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54「クロス城」

空はどんよりと曇り今にでも雨が降り出しそうな気配。

クロス城の周りは昼間と言うのにジメジメしていて薄暗い。

数百とも呼べる墓石に囲まれていて怪しげな雰囲気を醸し出していた。


「あれがクロス城か。廃墟と言う割には建物は立派じゃないか」

「クロス城には呪いがかけられていて建物は崩れないのよ」

「呪いだって?そんな馬鹿なことがあるものか」

「本当だってば。昔、壮大な魔法使いが城を守るために呪いをかけたと言われているわ」


呪いと聞けば誰もが恐怖を感じる。

誰かを呪い殺してやろと恨みつらみに苛まれて黒魔術に走る。

そんな背景を勝手に想像してしまうからだろう。

しかし、この城にかけられた呪いのように何かを守るための呪いもあるらしい。

それだけ当時の城主が城を愛していたのだろう。


「それにしてもモンスターの姿が見えないわね」

「本当に辺りは静まり返っていますわ」

「モンスターなんて嘘っぱちじゃない?」


プリシアの言葉にプリムは口を尖らせてむくれる。


「本当にモンスターがいるんだから」


私達は辺りを警戒しながらクロス城に近づいて行く。

しかし、モンスターのモの字も見掛けられない。


「何だよ脅かしやがって。これなら大手を振って歩いてこれたじゃないか」


と、ガルドの足元の土がボコりと盛り上がる。


「え?何?」


エリザが目を凝らして足元を見るとあちらこちらの土が盛り上がる。

そして腐敗臭を漂わせたアンデッドが次々と起き上がって来た。

その数は百はくだらない。

ここはアンデッドの巣だったのだ。

私達はすっかり周りを取り囲まれてしまう。


「おい、囲まれたぞ」

「うげぇ~気持ち悪い。肉が爛れて目玉が飛び出しているわ」

「だから言ったでしょ。モンスターはいるって」

「そんなこと言っている場合じゃありませんわ。タクトさん、どうしましょう?」


私はすかさず戦術帳を開き確かめる。


――アンデッド――

種類:群れで行動するゾンビ

全長:1.7メートル

知性:低い

耐性:なし

弱点:炎と光と回復魔法に弱い

特徴①:体が腐っていてダメージを受けない

特徴②:墓場の周りならば何度でも再生できる

生息場所:クロス城の周辺

倒し方:炎と光と回復の魔法で一撃で倒す


炎と光と回復魔法に弱いのなら助かる。

エリザとルーンを全面に押し出せる。

しかし、何度でも再生すると言うことはどう言うことなのか。


「おい、奴ら近づいて来るぞ。どうするんだ、タクト?」


迷っている暇はない。

今は考えるよりも行動だ。


「ガルド、エリザとルーンの詠唱が終わるまで敵を引きつけてくれ」

「任せておけ。うらぁぁぁぁ!」


ガルドは大剣を構えるとアンデッドに向かって駆け出す。

そして大きく大剣を振り払いアンデッドをなぎ倒して行く。


「何だ、歯ごたえのない。これなら魔法を使うまでもない」


アンデッドはガルドの一撃に崩れ次々と倒れて行く。

しかし、一瞬光に包まれたと思ったら崩れた体が再生し再び立ち上がる。


「おい、どうなってるんだよ。今、倒したばかりじゃないか」

「ガルド。そいつらは何度でも再生できる」

「再生って。そんなの不死身ってことじゃないか。どう戦えって言うんだ」


ガルドの言葉も無視できない。

いくら攻撃しても再生されたのならば手の打ちようがない。

戦術帳には一撃で倒すと書いてあるが、どう一撃で倒すかがカギのようだ。

ガルドのような物理攻撃では一撃で倒すことは難しい。

細胞レベルまで消滅させられる魔法攻撃でないとダメなのかもしれない。


「ガルド、注意を惹くだけでいい。魔法の詠唱が終わるまで時間を稼いでくれ」

「何だよ、俺の出番はそれだけかよ。物足りない」


