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38「アラジンの作戦」

突然、北と南の城壁で大爆発が起こる。


「な、何だ?」


警備兵達は動揺しながら煙が登った方を見やる。

すると城壁に開いた大きな穴から次々と盗賊団が街に侵入をして来た。


「こっちが本名か!」


同時に丘の上に陣取っていた盗賊団達も一斉に進軍をはじめる。

私の睨んでいた通りになったようだ。

街の警備兵は全部、東門へ集結していたから他の警備は手薄になっている。

そこを狙って襲撃して来たのだ。

まさか強固な城壁を越えて侵入して来るとは誰も想定していなかっただろう。

故に警備兵達を混乱させることが出来たのだ。

警備兵達は慌てふためきながら混乱をしている。

すると、隊長らしき警備兵が告げた。


「A班とB班は爆発現場へ向かえ!C班とD班は目の前の盗賊団を迎え撃つ!」


警備兵達は二手に別れると爆発現場へ急ぐ。

残った警備兵達は盗賊団を迎え討つべく武器を構えた。


「タクト。この戦いは、どうなると思うんだ?」

「警備兵達の不意を突くことに成功したが、戦力差があり過ぎる。長くは持たないだろう」

「なら、俺達の出番はなしって言うことだな」


東門の前で警備兵達と盗賊団が衝突をする。

警備兵達は横一列にならんで壁を造り街への侵入を許さない。

先頭は重装備の槍兵達が盗賊団を迎え撃つ。

その後ろには軽装備の剣士達が構えている。

間接攻撃がない警備兵達は直接、盗賊団と渡り合う。

一方で盗賊団の弓使い達は後方から支援をしていた。

しかし、弓が届く範囲には地獄アリの巣が立ち並んでいて、幾人かの弓使いは地獄アリに囚われていた。


「ねえ、見てタクト。街に侵入してきた盗賊団が聖堂へ向かっているわ」

「何だって!」


プリシアの指を指した北を見ると盗賊団が街を破壊しながら聖堂へ向かっている。

南側から侵入して来た盗賊団も聖堂へ向かって駆けて行く。

人質を取るつもりか。


「プリシア。私達も聖堂へ向かうぞ!」


私達は急いで時計塔から降りると街の中央にある聖堂へ向かった。



アラジンは聖堂に辿り着くと聖堂の周りに油を撒きはじめる。

人質達は恐怖に満ちた顔を浮かべながらその様子を見守っていた。


「アラジン様、準備は整いました」

「一人たりとも、この聖堂から出してはならぬ。周りを固めよ」


アラジンの指示を受けて合流した盗賊団が聖堂を取り囲む。

そして松明に火をつけて準備を整えた。

そこへ警備兵のA班とB班が駆けつける。


「侵入者はお前達だな。大人しく下れ」

「どの身分でモノを言っている。この意味がわからないのか」


アラジンは松明を手に取り撒いた油に火をつけようとする。


「卑怯な!人質を解放しろ!」

「それには条件がある」

「条件?」

「この街の支配権を譲ることだ」

「何だと!?」


この街を管理しているのはサンドリア王都。

その権利は全てブレックス国王の元にある。

支配権を譲ると言うことはブレックス国王に軍門に下れと言うことだ。

一国の王が盗賊団の要求に応じることはない。

たとえ多くの犠牲を出したとしても揺るがないだろう。


「さあ、どうする?」

「くっ……」


一階の警備兵には判断しかねる要求だ。

警備兵としての役割を果たすのが責務。

現場の警備兵なら人質の救出が最優先課題だ。


「お前の要求は聞こう。だが、その前に人質の解放が条件だ」

「く、くくく。ふははは。笑わせてくれる。一階の警備兵のお前達に判断できるものか」

「こ、こいつ。俺達を馬鹿にしてやがるのか」


アラジンの理不尽な態度に怒りを露わにする警備兵達。

それを逆撫でるかのようにアラジンは告げた。


「ブレックス国王を呼んで来い。直々に私が話をつけてやる」

「こ、国王をだと!」

「どうした。こいつらの命がどうなってもいいのか」


アラジンは松明を油に近づけて脅しをかける。

警備兵達は拳を握りしめながら湧き上がる怒りに耐えていた。


「仕方がない。ブレックス国王へ報告を……」

「その必要はない」


