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5「クロースの死」

翌朝、私達はギルドで次の依頼を選んでいた。


「次はどんな敵と戦ったらいいんだ?」

「お前達は冒険者としてのレベルが低い。まずは簡単なモンスターを倒して経験を積むのが先決だ。そうだな……次はゴブリンあたりが妥当だろう」

「ゴブリンですか」


私の提案にルーンは顔を曇らせる。


「ルーンは何か不安でもあるのか?」

「いいえ、不安と言うか……。私の村はゴブリンに襲われたことがあるんです。非力なゴブリンでしたが、とても狡猾で武器を使って来るんです。しかも仲間をすぐに呼ぶからとても厄介で」


昔のことを思い出しているルーンは恐怖に怯えた表情で訴える。

ゴブリンに襲われたと言う情報は増えて来ている。

ここ最近、勢力を増してきているモンスターのひとつだ。


「ルーンにとっては敵のような存在ね。次はゴブリンにしましょう」

「ゴブリンに決まりだ。腕が鳴る~」

「ガルド、張り切るのもいいけど、ゴブリンにやられないようにね」

「わかっている。俺がゴブリンなんかにやられるもんか」


腕を回しながらひとり張り切るガルドの横で不安げな目で見つめるエリザに強がって見せた。



ゴブリンがよく目撃されている荒廃した村にやって来た。

この村もゴブリンに襲われて滅ぼされた村のひとつ。

今は誰も住んでおらず、強襲を受けた時の惨状がそのままだった。


「随分、ひどくやられたものだな」

「これがゴブリンに襲われるってことなのよ」


家のガラクタを足蹴にするガルド達の横でルーンがひとり塞ぎ込んでいた。


「うっ……」

「ルーン、大丈夫?」


心配気な様子で慰めるエリザはルーンの肩をそっと抱き寄せた。


「ごめんなさい。昔のことを思い出しちゃって」

「気にしないでルーン。ゴブリンに襲われたのだから仕方ないもの」


すると、村の奥からガタッと言う物音が聞こえたかと思うと、無数のゴブリンが這い出して来た。


「みんなゴブリンだ!」


ゴブリンはこん棒や弓矢を持ってせり集まって来る。

まるで、獲物を待ち構えていたかのような用意周到さだ。


―ゴブリンー

種類:群れで行動する非力な小鬼

全長:1メートル

知性:低い

耐性:なし

弱点:非力

特徴①すぐに仲間を呼ぶ

特徴②武器や道具を使う

生息場所:森

倒し方:逃げ道をなくし、一体ずつ確実に仕留める


「すっかり囲まれてしまったぞ。どうするんだタクト?」

「まずはエリザ……」

「あの程度のゴブリン達に作戦などいるものか。俺が始末してやる!」


私の指示を遮って、クロースはゴブリン達に駆け寄ると得意の弓を放った。

一匹、二匹とゴブリン達がクロースの矢に仕留められて行く。

それでもゴブリン達は怯むことなく、クロースに反撃をはじめた。


「おい、クロース!ひとりでは無理だ。俺も加勢する」


ガルドが飛び出そうとしたので私はガルドの腕を掴み引き止めた。


「作戦の指示は私だ出す。それまでは動くな!」

「だけど、このままじゃクロースがやられっちまうよ」

「仕方がない。エリザ、ファイアーウォールでゴブリンの逃げ道を塞ぐんだ!」

「わかったわ。爆炎より生まれし炎、業火の壁となりて、世界を覆い隠せ『ファイアーウォール!』」


エリザが詠唱をすると、ゴブリン達の周りに炎の壁が聳え立つ。

ゴブリン達は炎に怯えながら中央に寄せ集まると武器を掲げて私達に反撃して来た。


「ゴブリン達が来るぞ!」

「ルーン!プロテクションで壁を作るんだ!」

「わかりましたわ。天より降り注ぎし光、星光の束となりて、かの者を守らん『プロテクション!』」


ガルド達の前に光の壁がせり立つとゴブリン達の矢を防いだ。

ゴブリンは光の壁に阻まれ、攻撃がまったく届かない。

一方で、クロースはゴブリン達に捕まっていた。


「クロース!」

「このままじゃクロースがゴブリン達に食い殺されっちまう。タクト、何とかしてくれ!」


泣きすがるように言って来るガルドを振り切って、私は冷徹な判断を下した。


「作戦はこのまま継続する。クロースのことはそれからだ」

「何を言っているんだタクト。クロースを見殺しにしようってのか!?」


ガルドは興奮しながら私の胸ぐらに掴みかかって来るが、私はそれを無視して次の指示を出した。


「エリザ!アイスニードルで氷の雨を降らせるんだ!」

「……」

「エリザ、死にたいのか!このまま何もしなければクロースも助からないんだぞ」


私の指示にエリザは躊躇していたが、仕方なく詠唱をはじめた。


「零氷が紡ぎし雫、冷涼の氷となりて、大地に降り注げ、『アイスニードル!』」


空に漆黒の雲が立ち込めると無数の氷の矢が降り注いでゴブリン達を捉える。

氷の槍で射抜かれたゴブリンは鮮血を流しながら次々に倒れて行った。

みるみるうちにゴブリンの数が減って行くとゴブリン達は混乱しながら逃げ出す。


「ガルド!ゴブリン達を一匹も逃すな!」

「わかった。コノヤロー!」


ガルドは大剣を天に掲げゴブリン目がけて振り下ろす。

大剣の切れ味はよくサラサラとゴブリン達が地に伏せて行った。

あらかたゴブリン達を倒すと、クロースに駆け寄る。


「クロース!」


クロースはゴブリン達に食われ血まみれで倒れていた。

腹の肉が食いちぎられ内臓がむき出しになっている。

腕も足も肩も胸も、ゴブリンの食いちぎった跡が残っていた。


「ガ、ガルド……。お、俺は……」

「クロース、しっかりしろ!今、助けてやるからな。ルーン、回復魔法を頼む!」

「言われるまでもありません、クロース必ず助けるからね。天より零れし雫、清らかな息吹となりて、かの者に力を与えん、『キュア!』」


ルーンが必死に回復魔法を使うが、クロースの容体は良くならない。

それは死にかけている人間には効かない下級魔法だからだ。


「そんなはずは……『キュア!』、『キュア!』、『キュア!』」

「ルーン」


必死に回復魔法を唱えるルーンの腕を掴み、私は無言で首を横に振った。


「クロース!」


ルーンは膝から崩れ落ちると、その場に塞ぎ込んだ。

空は鈍色に染まり無情の雨が降り注ぐ。

その中でずぶ濡れになりながら見送るガルド達の姿があった。


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