39「策士VS策士」
ヴェールズの街の付近の砂漠地帯。
アラジンの陣取る場所はこちらよりも少し小高い丘。
周りに身を隠せるモノはなく、砂漠の中には地獄アリが待ち構えている。
条件はどちらも同じ。
「こちらは4人。下手に進軍すれば戦力が分散される。まずはアラジンの出方を見よう」
「ふっ、思っていたよりも馬鹿じゃないってことだな。よし、弓使いは前へ!」
アラジンが指示を出すと弓使い達が横一列になって隊列を組む。
少しづつ前に進みながら距離を詰めていく。
矢が届く位置を探っているようだ。
「間接攻撃でけん制する気だな。ルーン、魔法の準備を」
「わかりましたわ」
適度な距離でアラジンが立ち止まると弓使い達に合図をする。
すると、無数の矢が弧を描くように飛んで来た。
「ルーン、プロテクションで壁を造るんだ」
「天より降り注ぎし光、星光の束となりて、かの者を守らん『プロテクション!』」
私達の前に光の壁がせり立ち飛んで来た矢を弾き飛ばす。
それを気にせず弓使い達は絶え間なく矢を放つ。
「無駄だ無駄だ。ルーンのプロテクションを破れる訳ない」
ガルドは砂漠の上に胡坐をかいて腕を組む。
この余裕はルーンの魔法を信頼しているからなのだろうが、少しは緊張感を持ってほしい。
まだ、戦いははじまったばかりなのだ。
「よし、剣士達は散会して進軍せよ!けっして固まるな。奴らの思う壺だ」
アラジンの合図で剣士達が散り散りになりながら進軍して来る。
魔法対策って訳か。
魔法は全体攻撃のものが多い。
一所にまとまっていては魔法の格好の餌食になる。
考えたな。
「エリザ、ガルド、プリシア。こちらも散会するぞ」
「よっしゃ。待ってました」
ガルドは意気揚々と立ち上がると大剣を手に取る。
「まずはエリザだ。右側から近づいてくる剣士達をサンドストームで吹き飛ばせ!」
「空を駆ける旋風、風神の目となりて、大地を飲み込め『サンドストーム!』」
エリザが詠唱を終えると地面に魔法陣が浮かび上がり砂嵐が巻き起こる。
そして進軍して来た剣士達を飲み込んで空高く吹き飛ばして行った。
「次はプリシアだ。左から近づいて来る剣士達を地雷弾で足止めしろ!」
「任せてよ。当たっちゃって!『地雷弾!』」
プリシアは地雷弾をまき散らしながら後退して行く。
地雷弾は、その名の通り地雷弾を踏まない限り爆発しない爆弾。
攻撃用としてはその効果は期待できないが防御線を張れるのが特徴。
敵の動きを止めたい時とか包囲したい時に有効だ。
それを知らない剣士達は地雷を踏んで吹き飛ぶ。
思う壺だな。
「よし、最後はガルドだ!正面から来る敵を爆裂剣で敵をなぎ倒せ!」
「それよりいいのがある。せっかく大車輪を覚えたんだ。ここで試してやるぜ」
「ガルド。これは遊びじゃないんだ。確実に倒せる技で……」
言っても無駄だな。
ガルドはすっかり大車輪を使う気でいる。
まあ、最初からうまく行くとは思わないが試すいい機会になるだろう。
「俺の奥義をお前達に見せてやる。目をかっぽじって見やがれ。行くぜ!『奥義、大車輪!』」
ガルドは大剣を天に翳すと自らの体を回転させながら剣士達に切りかかる。
その太刀は呼んで名のごとし車輪のように回転しながら切り裂く必殺剣。
剣士達は大車輪に吹き飛ばされて散り散りになる。
意外とうまくハマったな。
これならイケる。
「ちぃ。奴らがここまでやるとは……。だが、本当の戦いはこれからだ。弓使い、散会しながら進軍せよ!」
