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81「アルタイル王都」

結局、地獄ルートを抜けるまでに巨岩石と3回も戦うことになった。

どれも同じ戦術で戦えたので倒すのは容易だったが。

おかげでいい小遣い稼ぎになった。


「あれがアルタイル王国か。要塞みたいだな」

「マクミニエル国王がドワーフ達に造らせましたからね。いろんな仕掛けがされてますぜ」


門の前では警備兵達が厳重な検閲をしていた。

私達は行列に並び順番を待つ。


「ここでも検閲かよ。どうなっているんだこの国は」

「仕方ありませんぜ。何せ過激派があちらこちらでテロを起こしてますからね」

「過激派?」

「この国は保守派と過激派に分かれているんです。保守派はマクミニエル国王を支持していて、過激派はマクミニエル国王の打倒を掲げています。マクミニエル国王はご高齢で跡継ぎもいませんから、そのことが国の問題になっているんです」


運転手は難しい顔をして答える。


「随分、詳しいな」

「アルタイル王国では有名な話ですからね」


アルタイル王国がそんな状態ならカイザルのことは二の次になるな。

私達の手で探さなければならなくなるかもしれない。


「おい、次だ」

「へい」


警備兵達は私達の馬車を取り囲み、荷物の検査をはじめる。


「アルタイル王国へ入国する目的は?」

「観光だ」

「観光にしては重装備じゃないか?」

「アルタイル王国近辺にもモンスターが多いので」


私は思いつくまま嘘を言う。

ここで本来の目的を説明しても理解が得られないと考えたからだ。

カイザルの行方を追っているなんて言おうものなら、ヴェズベルト王国の関係者だと思われるのがオチだ。

ただの観光だと思わせておいた方が無難だ。


警備兵達は荷物ばかりでなく、簡単な身体検査もしはじめる。

やたらと体を触って来る警備兵にエリザはご立腹だったようだが。

私達は抵抗することなく身体検査を受けた。


「よし、入国を認める」

「まいど」


私達は馬車に乗りアルタイル王都に入国した。

大通りまで連れて行ってもらうと賃金を払い運転手と別れた。


「ここがアルタイル王都か。すごい人だな」

「いろんなお店があるわ。後で行ってみましょう」

「ここにプリム様が来たんだな」

「それじゃあ情報収集をしよう。ここは広いからそれぞれで情報を集めるんだ」

「なら、一時間後にここへ集合だな」


私達は大通りの中央にあった公園で別れると情報収集に向かった。

私は繁華街、ガルドは武具屋街、エリザは商店街、ルーンは宿屋周辺、プリシアはアルタイル城周辺、マリアーヌは飲み屋街と。

街行く人に小一時間尋ねてみたが、得られた情報はみんなハズレ。

プリムに似たような少女が野菜を買っていたとか、服屋で買い物をしていたとか、そんな情報ばかり。

逃亡している身のカイザル達がのんびり買い物なんてするはずもない。

私達はすっかり疲弊してしまい近くにあった大衆食堂で休むことにした。


「ここへ来て全く情報が掴めなくなってしまったな」

「アルタイル王都は広い。もっと情報収集に徹しなければならないのだろう」

「なら、明日も情報収集をしましょう」

「それより飯だ。腹が減っては戦はできないってやつだ。おーい、店員。こっちだ」


ガルドは手を振りながら大衆食堂の店員を呼びつける。

すると、厨房から水を持った店員がそそくさとやって来た。


「いらっしゃいませ。何になさりますか?」

「そうだな。ここのおススメは何だ?」

「おススメは日替わり定食です。今日は、子羊の包み焼きと芋と野菜のスープです」

「なら、それを6人分頼みます」


私が店員に注文をしているそばでプリシアが唸りながらメニューを見ていた。


「プリシア。他に何か頼むのか?」

「うーん。うーん。」

「早くしてくれ。俺は我慢できないんだ」


ガルドがプリシアからメニューを取り上げると店員がピクンと反応する。


「どうしましたか?」

「いえ、つい三日前。似たような光景を見た物ですから」

「もしかして水色の髪をした女の子とおじさんですか?」

「そうです。親子って言っていましたけれどぜんぜん似ていなかったので不思議だなと思っていたんです」

「それでその二人はどこへ行ったの?」

「ここで食事をした後のことは知りません」


ここでプリムに関する手がかりを得られた。

行方は相変わらずわからないが、アルタイル王都に来たことは間違いない。

三日前と言うことは、そんなにも遠くには行けないはずだ。

私達は食事を済ませると、再び情報収集に励んだ。


しかし、無の飛礫だった。

プリムのプの字も得られず、日没を迎える。

