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75「打倒、大蛇」

一晩経って胞子の森に向かうと大蛇はとぐろを巻いて眠っていた。

大きな山のような姿にちょっとたじろぐ。

さんざんポイズントードを食べてお腹が一杯になったのだろう。

攻撃を仕掛けるなら今がチャンスだ。


「よし、作戦をはじめる。エリザ、インテグニションを頼む」

「わかったわ」


エリザは大蛇の前で魔法の詠唱をはじめる。

大蛇は近づいて来た気配を感じ取って目を見開いた。


「おい、気づかれたぞ」

「エリザを守るんだ」


ガルドとマリアーヌはエリザの前に立ちはだかる。

大蛇はおもむろに体を動かしながら大きく口を開ける。

二股に分かれた紫色の舌を震わせながらシャーと威嚇して来る。

ガルドとマリアーヌは剣を振り回しながらけん制した。


「エリザ、まだか?」

「いいわよ。暗黒の冥界に走りし閃光、天を裂く轟音と共に、その紫電の雷で大地を貫け『インテグニション!』」


大蛇の足元に紫色の魔法陣が浮かび上がると空が真っ黒な雲で覆われる。

紫色の雷光が空を駆けると天を裂くような轟音が鳴り響く。

同時に、無数の雷が大蛇の体を捉えた。

大蛇は目を見開きながら白い煙を立ち上らせる。

そして巨体を大地に投げ出して倒れた。


「よし、決まった!次はプリシアだ」

「任せてよ。溶けちゃえ!『酸倍弾!』」


プリシアはバッグから酸倍弾を取り出すと大蛇目がけて投げつける。

酸倍弾は大蛇に触れると強力な酸を放ちながら飛び散る。

酸は大蛇の鱗をジュウジュウと溶かしながら爛れさせた。


「効いている。効いている。次はルーン」

「わかりましたわ」


ルーンは両手を組みながらガルド達に向かって魔法を詠唱する。

その間もプリシアは絶え間なく酸倍弾を大蛇に投げつけていた。

大蛇は麻痺効果が効いているようで微動だにしない。

もう、しばらくは時間稼ぎが出来そうだ。


「神樹より生まれし果実、緋色の甘き雫となりて、かの者に力を与えん『チャクラ!』」


ガルドとマリアーヌの足元に黄金色の魔法陣が浮かび上がる。

黄金色の光がガルドとマリアーヌの体を包み込みはじめる。

同時に、キラキラとした粒子がガルドとマリアーヌの神経を刺激した。


「こ、こいつは!」

「漲る。力が漲って来るぞ」

「よし、ガルド、マリアーヌ頼む!」

「こいつならやれるぜ」


ガルドは体の底から漲って来る力を噛み締める。

そして大剣を構えて高く飛び上がった。


「食らいやがれ!奥義!『千手雷光!』」


阿修羅のように無数の剣がガルドの周りに現れる。

紫色の雷光を放ちながらエネルギーを圧縮させる。

そして、大蛇の首を目掛けて無数の斬撃を浴びせた。

ガルドの放った斬撃は大蛇の首を捉え血しぶきを舞い上がらせる。

しかし、大蛇の頭を落とすまでには行かなかった。


「畜生。奥義でもこのダメージかよ」

「まだまだ甘い。私の剣技でとどめをさしてやる。奥義!『紫電一閃!』」


マリアーヌが剣を構えると紫色の雷光が剣を包み込む。

ビンビンと伝わって来る気迫に誰もが固唾を飲み込んだ。

マリアーヌは狙いを定めて突進する。

その姿はまるで閃光の如し。

一瞬で間合いを詰めて大蛇の心臓を目掛けて剣を突き刺した。

しかし、分厚に肉に阻まれて途中で止まってしまう。


「私の奥義を持ってしてまでも、この程度なのか」


すると、大蛇が意識を取り戻す。

広がる傷口から血しぶきを放ちながら。

その度に大蛇は悲鳴を上げる。

しかし、大きな口を広げながら攻撃体制に入った。


「来るぞ!」


大蛇は近くにいたマリアーヌに向けて毒牙を向ける。

マリアーヌはすかさず飛び上がり攻撃を交わす。

しかし、同時に大蛇が尻尾を振り回しマリアーヌを追撃した。

マリアーヌは大きく吹き飛ばされてお化けきのこにぶつかる。


「マリアーヌ、大丈夫か!」

「ふー。こいつのおかげで助かったぜ」


お化けきのこがクッションになったようでマリアーヌはかすり傷で済んだようだ。

しかし、大蛇が目覚めてしまうとは。

