし、ブロックタートルの固い甲羅に阻まれて弾き飛ばされた。


「なんて固さだ。俺の奥義が効かないなんて」


ブロックタートルの甲羅は傷一つついていない。

そればかりかガルドの大剣は刃が大きく毀れていた。


斬撃でこのありさまなんて普通に攻撃してもダメージを与えれられない。

ここはプリシアの酸倍弾で甲羅を溶かすのがいいだろう。

酸倍弾をあるだけ放てばダメージを与えられるはず。

その後で一気にケリをつける。


「よし、プリシア。酸倍弾でブロックタートルの甲羅を溶かしてくれ!」

「任せてよ。溶けちゃえ!『酸倍弾!』」


プリシアはあるだけの爆弾をブロックタートル目がけて投げつける。

ブロックタートルは手足を引っ込めて甲羅に隠れる。

酸倍弾は甲羅に直撃した。

ジュワジュワと音を立てながら白い煙が立ち上る。

しかし、ブロックタートルの甲羅は表面が爛れただけで堅牢さは失っていなかった。


「アシットレインの三倍の強度がある酸倍弾をまともに食らってもあれだけか!」

「おいおい、冗談じゃないぜ。あんな硬い奴をどうやって倒すんだよ」


ガルドの泣き言も最もだ。

酸倍弾も効かないとなると攻撃のしようがない。

素早くもないからわざわざ動きを止める必要もない。

そのあたりは問題ないが。

あの硬さは問題だ。

ダイヤモンドダストで凍らせてから炎の攻撃を加え温度差による力を加わえたとしても、あの甲羅は破れないだろう。

チャクラでガルド達の身体能力を上げて奥義をぶち込む作戦をとっても結果は見えている。

しかし、全く作戦がない訳でもない。

硬いのは甲羅だけで手足や頭はそれほど固くもないはず。

現にブロックタートルは攻撃を受ける時に手足を甲羅の中に隠している。

手足や頭はそれほど堅牢ではないからなのだろう。

ブロックタートルを気絶させることができれば勝機はある。


「エリザ。インテグニションでブロックタートルを気絶させてくれ」

「わかったわ」


エリザは両手を翳して魔法の詠唱に入る。

すかさず、プリシアに指示を出す。


「プリシア、鉄鎖裂弾をブロックタートルの頭にぶち込め!」

「えっ?新必殺技じゃないの?」

「いいから構わずにブチこめ!」

「わかったよ。さっくりやっちゃって!『鉄鎖裂弾!』」


プリシアの鉄鎖裂弾がブロックタートルにあたると弾けて無数の鉄の刃が突き刺さる。

しかし、ダメージを与えられずブロックタートルは平然としていた。


「全然、効いてないみたいだよ」


それでいい。

狙いはダメージを与えることじゃない。

この後に訪れる機会を最大限にするための下準備だ。

私はプリシアにブロックタートル全てに鉄鎖裂弾を放つよう指示を出した。

プリシアはあるだけの爆弾をブロックタートルに投げつける。

ブロックタートルの攻撃をうまくかわしながら。

攻撃していても半信半疑なのかプリシアは終始、浮かない顔をしていた。


「タクト、こっちはいつでもいいわよ」

「よし、エリザ。ブロックタートルにインテグニションを放て!」

「暗黒の冥界に走りし閃光、天を裂く轟音と共に、その紫電の雷で大地を貫け『インテグニション!』」


ブロックタートル達の足元に魔法陣が浮かび上がると上空に鈍色の雲が立ち込める。

紫色の稲妻を走らせながら轟音を轟かせて。

危険を感知したブロックタートルは慌てて甲羅の中に身を隠す。

今さら隠れても無駄だけど。

お前達は既に私の術中にハマっているのだから。

次の瞬間、無数の雷がブロックタートルの体に刺さっていた鉄の刃に落ちる。

伝染するように雷は隣のブロックタートルへと数珠つなぎに走り出す。

辺りは一瞬、まぶしく光りブロックタートルの体から白い煙を立ち上らせた。


作戦成功。

雷は電気を通しやすい物に落ちやすい。

それは魔法で放った雷もしかり。

その性質を使ってわざわざプリシアに鉄鎖裂弾を放ってもらったのだ。

ブロックタートルは密集していてくれたこともあって、雷はうまい具合に伝染して行った。

おかげでブロックタートルは全て気絶して頭と手足を投げ出している。

今がチャンスだ。


「ルーン。チャクラでガルド達の身体能力を上げてくれ」

「神樹より生まれし果実、緋色の甘き雫となりて、かの者に力を与えん『チャクラ!』」


ガルドとマリアーヌの足元に黄金色の魔法陣が浮かび上がる。

黄金色の光がガルドとマリアーヌの体を包み込むと。

同時に、キラキラとした粒子がガルドとマリアーヌの神経を刺激した。


「来た来た。これだよこれ」

「行くぞ」


漲る力に興奮しているガルドをよそに、マリアーヌは攻撃体制に入る。


「よし、気絶しているブロックタートルの首を断ち落とすんだ!」

「おうよ。今度こそ。奥義!『千手雷光!』」


阿修羅のように無数の剣がガルドの周りに現れる。

紫色の雷光を放ちながらエネルギーを圧縮させる。

そして、ブロックタートルの首を目掛けて無数の斬撃を浴びせた。

ブロックタートルの首から血飛沫が上がり、ゴロリと頭が地面に落ちる。


「見たか。俺の必殺剣」

「残りはまだまだいるんだ。気を抜くな」


転げ落ちたブロックタートルの頭に足を乗せて自慢しているガルドを嗜めるマリアーヌ。

剣を引き抜いて気絶しているブロックタートルの首を刎ねる。


「苦しまなずに逝かせてやる『霧雨!』」


マリアーヌの放った無数の連撃がブロックタートルの首を捉える。

血飛沫を上げながらブロックタートルの首が転げ落ちる。

間髪入れずに隣のブロックタートルの首を刎ねに向かう。

さすがは元第一騎士団長だ。

動きに無駄がない。

ガルドも負けじと他の気絶しているブロックタートルの首を刎ねる。

ガルドとマリアーヌの活躍で全てのブロックタートルにとどめをさすことが出来た。


「あーあ、今回は私の出番はあまりなかったね」

「プリシアの鉄鎖裂弾があったから今回の作戦が成功したんだ。もっと自信を持っていいぞ」

「それにしても考えましたわね、タクトさん。雷が鉄に落ちやすい性質をうまく利用するなんて」

「全く攻撃の効かない相手だったからな。こちらもうまい作戦を考えないと倒すのに苦労するだろう」


ルーンは関心しながら私の作戦を褒めて来る。

私は少し恐縮しながらも誇らしげに振る舞った。


「それにしてもよ。第二階層でこれだぜ。下に行けばもっと強敵が待ち構えているんじゃないか」

「そう見た方がいい。気を抜かずに進むんだ」


今回、ブロックタートルに勝てたのもブロックタートルの動きが鈍かったせいもある。

ほとんど攻撃を受けずに討伐することができた。

これで素早く動かれでもしたら、こうはいかなかっただろう。

第三階層はどんなモンスターが待ち構えているのか。

私達は細心の注意を払いながら第三階層へ向かった。


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