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79「巨岩石戦」

コドフの街からアルタイル王国まで直線で150キロメートルだが、険しい山脈に阻まれていて迂回するルートしかない。

西回りのルートは丘陵地帯を抜ける地獄ルートと呼ばれている。

その名の通り草木も小動物もまったく生息していない地獄のような道だ。

東回りのルートは火山帯を越える煉獄ルートと呼ばれている。

煮えたぎる溶岩が辺りから噴出していて大変危険な道だ。

どちらを選んでも生きた心地がしないが、アルタイル王国に行くにはどちらからを選ばなければならない。

私は迷った挙句、身の危険が少なそうな地獄ルートを選んだ。


「地獄ルートだなんて、このまま本当に地獄に行ってしまうようね」

「そうですわね。この光景を見れば誰もがそう思いますわ」


地獄ルートはゴツゴツとした岩が辺りに転がっていて緑は一切目に入って来ない。

鳥の鳴き声も小動物の気配もなく、馬車が駆ける音だけが鳴り響いていた。

まるでサンドリア王国の砂漠地帯を思わせるような光景だが、こちらは色味が少ない。

灰色に染まった岩肌がむき出しになっていて地面から湯気が噴出している。

熱々の溶岩が地下を流れているからやけに蒸し暑い。

何時間もこの上に立っていたら茹で上がってしまうだろう。

私はエリザに氷の魔法で氷を造らせて暑さを凌いでいた。


「それにしても暑いわね」

「仕方ないさ。溶岩の上を歩いているんだからな」


エリザが服を肌蹴て露わな格好になる。


「お、おい。エリザ、みんながいるんだぞ」

「仕方ないじゃない。熱いんだから」

「そうだぞ、タクト。熱いんだから仕方ない」


ガルドはいやらしそうな目をしながらエリザを舐め回すように見やる。

その視線に気がついてもエリザは気にも止めていなかった。

それだけこの暑さに耐えられないからなのだろう。

ルーンもプリシアもマリアーヌも服を肌蹴ていた。


馬車は小一時間も走ると馬を休めるため岩場に停車した。

エリザは氷の魔法で氷を造り馬達を冷やす。

私達も氷の塊で涼をとっていた。


「どこまで来たんだ?」

「まだ、地獄ルートの入口ですぜ」

「まだ入り口かよ。これじゃあアルタイル王国に着く前に干上がってしまうぞ」

「だらしないですね。こんな暑さ、ミッドガルでは当たり前ですぜ」


馬車の運転手は飄々とした顔で水筒の水を口に含む。

ミッドガルのあちらこちらに出掛けているから慣れてしまったのだと言う。

行商人の鏡のような人物だ。


「ちょっと小便」


ガルドはおもむろに立ち上がり用を足しに岩場に向かう。

そして気持ちよさそうな吐息をこぼしながら小便を出し終わる……と。

急に足元が揺れ出して、


「うわぁぁぁ!」

「な、何だ?」


振り返るとガルドが巨大な岩石のモンスターの頭にしがみついている。


「あれは巨岩石だ!」


――巨岩石――

種類:単体で行動する巨大な岩石モンスター

全長:10メートル

知性:低い

耐性:衝撃耐性

弱点:動きが鈍い

特徴①:堅牢な岩石で覆われている

特徴②:再生能力がある

生息場所:岩場・地獄ルート

倒し方:頭を粉砕する


見た目はゴーレムの灰色バージョン。

しかし、衝撃耐性を持ち合わている。

間接部分に赤々と焼ける溶岩が見え隠れしていて不気味だ。

溶岩を食べてエネルギーを得ているようだ。


「タクト、どうするの?ガルドがあんな所にいるわよ」

「ガルドはほっておけ。ルーン、アシットレインで巨岩石の防御力を落としてくれ」

「わかりましたわ。大いなる大地に降り注ぐ雨よ、蒼き酸の飛礫となりて、かの者を洗い流せ『アシットレイン!』」


ルーンを中心に魔法陣が浮かび上がると空から青い酸の雨が降り注ぐ。

ジュワジュワと音を立てながら巨岩石の肌を爛れさせていく。


「おい、俺がいるんだぞ!」


ガルドは慌てて手を離すと巨岩石の影に身を隠す。

アシットレインを少し浴びたようで服が溶けていた。


「次はプリシア。爆裂粉砕で巨岩石の足を砕け!」