情報収集の続きは明日にして、今夜は休むことにした。


「なぜ、こうもプリムに関する情報が得られないんだ。この街に来たはずなのに」

「カイザルが警戒をして足取りを隠したのかもしれない」

「なら、どこへ行ったのかわからないと言うことか」

「残念だが、そう言うことになる」


マリアーヌは意外にも冷静に状況を判断する。

それは長年、情報収集活動を経験して来たからだろうか。

情報収集はさくさくと情報が得られるものではない。

パズルと組み立てるかのように地道な活動がモノを言うものだ。

まあ、ガルドには一番向かない作業なのだが。


「それでタクト。これからどうするつもり?」

「ひとまず情報収取は置いておいて武具類を強化しよう。先の大蛇戦でガルド達の剣も傷んでしまったからな」

「なら、私は別行動をとらせてもらおう」

「何か用があるのか?」

「大した用ではない。気にするな」


マリアーヌの様子が少し気になったが、翌朝、私達は別行動をすることになった。


「じゃあ、俺達は武具屋に行っているからな。用が終わったら来いよ」

「ああ」


私達はマリアーヌに見送られながら武具屋へ足を運んだ。





アルタイル王都の武具屋の武具は全てドワーフ達の手によって造られた。

剣、槍、戦斧、弓はもちろんのこと、鎖鎌や鞭まである。

ガルドは物珍しそうに筒状になった武具を手に取った。


「こいつは何だ?」

「そいつは銃と言う武器です。火薬を爆発させて鉛の弾を飛ばす仕組み。モンスターには期待できませんが、戦争では重宝される武器です」

「これが銃か」

「タクトは知っていたの?」

「昔に本で見たことがあるだけだ。実際に見るのははじめてだけどな」


私は舐め回すように銃を眺める。

これがあれば私も戦いに参加できそうだが、モンスターに効果がないんじゃ意味がないな。


「それでどんな御用入りで」

「これを直して欲しい」


ガルドはカウンターに大剣を置く。

武具屋の店主は大剣を舐め回すように見て傷み具合を確かめる。


「こいつは随分と使い込んでますね」

「冒険をはじめた時からの付き合いだからな。で、直るのか?」

「これは家では直せませんね。傷み具合が酷すぎる」

「何だよ。お前、武具屋の店主だろ」

「そんなこと言われても」


ガルドの剣幕に怯える武具屋の店主。

後ずさりしながら青い顔をしていた。

ゆくゆく店主に尋ねるとガルドの剣はドワーフが直せるらしいと言うことだ。

ドワーフの村はここから馬車で1日行ったところにあるらしい。

私達は武具屋を後にするとギルドへ報酬をもらいに向かう。

ドワーフに剣を直してもらうにも資金がいるからだ。

巨岩石を4体倒したことで、12万ゴールド手に入れることが出来た。





その頃、マリアーヌはアルタイル城へ来ていた。

門兵にヴェズベルト王国の紋章を見せてマクミニエル国王に取り次いでもらう。

しかし、マクミニエル国王は謁見を断って、代わりにアトスがやって来た。


「ヴェズベルト王国の騎士がここへ何の用だ?」

「マクミニエル国王に渡したい文書がある」

「見せろ」


マリアーヌはしぶしぶアトスに文書を渡す。

アトスは文章の内容を確かめると言って来た。


「アンナ女王直々の言葉と受け止めていいのだな」

「カイザル拘束の暁にはアンナ女王からの軍事協力が得られる。過激派に狙われているマクミニエル国王にとって悪い話ではないだろう」

「ふん。我が国はヴェズベルトに頼らずとも成しえる。でも、まあいい。これは私が受け取っておく」

「いい返事を期待しているぞ」


マリアーヌはアルタイル城を後にした。


「ババアの犬め。余計なことをしやがって」


アトスはマリアーヌから受け取った文書をビリビリに破り捨てる。

こんな所で余計な横やりが入ったらますますマクミニエル暗殺はやり難くなる。

ただでさえ、過激派の行動が抑制されているのにも関わらず。

しかし、サラーニャのババアが固執しているカイザルと言う男は役に立ちそうだ。

身柄を拘束して情報を聞き出そう。





「マリアーヌ、用事は済んだのか?」

「ああ。それでお前達はどうだ?」

「ガルドの大剣はドワーフが直せるそうだ。明日、ドワーフの村に向かうことにした」

「そうか。なら、私の剣も鍛え直してもらおう」


マリアーヌは剣を引き抜き太陽に翳す。

ガルドと同じでマリアーヌの剣も刃が毀れている。

これまでの激戦が堅牢な剣を蝕んで来たのだろう。

ドワーフに鍛え直してもらうならば、もっと堅牢なものにしてもらうと思った。


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