56「地下通路の攻防」
「タクトさん、どうしますの?」
「地道だが一体一体倒して行くしかない。エリザ、ルーン、下級魔法で攻撃するんだ!」
「「わかったわ」」
エリザとルーンは魔法の詠唱をはじめる。
「ガルド、プリシア。詠唱が終わるまで敵を引きつけてくれ」
「任せておけ」
ガルドは大剣を構えて亡霊に切りかかる。
しかし、大剣は空を切り外れる。
その隙に亡霊が剣を振りかざしガルドに襲いかかった。
「やらせるかよ!」
すかさずガルドは大剣の腹で攻撃を受け止める。
亡霊は実態を持たないが攻撃する時だけ実体化する。
しかし、その隙をついて攻撃してもすぐに幽体化してしまう。
まったく隙がないのだ。
「タクト、爆弾を使っていい?」
「ダメだ。爆弾を使ったら地下が崩れてしまう」
「なら、やりようがないよ」
プリシアはどぎまぎしながら私を見やる。
すると、プリムが小剣を取り出してプリシアに渡した。
「これを使って」
「小剣?」
「ないよりマシでしょ。行くわよ」
プリムとプリシアは小剣を構えて亡霊に切りかかる。
しかし、小剣は空を切るばかり攻撃が当たらない。
「エリザ、ルーン。まだか?」
「いつでもOKよ」
「頼む」
「爆炎より生まれし炎、灼熱の炎となりて、大地に降り注げ『ファイアーボール!』」
紅蓮に染まった炎の塊が騎士の亡霊を包み込む。
騎士の亡霊はもがきながら紅蓮の炎に焼かれて消え去った。
すかさず、ルーンが魔法を放つ。
「天空より溢れしし光、数多の閃光となりて、大地を貫け『レイ!』」
床に光の魔法陣が浮かび上がり天井から光の光線が降り注ぐ。
騎士の亡霊達は聖なる光に包まれて次々と浄化されて行った。
しかし、通路の奥から次々と騎士の亡霊達がやって来る。
「タクト、これじゃあキリがないぞ」
退却しようにも後を塞がれていて逃げ道がない。
騎士の亡霊達は次々と現れて攻撃をして来る。
しかし、空間の狭さは騎士の亡霊達も同じようで、一斉に攻撃はして来ない。
それが唯一の巧妙だ。
それを生かさない手はない。
「エリザ、ルーン。魔法で攻撃しながら進軍するぞ、エリザは前の敵を、ルーンは後ろの敵を攻撃してくれ」
「わかりましたわ」
「ガルドは前の敵を、プリシアとプリムは後ろの敵の注意を惹いてくれ」
「了解」
私の作戦は功を奏したようで狙い通り進軍をすることが出来た。
しかし、連続で魔法を放っているエリザ達の消耗は激しい。
それは注意を惹きつけているガルド達も同じであった。
「いつになったら終わるんだよ。これじゃあくたばっちまうぞ」
「ガルドさんの言う通りですわ。私も魔力の消費が激しくて」
「タクト、何とかしてよ」
通路の先はまだ見えない。
どこか出口まで辿り着かないと、この攻撃から逃れることは無理。
強行突破をするか。
けれど、こちらのダメージも大きくなる。
通路がどこまで続くのかにもよって判断は変わる。
「タクト、どうするの?」
仕方がない。
「エリザ、ウインドブレイドで突破口を開いてくれ。突破口を開いたら一気に駆け抜けるぞ」
「それしか手はないってことね」
エリザは両手を前に突き出して魔法の詠唱をはじめる。
「空を駆ける疾風、風神の風となりて、空間を切り裂け『ウインドウブレイド!』」
エリザの両手の前に魔法陣が浮かび上がると風の刃が駆け抜ける。
そのタイミングを見計らって私達は一斉に前へ向かって駆け出した。
騎士の亡霊達は行く手を塞ぐように並び立つ。
それでも私達は剣を振り翳しながら騎士の亡霊達の間をすり抜ける。
「痛い!」
「足を止めるな、プリシア!」
騎士の亡霊の剣がプリシアの肩を掠める。
プリシアばかりでない。
私達の体には無数の傷跡がついていた。
しかし、我慢するのもそこまで。
通路の先に行くと少し広い広間に出た。
「行き止まりよ」
「畜生。ここまでかよ」
騎士の亡霊達は通路を埋め尽くすように並んでいる。
しかし、広間には入って来ようとしない。
どう言うことだ。
結界でも張られてあるのか。
それにしては私達はすんなり入って来れた。
それならば他の力が働いていると言うことなのか。
「とりあえず助かった」
ガルドはどっかりと腰を下ろし大の字になって床に寝そべる。
その間にルーンは魔力を振り絞って怪我の治癒にあたっていた。
「これで大丈夫ですね。ちょっと疲れましたわ」
ルーンはぺたんと床に腰を下ろして一息ついた。
「それにしても亡霊が近づいて来ないってのはどう言うことだ?」
「そんなの別にいいじゃないか。助かったんだし」
「ガルドは呑気ね。私達、閉じ込められているのと同じ状態なのよ」
騎士の亡霊達は通路のところで寄り集まっている。
広間の中には一歩も入ろうとしないが。
「ねえ、これを見て。何か模様の様なモノが描かれているわ」
ひとり壁を調べていたプリムの所へ向かうと壁に魔法陣の様なモノが描かれていた。
「これは結界の魔法陣だ」
「だから騎士の亡霊達は近づいて来ないのね」
それにしても何でこんな所に結界を張ってあるのか。
結界と言えば他者の侵入を防ぐために張ったりするものだ。
しかし、広間には宝物などのものは見当たらない。
ここに結界を張る理由が見当たらない。
私は壁に触れながら何か手がかりがないか確かめた。
「ん?この溝は?」
「どうしたの、タクト?」
「ここに不自然な溝があるんだ」
見ると十字に刻まれた溝が壁に彫り込まれている。
この溝にハマる何かを埋め込むタイプのものらしい。
ここにハマるものがカギとなって隠し扉が開く仕組みになっているようだ。
と、プリムが懐から裏酒場のマスターからもらった白銀の十字架を取り出した。
「もしかしてこれじゃない?」
プリムはおもむろに白銀の十字架を溝にはめるとピッタリと収まった。
すると、白銀の十字架が光りだし閃光が魔法陣をなぞる。
そしてゴゴゴーと鈍い音を立てながら壁が開いた。
「隠し扉だったのか。中に何があるんだ」
ガルドが何気に隠し扉の先へ足を踏み入れると一瞬で吹き飛ばされた。
「痛ててて。何だよいきなり」
隠し扉の先から妙な気配を感じる。
それは今まで感じたことのないような荘厳な気配。
空気が凛と張り詰めていて物音すら聞こえない。
私は妙な緊張に包まれて生唾を飲み込んだ。
この先にいるものは今まで出会ったことのないものに違いないと。




