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19「グルンベルグ王都」

翌朝、私はエリザとルーンの顔をまともに見られなかった。


「どうしたタクト。顔が赤いぞ」

「な、何でもない。二日酔いになっているだけだ」


そんな私の気持ちもつゆ知らず、エリザとルーンはいつもと変わらず明るく振る舞っていた。


「それでタクトさん。これからどうしますか?」

「ま、まずはグルンベルグの街へ向かおう。ダゼル国王、直々にドラゴンの出現の報告をしなければならなし、他の街に行くにしても、ここからでは道が走っていないので行けないからな」


私達はグルンベルグの王都へ向かう馬車に乗り込むと街の人達が集まり見送ってくれる。

私達が見えなくなるまで名残惜しそうに手を振っていた。


その道中。

昨夜の復興祭の話題になった。


「それでね。ニックが私にプレセントをくれたんだよ。見てこれ奇麗でしょ」


街の男の子からネックレスをもらったプリシアは自慢気に見せびらかしながら言って来た。


「ニックは私のことが好きだって」


その言葉に私は思わずギクリとする。

その様子を見ていたルーンが小さくクスクスと笑った。

ルーンはおそらく昨日のことを覚えているらしい。

エリザに昨日のことを話さないようにジェスチャーをすると、ルーンは小さく頷いて答えた。


「プリシアさんはニック君のことが好きなのですか?」

「私が好きなのはタクトだけ」


ルーンの突拍子もない質問にプリシアは迷うことなくはっきりと答えた。


「プリシアさんははっきりしているんですね。何だか羨ましいわ」

「ルーンも好きな人いるの?」

「それは……」


ルーンの言葉を遮って馬車の運転手が告げた。


「グルンベルグ王都が見えて来ましたぜ」

「随分、大きいな」

「王都だからね」


遠目に浮かぶグルンベルグ王都を眺めながらガルドとエリザは驚いていた。


「城の入口まで馬車を回してくれ」

「あいよ。城の入口ね」


そう言って運転手が返事をすると城下町を通り抜け城の入口まで馬車を進めた。

城の入口には騎兵隊が一列に整列していて厳かな雰囲気で包まれている。

私達は馬車を降りると騎兵隊に制止された。


「私達は怪しいものではない。国王にぜひ、耳に入れておきたいことがあってやって来たのだ」


騎兵隊はピクリともしない。

すると、奥から隊長らしき人物がやって来た。


「ダゼル国王に話とは何だ?」

「魔獣キマイラのことだ」


私の言葉に騎兵隊の隊長はピクンと表情を変えた。


「伝書鳩は、お前達の使いか。ダゼル国王は中で待っておられる。粗相のないよに」


そう言うと騎兵隊の隊長は騎兵隊を後ろに下がらせ道を開けてくれた。

私達、一向は騎兵隊の隊長に導かれるまま、城の中に入って行った。


「レッドカーペットね。何だか偉い人になったみたい」


緊張感のないプリシアはいつものようにはしゃいでいる。

私は、プリシアの頭を軽く叩くと、手を引いて中に連れて行った。


城の中には玉座があり、白い髭を蓄えたダゼル国王が座っている。

その両脇には屈強な戦士が戦斧を構えてダゼル国王を守っていた。


「ダゼル国王様、お初にお目にかかります。私はタクト。策士をしております。この者たちは私の仲間達です」


玉座の前で膝まづいて敬意を表す私に習うように、ガルド達も膝まづいて敬意を表す。


「お主達が死神を討伐しニーズの街を救った者達か。あっぱれじゃ」


恰幅の良い国王は自慢の白い髭を撫でながら豪快に笑う。

かと思えば、急に顔色を変え尋ねて来た。


「それでワシの召喚状の件は、どういうことだ?」

「はっ。ダゼル国王、それには訳がありまして……」


改まって畏まる私を見て、ダゼル国王は話を切り替える。


「まあよい。それでワシに直々に伝えたいこととはなんじゃ?」

「北東のサミトスの街の山奥に魔獣キマイラが出現しました」


その言葉を聞いて国王は側近に確認をとる。

そして難しい顔を浮かべながら黙り込んだ。


「キマイラの出現が確かだとしたら、国家の一大事じゃ。他の魔獣も目覚めるかもしれない」

「また、聖戦になるのですか?」


そう言う私の目を真剣な眼差しで見つめるとダゼル国王は言った。


「すぐにはならんだろうが、いずれ決戦の時は来る。それまでに我が国の戦力を強化しておかなければならない。お主達の力も必要じゃ」

「もちろんです、ダゼル国王。私達でお役にたてるのならば、惜しみなく」

「頼りにしておるぞ」


私の進言にダゼル国王も満足したようで、顔をほころばせると笑顔を浮かべた。


「ところで、お主達は、これからどうするのじゃ?」

「私達は戦力強化のため世界を巡り修業をして参ります」

「ならば、これを持って行くのじゃ」


ダゼル国王が側近に合図をすると、側近は煌びやかに装飾された箱を持って来た。

ダゼル国王はおもむろに箱を開けると金色に輝くメダルを取り出す。


「これは我が国の紋章じゃ。通行書代わりになる。持って行け」

「ありがとうございます、ダゼル国王」


ダゼル国王からメダルと預かると私は全身で感謝の意を示した。

ダゼル国王から国の紋章を授かることはとても名誉なこと。

その国の代表のような存在で、私達のこれまでの活躍が認められた瞬間でもあった。


そして私達の新たな旅がはじまった。

来る聖戦のため戦力を強化させる。

それは明日へと続く未来のための挑戦でもあった。


まだまだ続きます。


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