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31「マリンクラブ戦」

私達は早めの夕食を済ませて罠を張った海岸線へやって来ていた。

もちろん船長達はキャンプで留守番。

最後までマルクは行きたいと騒いでいたが、そこは船長のひと言で静止されたのだった。


「マリンクラブは来るかな?」

「船長の話通りならば日没と共に現れるはずだ」


西の空は茜色に染まり東の空に一番星が光る。

戦闘じゃなければロマンチックな雰囲気なのだが。

カップルがいたら密やかに盛り上がるだろう。


「ねぇ、タクト」


エリザは猫撫で声を出しながら体を寄せて来る。


「何だ?」

「少しあっちに行かない?」

「今は作戦中だぞ。気を抜くな」

「何よ、ケチ!」


私の叱責にエリザは頬を膨らませてブー垂れる。

この雰囲気に飲まれたのだろうか。

まあ、エリザの気持ちもわからない訳ではない。

この絶景を見たら誰でもロマンチックな気分になるだろう。

陽が沈むと何故がうっとりとした気分になりやすい。

それは月の魔力と考える人もいる。

しかし、夜の静寂さがそうさせるのだろうな……きっと。


と、海の中からシャカシャカと何かの音が聞こえて来る。


「何?来たの?」


目を凝らして見るとマリンクラブの群れが海から這いあがって来た。

隊列を組んでいるかのように群がりながら横歩きして歩いて来る。


「来た!」

「プリシア、エリザ。準備をしておけ」


私の指示でプリシアとエリザが所定の場所につき合図を待つ。

マリンクラブは罠に気づいていないようで、そのまま海岸に上がって来る。

これならば何千人前の料理が賄えるだろう。

倒したら明日の朝飯にしてみよう。


マリンクラブは罠の近くまで来ると急に足を止めた。


「気づかれたんじゃないのか?」

「まだだ。まだ様子をみよう」


マリンクラブは何かを確かめるようにハサミを上下にさせる。

それはダンスを踊っているかのようでシンクロしている。

カニがよく見せる顔を掃除しているのだろうか。

頻りにハサミを上下させていた。


「まだか、タクト?」

「まだ待つんだ、ガルド」


しばらくするとマリンクラブは前に進みはじめる。

そして罠の上に乗った。


「よし、今だ、プリシア!聖光弾で混乱させるんだ!」

「わかったわ。目をくらませ!『聖光弾!』」


プリシアの放った聖光弾が弾けて光の飛礫を振り撒く。

マリンクラブの群れは目をくらませられて動きを止める。


「よし、エリザ、今だ!氷を溶かせ!」

「爆炎より生まれし炎、灼熱の炎となりて、大地に降り注げ『ファイアーボール!』」


エリザの放ったファイアーボールが氷に直撃すると罠のロープがパチンコのように撓る。

そしてマリンクラブを一斉にひっくり返した。


「よし、作戦は成功だ!」


マリンクラブはじたばたしながら体を起こそうとする。

私はすかさずガルド達に指示を出した。


「よし、みんな。マリンクラブの腹を目掛けて攻撃をしろ!」

「「任せておけ」」


ガルドはマリンクラブの上に馬乗りになり大剣を腹に突き立てる。

ブチッと鈍い音を立てながら大剣がマリンクラブの腹に沈み込む。


「こいつは良いぜ。こんなに柔らかいなら必殺技もいらない」


プリシアはマリンクラブの腹に爆弾を仕掛けて行き、一気に爆発させる。

すると、煙を上げながらマリンクラブが泡を吹いた。


「大漁、大漁」


エリザは炎の魔法で、ルーンは光の魔法でマリンクラブの腹を攻撃する。

次々にマリンクラブは泡を吹いて倒れて行く。


「これなら朝飯の心配はいらないわね」


と、ひっくり返っていた残りのマリンクラブが体を起こし反撃をして来た。


「ま、マズイ。マリンクラブが復活したぞ」

「一時退却だ!」

「そんなこと急に言われたって」


ガルドはマリンクラブの攻撃を交わしながら後退をはじめる。

すると、数匹のマリンクラブにマルクが囲まれていた。


「おい、何でこんなところにマルクがいるんだ!」

「マルクだって!」


ガルドの視線の先を見やるとマルクがマリンクラブに取り囲まれていた。

小型ナイフを振り回しながらマリンクラブに威嚇している。


「マルク。こいつらは俺が引き付けておく。その間に逃げるんだ!」

「俺だって戦えるよ」

「何言ってやがる。これは遊びじゃないんだぞ!」


ガルドはマリンクラブの攻撃を交わしながらマルクの所へ近づく。

プリシアも駆け寄り背中合わせに構えた。


「マルク、何で無茶なことをするのよ」

「女のプリシアが戦っているんだ。男の俺が黙って見ているんなんてできないよ」

「だからって」


プリシアとマルクは口論をはじめる。


「畜生。こうなったら……必殺『爆裂剣!』」


ガルドの爆裂剣がマリンクラブを捉えるがマリンクラブの固い装甲に阻まれ弾かれてしまう。


「何だよ、必殺技も効かないのか。こいつら最強じゃないか」

「ガルド!肉弾戦では無理だ!そこから逃げろ!」

「逃げろって言ったって」


ガルド達の周りにはマリンクラブが取り囲んでいて逃げ道がない。

足の下を掻い潜って逃げようとしてもマリンクラブの足でつぶされかねない。

ガルドとプリシアは絶対絶命のピンチに陥っていた。


「このままじゃガルド達がやられてしまうわ。タクト、何か策はないの?」

「ルーン、スロウの魔法でマリンクラブの動きを封じてくれ!」

「わかりましたわ。時の狭間よりいでし御霊、かの者を時空の歪みに引き落とせ『スロウ!』」


マリンクラブの足元に魔法陣が浮かび上がり白い鎖が絞めつける。

マリンクラブはもがくが鎖の締め付けが強くなって動きが鈍って行った。


「よし、ガルド!マリンクラブの足元を避けながら逃げるんだ!」


ガルド達はマリンクラブの足を避けながら逃げ出す。

それを阻止しようとするマリンクラブだったがスロウの魔法の効果でうまく行かない。

ガルド達は難なくマリンクラブの群れから逃れられた。


「逃げて来られたけれど、これからどうするの?」

「これ以上、マリンクラブと戦ってもこちらに勝ち目はない。いったんキャンプまで逃げるんだ」


私達はマリンクラブをそのままに船長達がいるキャンプまで戻った。


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