私はすかさずエリザに指示を出した。

エリザは大蛇に両手を翳して魔法の詠唱をはじめる。

すると、大蛇はエリザに向かって威嚇をしはじめた。


「まずい、エリザが狙われる。ガルド、マリアーヌ、大蛇を惹きつけてくれ!」

「おう!お前の相手は俺だ!」

「こっちだ!こっちに来い!」


ガルドとマリアーヌは剣を振り回しながらけん制をするが大蛇は見向きもせず。

尻尾を振り回しながらエリザに攻撃を放った。


「やらせるかよ!」


ガルドは身を呈してエリザを庇い大蛇の攻撃をまともに食らう。


「くっ……うわぁぁぁぁ!」


ガルドは腕を抱えながら悶え回る。

見るとガルドの太い腕が変な方向に曲がっていた。

私はすかさずルーンにキュアレストをガルドにかけるように伝える。


「聖なる光に包まれし蕾、睡蓮の華となりて、かの者達を潤せ『キュアレスト!』」


大地に光の魔法陣が浮かび上がるとキラメキが天に昇って行く。

そしてまばゆい聖なる光を放ちながらガルドの腕を包んで行った。

回復魔法をかけるならば早い方がいい。

時間が経ってしまうと回復魔法の回復効果も薄れてしまうからだ。

ガルドは腕が回復すると呼吸を落ち着かせて行く。

体には脂汗が出ており激痛を体現しているかのようだった。

その間もマリアーヌとプリシアが大蛇を惹きつけていた。


「タクト。まだ?もう持たないよ」

「エリザは?」


エリザの方を向きやると魔法を放つ体制に入っていた。


「お待たせ。暗黒の冥界に走りし閃光、天を裂く轟音と共に、その紫電の雷で大地を貫け『インテグニション!』」


大蛇は身構えるようにとぐろを巻いて体を硬直させる。

そこへ紫色の雷が無数に大蛇の体を捉えた。

大蛇の体から白い煙が立ち上る。

しかし、今度は倒れない。

瞬間的に体を硬直させたのが効いたのだろう。

大蛇は体を緩ませると口を大きく開いて威嚇して来た。


「インテグニションが弾かれたの?」

「魔法は効いているはずだ。このまま作戦を続行するぞ」


プリシアは酸倍弾を大蛇に向かって投げつける。

しかし、大蛇は尻尾を振り回して酸倍弾を破壊する。

それでも酸倍弾の酸は大蛇の体を溶かした。


「効いてるみたいだけど、狙いから外れちゃったよ」

「プリシア。大蛇の頭目がけて酸倍弾を放ってくれ」

「OK」


プリシアはバッグから酸倍弾を取り出して大蛇の頭目がけて投げつける。

大蛇は頭を動かして爆弾を交わすが、その何発かが顔を捉えた。

酸は大蛇の皮膚を溶かし爛れさせる。

さすがの大蛇でも顔まで硬い鱗で覆われている訳ではない。

プリシアの攻撃は功を奏した。


その間にルーンはガルドとマリアーヌにチャクラの魔法をかける。

力を漲らせたガルドとマリアーヌは攻撃体制に入る。


「ガルド、マリアーヌ。同時に仕掛けるんだ。いくら強い大蛇だと言っても同時に二人は相手にできないだろう」

「さっきの借りは返してもらうぜ。奥義!『千手雷光!』」

「これで終わりにしてやる。奥義!『紫電一閃!』」


ガルドとマリアーヌは同時に飛び出す。

ガルドは天高く舞い上がり、マリアーヌは地を這うように間合いを一気に詰める。

そして同時に奥義を放った。


「「うぉぉぉぉぉ!」」


ガルドの無数の斬撃は大蛇の首を捉え頭をごそりと叩き落とす。

それは斧で大木を倒すがごとく。

大量の血飛沫を辺りにまき散らした。

同時にマリアーヌの突きは大蛇の心臓捉えて貫く。

それは針孔に糸を通すかの如く繊細で確実で。

大蛇の心臓は鼓動を停止させた。


「やった!大蛇を倒した!」

「さすがですわ」

「一時はどうなるかとヒヤッとしたけどね」

「まあ、俺の奥義を持ってすればこんなものだけどな」

「紫電一閃。悪くはない」


この戦いで勝利を納められたのもみんなが力を合わせたおかげだ。

私達は確実に力をつけて来ている。

これならば魔獣にも太刀打ちできるだろう。

しかし、まだまだ魔獣と戦うのは早すぎる。

もっと、もっと戦力を高めて行かなければ。


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