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33「オーダーメイド」

私達は情報を集めるためヴェールズの酒場に来ていた。

酒場は巨大な倉庫を改修したもので金属の柱がむき出しになっている。

さすがはヴェールズ。

何もかものサイズが他の街と違っていた。


「マスター。ここ街の警備兵はやたら多いが何かあったのかい?」

「何だ知らないのか?アラジンだよ。アラジンがこの街を狙っているらしいんだ」

「アラジン?」


アラジンとは北の砂漠地帯を根城にしている盗賊団でヴェールズの乗っ取りを企んでいる組織。

ヴェールズの南にサンドリア王都があるのだけれど、警備兵はそこから派遣されているそうだ。

アラジンはサンドリア王都ではなくヴェールズを狙っているのは、ヴェールズの貿易収入が目あて。

サンドリア王都ほどの関税もなく貿易の分だけ収入が入るヴェールズは他の商人達からしても魅力的な街なのだ。

だから、多くの商人が商売をしにヴェールズに集まって来る。

その仕組みがヴェールズをここまで大きくした要因のひとつだ。


「そんなやつらに狙われているなんてな」

「まあ、アラジン捕獲はギルドでも情報に上がっているから見に行ってみるといいよ」


私達はその足でギルドへ向かった。

ギルドは多くの冒険者達で賑わっている。

さっそく掲示板に掲載されているアラジン関連の依頼を探した。


「アラジンの捕獲にアラジンのアジト偵察、アラジンの盗んだ財宝の回収なんてのもある」

「次のターゲットはアラジンに決めるのか?」

「ヴェールズにいる以上、アラジンの存在は無視できない。対立する前にもっと情報が欲しいところだ」

「なら、アジトの偵察にしてみたら?報酬は5千と少ないけどね」


エリザの提案に乗っかって私達はアラジンのアジトの偵察の依頼に決めた。

私達はマリンクラブ討伐の報酬を頂いてから武具の新調に向かった。

ヴェールズの武具屋は種類が豊富で品質もピカイチのモノばかり。

それなりに値は張ったが報酬を頂いたばかりなので懐は温かい。


「武具の新調って言ったってまだ俺の大剣は使えるぞ」

「今回は武器じゃなくて防具の方を新調するのさ」


私はマリンクラブの甲羅で出来た胸当てを手に取る。


「旦那。目の付け所が違うね。そいつは軽いのに硬いから女性でもちょうどいい」

「私、戦士じゃないんだから胸当てなんて嫌よ」


エリザは嫌そうにマリンクラブの甲羅の胸当てを見やる。

まあ、魔法のローブを身に纏っていいるエリザには似合わない。

エリザやルーンは服飾系の店の方がいいかもしれないな。


「なら、俺が買うよ。マリンクラブの固さは俺が一番よく分かっているし、防御力アップするなら問題ない。ついでにテコと膝アテももらおうか」

「毎度あり」


ガルドはさっそくマリンクラブの甲羅で出来た防具を身に着けると今まで身に着けていた防具を下取りに出した。


「こいつは随分使い込んであるな」

「旅をはじめた頃からの付き合いだからな」

「下取り分はマリンクラブの甲羅の防具代から値引きするよ」


防具屋の店主は嬉しそうにしながら算盤を弾く。


「で、いくらだ?」

「全部で1万ゴールドだ」

「結構するな」

「まあ、上等な代物だからな」


私はガルドの防具の代金を店主に渡すと、店を後にした。


「それじゃあ次は服飾店に行こう」

「やっとこの服からおさらばできるのね」

「長旅ですっかり型崩れしちゃいましたしね」

「やったー。おニューの服、おニューの服」


服飾店は武具屋の隣に併設されていた。

この服飾店は普段着のモノではなく戦闘向けの服飾店。

武具屋と併設されているのは武具屋から素材を手に入れるためでもある。

店の中はいろとりどりの服飾が飾られていた。


「これかわいい!」

「本当、このフリルがキュートですわ」

「私、こっちのもいい」


エリザ達は休日のショッピングのように服飾選びを楽しんでいる。

服飾を試着したり、鏡に映したりしながらショッピング。

そこにいる姿はどこにでもいる女性達と何ら変わりがない。

戦いから離れたらエリザ達は普通の女性なのだ。


「ねえねえ、タクト。これなんかどうかな?」


プリシアは露出度の高い服を身に着けて見せびらかせて来る。

幼児体系のプリシアにはまだ早いファッションだ。


「ショッピングを楽しむのもいいが、ちゃんと選んでくれよ」

「わかっているわよ。そんなに心配しないで」


ショッピングを楽しんでいるエリザ達を残して、私は男性向け用の服飾を探しに行った。

私の服も特注なので、この店には変わりのモノは売っていない。

私は店の恰幅の良い女店主にオーダーメイド出来るか尋ねた。


「この服のデザインでオーダーメイドって出来ますか?」

「できるわよ。まずは糸を選んでちょうだい」

「糸?」


服飾の糸は繭から採れた糸ばかりでなく蜘蛛から採れた糸、モンスターの毛から造った糸なんかもある。

戦闘用の服飾には丈夫で切れにくい蜘蛛の糸が使われていると言う。

蜘蛛と言っても昆虫の蜘蛛ではなくモンスターの鬼蜘蛛だ。

体長は3メートルほどあって森に巣を張って生息している。

冒険者達の中には鬼蜘蛛の巣を集めて市場に売りに出す者もいる。

ギルドの依頼にも鬼蜘蛛の巣の回収依頼があるくらい盛んだ。


「どれがいいんだ?」

「そうだね。最近の流行りは鬼蜘蛛の糸だよ。軽くて丈夫で水にも強いからね」

「じゃあ、それで頼むよ」

「はいよ」


恰幅の良い女店主は私の服を採寸すると鬼蜘蛛の糸を持って作業場出した。


「なんだ、タクトもオーダーメイドにするの?」

「エリザ達もか?」

「この服、気に入っているからね」

「あんた達もかい?」


恰幅の良い女店主はエリザ達の服を採寸し鬼蜘蛛の糸を持って作業場へ出した。


「いつ頃出来るかな?」

「そうだね。一から造るからね。1ヶ月は必要ね」

「1ヶ月か……」

「それじゃあ困るのかい?」


私が腕を組んで難しそうな顔を浮かべると恰幅の良い女店主が尋ねて来る。


「いいや、それで頼むよ」

「立派なものに仕立てておくからね。楽しみにしておいてくれよ」


私達は仕上がりを楽しみにしながら服飾店を後にした。


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