74「気持ちが大事」
「また、ミグの街まで戻って来たね。これからどうするの?」
大蛇と戦うようにも戦力差があり過ぎる。
幻獣麒麟ほどではないが今のままでは手の打ちようがない。
パワーもさることながら、火炎耐性と衝撃耐性を備えた体はやっかいだ。
炎系魔法最強のエクスプロードも半減されてしまうし、ガルド達の必殺技も弾かれてしまう。
あの硬い鱗さえ何とかできればまだ勝機は見いだせるのだが。
ひとり難しい顔をしている私を覗き込むようにプリシアが尋ねて来た。
「タクト、タクトってば」
「ん、何だ?」
「何だじゃないよ。さっきからひとりで難しい顔をしちゃってさ」
「考えごとをしていただけだ」
「それでどう作戦を立てるんだ?」
まずは魔法と剣技の強化が外せない。
魔法は炎系以外の魔法で付属効果があるもの。
剣技は新たな奥義の習得だ。
「まずはエリザに雷系魔法の上級魔法インテグニションを覚えてもらう。インテグニションは麻痺効果が期待できる。一時的に大蛇の動きを止めることができるだろう」
「最近は炎系と氷系の魔法に頼り切りだったからね。新鮮でいいわ」
インテグニションは無数の雷撃を一点に集中させる攻撃だ。
いくら堅牢な大蛇でもただでは済まないだろう。
「次はルーンに補助魔法チャクラを覚えてもらう。チャクラは魔法をかけた対象者の身体能力を一時的に上げる効果がある。ガルドとマリアーヌを支援してくれ」
「わかりましたわ」
ガルドとマリアーヌの攻撃力をアップできれば大蛇に大ダメージを与えることができるだろう。
上がるのは攻撃力だけでなく瞬発力も俊敏性も大幅に引き上げられる。
大蛇の攻撃を掻い潜りながら簡単に懐に詰め寄れるだろう。
「続いてプリシアに酸倍弾を覚えてもらう。酸倍弾はその名の通り爆発すると酸が飛び散る爆弾だ。アシットレインよりも強力で部分的に酸攻撃ができる」
「私の活躍も期待しててよ」
プリシアの酸倍弾ならば大蛇の堅牢な鱗も溶かすことができるだろう。
しかし、そのためには何発も酸倍弾を食らわせることが必要になる。
酸倍弾を多めに準備しておこう。
「それで俺達はどんな技を覚えればいいんだ?」
「ガルドには千手雷光。マリア―ヌには紫電一閃を覚えてもらう。大蛇は頭を断つのと同時に心臓を貫かないと倒せない。だから、確実に攻撃できる手段が必要だ」
「奥義の習得か。おもしろい」
千手雷光は乱舞系の奥義で無数の斬撃を放てる必殺技。
大蛇の頭を断つには攻撃を一か所に集中させるのが必須だ。
千手雷光は理にかなった奥義。
それに雷と光の属性を持っているから大ダメージを期待できる。
紫電一閃は突撃系の奥義でその名の通り強烈な突きを放てる必殺技。
大蛇の心臓を一突きさすには一点を狙うのが効果的だ。
閃光のごとく放てる紫電一閃ならば大蛇の心臓を一撃で貫けるだろう。
それに雷の属性と言うおまけつきだ。
「作戦を整理する」
まずはエリザのインテグニションを放ち大蛇の動きを止める。
次にプリシアの酸倍弾で大蛇の固い装甲を溶かす。
同時にルーンのチャクラでガルドとマリアーヌの身体脳力を上げる。
そしてガルドとマリアーヌの奥義で同時に大蛇を仕留める。
「以上だ。何か質問のある者はいるか?」
ガルド達はお互いの顔を見やりながら確かめる。
すると、ルーンが小さく手を上げて言った。
「もし、その作戦でも大蛇を倒せなかったらどうするのですか?」
「同じ攻撃を繰り返す。いくら堅牢な装甲を持っている大蛇と言えど同じところに攻撃を集中させられたら大ダメージを食らうだろう」
「理屈はわかりますが、それでも倒せなかった場合はどうするのですか?」
ルーンの鋭い指摘に私は言葉を詰まらせる。
その時はまた撤退しかないだろう。
しかし、それでは大蛇を野放しにしてしまうことになる。
そうなれば行商人達が襲われることになるだろう。
それだけは避けなければならない。
行商が行われなくなってしまったら街は経済的に疲弊して行く。
直接、交易をしている街もさることながら国自体もただでは済まない。
国をあげて大蛇討伐部隊を編成し、大蛇狩りに向かうだろう。
戦いは長期戦におよび多くの犠牲者がでることになる。
私達には最終的にそう言う選択肢もあるのだが、なるべくなら避けたいのが本音だ。
「それでも倒す。大蛇は私達の手で倒すんだ」
「そうこなくちゃ。俺はやるぜ」
「私も無論だ」
「ちょっと体育会系のノリがあるけど」
「みなさんがそう言うなら」
「絶対に勝とうね」
私達の決意は固まった。
戦いは戦術も大事だが、その前になによりも気持ちが大切だ。
気持ちができないまま戦っても敗戦を強いられる。
この戦いに絶対勝つぞと言う意気込みを持っていれば、自然と結果もついて来るものだ。
私達はそれぞれの強化を済ませ、明日の決戦を待った。
もちろん今夜は前祝いと言うことで宴会をはじめる。
お酒は控え目で料理は豪華に。
私達は思い思いの気持ちを抱きながら宴会を楽しんだ。




