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34「偵察」

アラジンのアジトはヴェールズの北の丘陵地帯にあることがわかった。

ヴェールズの北は丘陵地帯になっておりアジトを作るにはちょうどいい立地。

ヴェールズの周りの砂漠地帯には地獄アリが巣を張っていて慣れた者でも危険だ。

ある意味、地獄アリの巣が城壁がわりになっていると言っても過言ではない。

ヴェールズはこれまで一度も襲撃されたと言うことはないのだ。


アラジンもそのことは考慮しているようで安易にヴェールズを襲撃して来たことはない。


「タクト。ここを通って大丈夫なの?周りには地獄アリが潜んでいるんでしょ」

「地獄アリはすり鉢状の巣を作るからすぐにわかる。私の見たところ、この周辺には地獄アリの巣はない」


私はラクダの背に乗りながら辺りを見回す。

ラクダはヴェールズの駅舎で借りたもので一日5百ゴールドで借りれた。

しかし、馬と違って乗り心地が悪い。

突き出たコブがお尻にあたって痛いのだ。


「乗るなら馬がいいわね」

「贅沢言うなよ。馬じゃ砂漠で長くは歩けないからな」


ここら辺に住んでいる人達は普段からラクダを愛用している。

そのためか文句を言う人はひとりもいない。

まあ、砂漠地帯を延々と歩くよりも便利なのは間違いないが。


「丘陵地帯が見えて来たわ」


私達はこんもりと盛り上がった砂漠の麓にラクダを止め身を隠しながら丘陵地帯を見やる。

望遠鏡で覗くと丘陵地帯に数人の人影が見えた。


「見張りがいるぞ」

「ちょっと私にも見せてよ」


エリザは私の望遠鏡をはぎ取り丘陵地帯を見やる。


「本当だわ。ひい、ふう、みい、よお……8人いるわね」

「どうしますのタクトさん。ここから丘陵地帯まで身を隠せる場所はありませんわよ」

「夜になるのを待とう」


陽が落ちれば闇に紛れて前に進める。

見えずらさは同じだけれど、こっちには方位磁石がある。

迷わずに丘陵地帯まで辿り着けるはずだ。

それに気温が下がるから移動も幾分か楽になる。

だが、気をつけなければならないのは地獄アリだ。

地獄アリは昼夜関係なく獲物を狙っている。

間違えて巣にでも入ってしまえば間違いなく殺される。


「それにしても熱いわね」

「何でも乾燥させる砂漠地帯だからな」

「こんな所にいたら干上がってしまうわ」


エリザは水筒の水を飲みながら愚痴をこぼす。

とりあえずテントを張って直射日光を避けるのが一番だな。

私はラクダからテントを下ろすと砂漠の山陰にテントを張った。


「これで幾分か楽になれるだろう」

「ないよりはマシって感じね」


テントは数名が入れるほどの小さなもの。

キャンプ用のテントを改良したもので熱が籠りにくいのが特徴だ。

時折、吹くカラ風は熱風だが乾いている。

蒸し暑さがないのでぐったりとすることはない。


それから数時間後。

西の地平線に太陽が沈みはじめる。

影が徐々に夜の闇に浸食されて行く。

数分の間に辺りはすっかり暗くなった。


「よし、もういいだろう」

「これだけ暗ければ目立たないわね」


私達はテントを畳んでラクダに乗せると北の丘陵地帯に向かった。

運がよく地獄アリの巣は周りになく、難なく丘陵地帯の麓までやって来た。


「ここにアラジンのアジトがあるんだな」

「そうだ。どこかに入口があるはずだ。辺りを調査してみよう」


私達は散り散りになって辺りをくまなく探し回った。

しかし、入り口らしきものは見当たらない。


「ここじゃないんじゃないのか?」

「見張り達がいたのがこの辺りだ。どこかに入口があるはずなんだが……」


私が手をこまねいていると石の擦れる鈍い音が伝わって来た。

私達はすぐさま岩陰に身を隠して様子を伺う。

すると、大岩が動いてアジトの入口が現れた。


「やっぱりここだったんだ」


アジトの入口から数名の盗賊団が出て来る。

ランプを持って崖の上にいた見張りと交代をした。


「あの大岩が目印だ」

「どうする。中へ侵入するか?」

「ここまで来たんだし、中の調査も済ませておきたいな」


盗賊団が入り口に戻った所を見計らって大岩に近づく。

そして大岩が閉じる瞬間に飛び込んでアジトの中に侵入した。

大岩の内側を見ると歯車で動かしていることがわかった。

アジトの中は所々にランプが設置されていて薄暗い。

高さは5メートルぐらいの洞窟のような造り。

岩肌ゴツゴツしており人工的に作った穴ではないことはわかった。


私達は盗賊団に気づかれないように後から着いて行く。


「どこまで行くのかしら?」

「この先に何かあるのだろう」


しばらく進むと大きな広間を見渡せる踊り場に出た。

煌々とランプが焚かれ広間では盗賊団が集会をしている。


「皆のもの。ヴェールズを支柱に納める特別な日を迎えるための準備は整ったか?」

「いいえ。まだ準備に時間がかかります」

「決戦の時は近い。皆のもの抜かりなく準備をするのだ」


壇上からアラジンが盗賊団に話しかける。

ターバンを頭に巻き、顔をベールで隠している。

そして鞘から曲刀を指し抜くと空に掲げる。

それを見て盗賊団達も鞘から剣を抜いて空に掲げた。


「決戦の時のために!」

「「決戦の時のために!」」


大広間にいた盗賊団達の興奮が一気に高まる。

これが盗賊団のリーダーの指揮の賜物か。


「もう、これでいいわよね。あまり長いをしていたら見つかってしまうわ」

「いや、まだだ。盗品の場所も見当つけておかないと」

「エリザさんの言う通りです。もう、戻りましょう」


ルーンの指摘に私は前に進めた足を引き戻した。

私のこう言う所がみんなを危険に合わせる。

自分でも自覚しているが、目の前にぶら下がったエサに食いついてしまう。

それは自分だけでなくみんなの命を預かっている身として心得ていなければならないことだ。

私達は盗賊団のアジトを後にしてヴェールズへ戻った。


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