私達は警備兵達を掻き分けながらアラジンの前に出る。


「誰だ、お前は?」

「私は策士のタクト」

「策士だと。面白い」


私の言葉にアラジンは鼻で笑う。


「その策士が私に何の用だ?」

「人質を解放してもらおうか」

「ふっ、ふふふ。ならば、ブレックス国王を連れて来い。私が欲しいのはこの街の支配権だ」

「何バカなことを言っているの。そんなのできるわけないじゃない」


エリザが呆れた様子で両手を広げる。

それも無理はない。

支配権なんて高尚なものは一階の冒険者とは無縁の代物だ。

そんなことさえ既にわかっているアラジンが要求を突き付けて来るのは何故だ。

何か他に意図があるのか。


「この街の支配権を手に入れてどうするつもりだ?」

「私の王国を創る足がかりにするのだよ」

「国を創るだと?」

「そうだ。この世界は金がモノを言う。金さえあれば国を支配できるのだ」


アラジンは高らかに笑いながら両手を広げた。

確かに豊かな街のヴェールズでは金がモノを言う。

金があれば高価な服を纏い高級な料理を口に出来る。

大型船をチャーターして世界旅行なども楽しめる。

しかし、それは自ら稼いだ金で楽しむものだ。

奪った金では満足行くものにはならないだろう。


「お前の本当の狙いは何だ?国を創るのは建前で本当の狙いがあるのだろう」

「ふっ、勘のいい奴だ。ならば教えてやろう。私は陰派の策士を再興させるのが目的だ」

「陰派の策士?」

「策士のお前ならば知っているだろう。陰派の策士の存在を」


祖父から昔に聞いたことがある。

策士には陰派と陽派がいたことを。

しかし、平和条約の影響で陰派は消滅していったはず。

私の家系のように生き残りがいたとは。


「この平和ボケした世界には策士が必要だ。策士こそが世界を支配できる存在なのだ」

「お前の考え方は間違っている。策士はそんなものじゃない」

「ふっ、何とでも言え。策士のいない戦いはただの騒動だ。私が本当の戦いに導いてやると言うのだ」

「こいつに何を言っても無駄よ」


エリザは険しい目でアラジンを睨みながら吐き捨てる。


「力づくでやるか?」

「人質がどうなってもいいと言うのだな?」

「くぅ……」


ガルドは振りかざした拳を仕舞い込んだ。

ここで力づくでアラジン達を捕まえようとすれば多くの人質が犠牲になる。

油に火でもつけられたら一瞬で聖堂が炎で包まれてしまう。

それだけは避けなければならない。

人質を犠牲にすることなくアラジンを捕まえる方法があれば。


「お前も策士ならば私と勝負しろ」

「勝負だと?」

「そうだ。戦術で白黒つけようじゃないか」

「ふっ、ふふふ。面白い。買った、その勝負」


思いつきで発言してしまったことだがアラジンは乗ってくれた。

それは勝算がはじめからあったからだろう。

アラジンは陰派の策士。

対人戦に特化した戦術を得意とする。

それに対し私はモンスター戦に特化した戦術だ。

両者が渡り合えばアラジンに分がある。

しかし、私には頼れる仲間がいる。


「で、お前の駒は何人だ?」

「私の仲間はこの4人だ」

「たった4人で私とやりあおうってのか。笑止!」

「あまり舐めるなよ」


アラジンの駒は50名の剣士と30名の弓使い。

かたや私は剣士のガルド、魔法使いのエリザ、プリ―ストのルーン、爆弾使いのプリシアの4人。

数としては歴然の差があるが、個々の力は私達の方が優れている。

それでも苦戦を強いられるのは目に見えていた。

舞台はヴェールズ付近の砂漠地帯。

もちろんイレギュラーの地獄アリのいる場所だ。

聖堂に閉じ込められていた人質を数人選び新たな人質とした。

選ばれたのは歯向かう力のない子供と女達。

私達が敗北したら処刑するのだと言う条件付きだ。


「私、こんな戦いははじめてよ」

「俺だって」

「人質がいるんです。気を引き締めて行かないと」

「タクト。大丈夫だよね?」

「もちろんだ」


私の言葉に少し安心したのかエリザ達は口もとを緩ませた。


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