ガルドはブツクサ文句を言いながらアンデット達の注意を惹いて行く。

それでも惹きつけられるのは十数体。

残りのアンデッドはこちらに向かって進んで来た。


「アンデッドが来るわ。タクト、何とかして」

「プリシア、アンデッドをエリザ達に近づけるな」

「はいさ。当たっちゃって!『地雷弾!』」


プリシアはエリザ達を囲むように地雷弾を放り投げる。

アンデッドは構わず進んで来ると地雷弾で吹き飛ばされて行った。

しかし、再び再生をはじめる。

粉々に砕け散った肉片が意識を持っているかのように一所に集まって行く。

どんな力が働いているのかわからないが、みるみるうちに元に戻って行った。


「これじゃあキリがないよ」

「もう少しだ。エリザ、ルーン早くしてくれ」


エリザは手を前に突き出すと魔法を放つ。


「漆黒の闇よりい出し赤色の、永遠に燃え尽きぬ暁となりて、その深紅の瞳で見続けよう『メテオスォーム!』」


エリザが詠唱を終えると、空が赤く染まり、裂け目から燃えさかる隕石が降り注ぐ。

急に襲って来た夕立のようにアンデッドを撒き込みながら激しく地面を叩きつけた。

すると、地面に赤茶けた大地がむき出しになる。

アンデッドは細胞から燃え尽きて消滅してしまった。


「やるじゃないか、エリザ」

「まだ、残党が残っているわ。ルーン、後は任せたわよ」


ルーンはコクリと頷くと回復魔法を放った。


「聖なる光に包まれし蕾、睡蓮の華となりて、かの者達を潤せ『キュアレスト!』」


大地に光の魔法陣が浮かび上がるとキラメキが天に昇って行く。

そしてまばゆい聖なる光を放ちながらアンデッドを包んで行った。

それはまさに女神の昇天のよう。

アンデッドは浄化され一体残らず消滅して行った。


「すごいじゃないルーン!」

「エリザさんほどではありませんわ」

「アンデッドに回復魔法が効果的なのは知っていたが、ここまでとは」

「本当にアンデッドを倒しちゃった……」


プリムはひとり尻もちをつきながら驚きの声を上げる。

私達が負けるとでも思っていたのか。

腰が砕けていたようでしばらくの間、そのままの格好だった。


「また、エリザ達に持って行かれちまったぜ」

「いいじゃない。勝ったんだから」

「勝つことよりも俺が活躍することが大事なんだよ」


いつも美味しいところをエリザ達に持って行かれているガルドはストレスを溜めているよう。

毎日、酒に溺れるのもそれが背景にあるからだろうか。

しかし、ガルドの潜在能力は上がっている。

この先、きっとガルドの活躍がモノを言うであろうことは何となく感じていた。


「おい、プリム。いつまで腰を抜かしているんだ。早く地下へ案内しろ!」

「わ、わかっているわよ。ちょっと驚いていただけよ」


プリムは埃を払いながら立ち上がるとクロス城へ向かって歩き出す。

その足取りは重く、恐る恐る近づいて行く。

何かに怯えているかのように見える。


「プリム、城に何かあるのか?」

「べ、別に何でもないわよ」


あからさまに動揺しながらプリムは目を泳がせる。

何か隠しているのは間違いない。

しかし、今は問かけない方が無難だ。


クロス城の扉は漆黒で染められて今できたような新鮮さがある。

何十年も経っているにもかかわらず老朽化が見えない。

荘厳な雰囲気を漂わせている城からは騎士達の声が聞こえて来るかのよう。


「ここから中に入れるわ」

「おい、堂々と正面から入るのかよ。普通なら秘密の通路とかを通らないか?」

「誰もいないんだから隠れたって仕方ないでしょ」


プリムの言うことの方が正しい。

無人の城に入るのだから何も遠慮することはない。

堂々と大手を振って正面から中に入ればいいのだ。


「じゃあ、開けるぞ」


ガルドの怪力で荘厳な扉は鈍い音を立てながら開いた。


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