アラジンの合図で弓使い達が散会しながら距離を詰めて来る。
その間も矢が絶え間なく飛んで来て光の壁を叩いた。
「タクトさん。魔法が切れそうです」
見ると光の壁の光が弱まり出しチカチカしはじめた。
ここでプロテクションがなくなるのは痛い。
周りに身を隠せるモノがないだけに、弓使いの攻撃を防ぐ方法がなくなる。
「仕方ない。プリシア、爆霧烈弾で敵の視界を奪うんだ!」
「わかったわ。目の前を覆い隠せ!『爆霧烈弾!』」
プリシアが煙玉を放つと辺り一面、白い煙で覆われる。
煙玉の効果はわずかだが時間稼ぎが出来る。
私達は場所を移動させて体制を立て直した。
「煙玉とは猪口才な。奴らが場所を変えてもわずかなズレでしかない。お前達、奴らを取り囲むんだ!」
アラジンの合図で剣士達が白い煙の周りを取り囲む。
同時に弓使い達も間合いを詰めて近づいた。
「この煙が晴れた時はお前達の最後だ。構え!」
アラジン達は個々に武器を構えながら機会を待つ。
そして、煙が消えた瞬間、エリザが魔法を放った。
「古の大地に眠りしり命、漆黒の蛇となりて、大地を震わせ『デラグレイブ!』」
大地が大きく揺れ出し剣士達の足元をぐらつかせる。
同時に地獄アリを刺激して地獄アリが騒ぎ出す。
地獄アリは砂を撒きあげながら近くにいる剣士達を飲み込んで行く。
「こんな所でデラグレイブを使うとは、なんて命知らずな奴らだ。これでは戦いどころではない。お前達、散会しながら撤退せよ!」
アラジンの合図で剣士と弓使い達が撤退をはじめる。
私の狙い通りだ。
周囲を包囲された状態で敵を退却させるには意外な攻撃がモノを言う。
周りに地獄アリがいる中でのデラグレイブは予想外だったろう。
しかし、これで私達も地獄アリと戦う羽目になったのは否めない。
「アラジン達は撤退した。後は地獄アリを始末するぞ」
「けれど、砂の中にいたんじゃ手のつけようがないわ」
「ならば砂の中から出せばいい。エリザ、サンドストームで地獄アリを吹き飛ばせ!」
「空を駆ける旋風、風神の目となりて、大地を飲み込め『サンドストーム!』」
エリザは地獄アリの巣を目掛けて魔法を放つと砂煙を上げながら地獄アリが砂嵐に飲み込まれて行く。
そして、地上に放り出されるとその動きを止めた。
「よし、ガルド、プリシア、ルーン、一斉攻撃だ!奴が砂に潜る前に倒すんだ!」
「くらえ!『爆裂剣!』」
「切り裂け!『爆裂弾!』」
「天空より溢れしし光、数多の閃光となりて、大地を貫け『レイ!』」
ガルドの太刀が地獄アリの腹を切り裂き、プリシアの爆裂弾が手足をもぎ取る。
そして最後にルーンの光の魔法がとどめをさした。
地獄アリは沈黙する。
しかし、残りの地獄アリが砂の下で待ち構えている。
エリザのサンドストーム。
ガルドの爆裂剣。
プリシアの爆裂弾。
そしてルーンのレイのループで地獄アリを次々と倒して行った。
その間にアラジン達は逃げてしまったが、人質は無事だった。
「アラジンは逃げちゃったね」
「仕方ないさ。命があっただけでも良しとしないとな」
「そうだぜ。俺達をあそこまで追いつめたのはアラジンぐらいだったしな」
これまでにも強敵と呼ばれるモンスターと戦ってきたが戦術で追いつめられたことはない。
対人戦に特化した陰派の策士だけあって、これから先も憂慮しなければならない人物のひとりだ。
再びアラジンと剣をまじ合わせることがあったのなら覚悟する必要があるだろう。
私達は人質を助けるとヴェールズの街へ戻った。