「ゴーレム戦で経験済みだからね」


プリシアは地を這うように素早く駆けて行くと巨岩石の足にしがみつく。

そして爆弾をセットすると急いで離れた。


「粉々に砕けちゃて!『爆裂粉砕!』」


爆弾が破裂すると巨岩石の膝にヒビが入る。

しかし、体の中央に流れる溶岩が染み出して来てヒビを塞いだ。


「まともに食らったはずなのに」

「再生能力だ。厄介だな」


巨岩石は拳を振り上げてパンチを食らわせて来る。

しかし、動きが鈍いので簡単に避けられた。

それでも地面は大きく抉れてパワーの強さを示す。


「あんなのまともに食らったらぺちゃんこだ」

「殺られる前に殺るだけだ」


マリアーヌは巨岩石に駆け寄りながら剣先を向ける。

そして、


「奥義!『紫電一閃!』」


紫色の雷光を剣に纏わせながら突き刺す。

マリアーヌの剣は巨岩石の足を貫き、右足を粉砕する。

巨岩石はバランスを崩して地面に倒れ込む。

その風圧で私達は吹き飛ばされてしまった。


大蛇戦ではじめて使った紫電一閃だが、もう使いこなしている。

さすがはヴェズベルト王国の元第一騎士団長だけのことはある。


「さすがはマリアーヌ!」

「私の手にかかればモンスターなどこんなものだ」


マリアーヌは剣を振り払い鞘に納める。

そしてその場を立ち去ろうとした時。

砕け散った巨岩石の足のパーツが競り集まり右足を復元させた。


「また再生かよ。あんなのアリか!」

「やっぱり普通の攻撃だけでは倒せない。戦術が必要だ。エリザ、デラグレイブで巨岩石の足元を崩せ!」

「ゴーレム戦と同じパターンね」


エリザは魔法の詠唱をはじめる。


「ルーン。チャクラでガルド達の身体能力を上げてくれ」

「わかりましたわ」


ルーンも魔法の詠唱に入る。


「ガルド、マリアーヌ、プリシア。魔法の詠唱が終わるまで巨岩石を惹きつけてくれ!」

「毎度おなじみのパターンだな。任せておけ」

「ただし攻撃は食らうなよ」


ガルド達は巨岩石の周りを取り囲み注意を惹きつける。

けっして攻撃はせず、けん制するだけで巨岩石の攻撃を誘う。

巨岩石は鈍いけど凄まじいパンチをガルド達に向ける。

しかし、一回も命中することなく地面を抉っただけだった。


「みんな離れて!古の大地に眠りしり命、漆黒の蛇となりて、大地を震わせ『デラグレイブ!』」


魔法陣が巨岩石の足元に浮かび上がると大地が大きく揺れ出す。

巨岩石はバランスを崩して膝まづいた。

同時に、ルーンが魔法を放つ。


「神樹より生まれし果実、緋色の甘き雫となりて、かの者に力を与えん『チャクラ!』」


ガルドとマリアーヌとプリシアの足元に黄金色の魔法陣が浮かび上がる。

黄金色の光がガルドとマリアーヌとプリシアの体を包み込みはじめる。

同時に、キラキラとした粒子がガルドとマリアーヌとプリシアの神経を刺激した。


「うぉぉぉぉ!」

「よし、マリアーヌは紫電一閃で!プリシアは爆裂粉砕で!ガルドは千手雷光で頭部を破壊しろ!」


マリアーヌは地を這うように巨岩石に駆け寄ると空に飛び上がる。

そして剣先を巨岩石の頭部に狙いを定めて、


「奥義!『紫電一閃!』」


紫色の雷光を剣に纏わせながら突き刺す。

同時に、プリシアが頭部目がけて爆弾を投げつける。


「粉々に砕けちゃて!『爆裂粉砕!』」


そして最後はガルドが、


「食らいやがれ!奥義!『千手雷光!』」


無数の斬撃を巨岩石の頭部を狙って放った。

三人の攻撃を同時に食らい巨岩石の頭は粉々に吹き飛ぶ。

それは再生できないほど細かく砕けて灰色の砂煙を立ち上らせた。

巨岩石の体は地面に伏してただの岩石へと変化して行った。


三人同時攻撃なんてうまく行くのか不安だったが、意外とうまく行った。

それはこれまでの戦いの経験があったからだろう。

マリアーヌが仲間になってくれたことが大きいが。

これならばもっと複雑な戦いにも対応できるはずだ。

私はひとり戦力が上がったことを喜んだ。


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