4「契約成立」
ギルドに戻ると酔っ払い達が度肝を抜いていた。
「ほっ、本当にウォーウルフを討伐したってのか!」
「何かの間違いじゃないのか!」
「あの弱小冒険者達に出来る訳ないよ!」
世界が壊れたと言わんばかりに驚いている酔っ払い達は口々にそう言った。
「これで賭けは私の勝ちだな」
私が勝ち誇ったように迫ると、酔っ払いの戦士はしぶしぶ金をかき集め渡して来た。
「これはまぐれだ。次はないから覚悟しておくんだな」
「ああ、そう言うことにしといてやる」
酔っ払いの戦士たちは負け惜しみをして来る横で私はしたり顔を浮かべた。
「タクト、酔っ払い達と賭けをしていたの?」
「私達を助けたのも賭けのためでしょうか?」
突っかかって来るエリザとルーンは呆れ顔で迫って来る。
すると、クロースが水を得た魚のように加勢して来た。
「こいつはそう言う奴なんだ。最初から俺達を賭けのタネにしていたんだ」
「タクト、本当なのか?」
ガルド達の攻めにすっかり逃げ道をなくしてしまった私は当然のことのように言った。
「賭けはついでだ。私はお前達を勝利に導いてやろうと思っていただけだ」
「俺達に何でそこまで思い入れるんだよ。何か裏があるんじゃないのか?」
あくまで信用していないクロースは疑うような目つきで睨む。
何を言ってもクロースには響かないと、そう思ったが。
「私は策士だ。策士は戦術で冒険者達を勝利に導くのが仕事だ。だから、私は策士として大成するため冒険に出た。そしてお前達と出会った」
私は本当のことをガルド達に伝えた。
しかし、クロースだけは追及の手を緩めない。
「お前は策士として大成するために、俺達を利用しているに過ぎない。俺達はお前の駒じゃない!」
「そこまで言うのなら勝手にしろ。私はお前達が勝とうが負けようが興味はない」
クロースの激しい言葉に私はシビレを切らせて捨て台詞を吐いた。
その様子を傍で見ていたガルド達は言葉を失っている。
エルフは気性が荒い種族と言われているが、クロースは輪をかけたように手をつけられない。
めっぽうプライドが高く、そして頑固だ。
何より他人を信用しないところがずば抜けている。
「私はこれで失礼する」
「タクト!私達はあなたがいないと勝てないわ。だから、戻って来て」
「エリザ、何を言っているんだ!あいつは俺達を道具のようにしか思っていないんだぞ!そんな奴に命を預けることなんてできるか」
エリザの言葉にひとり興奮しているクロースは激しく言って来た。
しかし、エリザは怯むことなくクロースに言い返した。
「クロースはタクトが指揮をとることに反対しているだけでしょ。誰の言うことも聞かない性格だから余計に反発しているのよ」
「くっ、俺はお前達のことを思って言っているんだぞ。そんな俺に対して、その言葉はどういうことだエリザ!」
「もうよせ、クロース。エリザに怒ったって仕方ないだろ。このチームのリーダは俺だ。タクトを仲間にするのかを決めるのは俺だ」
エリザに食らいつこうとするクロースの腕を掴むとガルドが強引に引き離した。
そして、一呼吸すると審議を開始する。
「この前の戦いでタクトの腕は証明された。これからの俺達の戦いにはタクトが必要不可欠だ。俺はタクトを仲間にしたいと思っている。みんなはどうだ?」
「私はガルドに賛成よ」
「私もです」
「俺は反対だ!」
ガルドの提案に賛成するエリザとルーンをよそに、クロースひとりが声を荒げて反対した。
「多数決でタクトを仲間に加えることに決める。いいなクロース。これはみんなの総意だ」
「ちぃ。勝手にしろ!」
クロースは最後まで不機嫌だった。
「タクト、改めて俺達の仲間になってくれないか。みんな歓迎する」
「わかった」
ガルドが差し出した手を握ると、私達の契約は締結した。




