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165「魔獣ヒュドラ戦④」

その前にプリシア達弓部隊が追い打ちをかけるように『酸倍弾』を放つ。

今度は狙いを斬撃の痕に変更して集中的に酸を浴びせる。

少しでも魔獣ヒュドラの防御力を落としておいた方が都合がいい。

それに呼応するよにアルタイル軍の銃撃部隊が一斉射撃を開始した。

狙いは魔獣ヒュドラの赤く光る目。

しかし、魔獣ヒュドラは瞼を閉じて防御に転じた。

無数の銃弾が魔獣ヒュドラの瞼を襲うが失明するまでには至らない。

鱗で覆われている体よりも固くなのだがゴムのような分厚い肉に阻まれてしまう。


「そんなへなちょこな攻撃じゃ効かないぜ。お前達は下がっていろ!」


ガルドは大剣を振りかざすとアルタイル軍へ向けて叫ぶ。

その声を受けてグランが銃撃部隊を下がらせた。


「よし、ガルド。総攻撃だ!」

「見てろよ、お前ら。本当の戦いを教えてやる!『100連爆裂剣!』」


ガルドはアルタイル軍に高らかに宣誓すると魔獣ヒュドラに『爆裂剣』を放つ。

続くようにレイム、騎士団へと『爆裂剣』を繫いで行く。

もちろん狙いは神の裁きで傷ついた斬撃の痕だ。

楔で大樹を倒すように傷口を大きく広げて行く。

身動きのとれない魔獣ヒュドラは成すすべもなく『100連爆裂剣』の餌食になっていた。

『100連爆裂剣』をコンプリートすると魔獣ヒュドラのひとつの首が捥げて落ちる。

さすがのチャクラをかけた『100連爆裂剣』だけあって破壊力が抜群に秀でいている。

それに加え流れるような太刀筋は川の流れをも彷彿させる。

『100連爆裂剣』は天の川の如く魔獣ヒュドラの首を捥ぎ取ったのだ。


「おっしゃー!見たか。これが戦いって言うものだ!ガハハハ!」


ガルドは魔獣ヒュドラの捥げた首を足で押さえながら勝ち誇ったように叫んだ。

その横でレイムが紙吹雪を舞い散らせてガルドのご機嫌をとっていた。





「相変わらずだな、あいつは。しかし、見違えるほどに成長している。爆裂剣を100連続けるなど普通では考えないことだ。グルンベルグ軍の力を底上げしているのはあいつなのかもしれない」


マリア―ヌはガルドの戦い方に関心をしながらボソッと呟いた。


「グルンベルグ軍には負けてはいられないぞ!我がヴェズベルト軍の誇りを見せるのだ!」


マリア―ヌは剣を掲げて騎士達を鼓舞する。

それに呼応するかのように騎士達も剣を掲げて叫んだ。


「狙うは魔獣ヒュドラ!我に続け!」


マリア―ヌは騎馬を走らせて魔獣ヒュドラに向かって行く。

そして剣先を魔獣ヒュドラに向けると奥義を放つ。


「冥府に帰れ『紫電一閃!』」


マリア―ヌの剣に無数の紫色の稲妻が走る。

チリチリと震える空気を裂くように閃光の如く、鋭い一撃を放った。

マリア―ヌの剣は魔獣ヒュドラを捉えて傷口を大きく開く。

続くようにヴェズベルト軍の騎馬隊が『霧雨』を放つ。

もちろんマリア―ヌが広げた傷口を狙って。

豪雨の如く、無数の刺突が魔獣ヒュドラを襲う。

その度に血飛沫が辺りに飛び散った。


「あいつらの100連爆裂剣ほどの激しさはないが、我が騎馬隊も捨てたものではない。一糸乱れることなく攻撃を一点に集中させている。これも日頃の訓練の成果だと言える」


マリア―ヌはタクト達と旅を終えた後、ヴェズベルト軍を一から鍛え直した。

タクト達との冒険の中で気づいたヴェズべルト軍に一番欠けているであろう必殺技の習得を目指したのだ。

それまでにも基本中の基本である『刺突』は覚えていたのだが攻撃力が非常に小さい。

対魔獣戦を見越してより強力な必殺技の習得に取り組ませたのだ。

それがここで役に立つとはマリアーヌ自身、予想もしていなかった。

しかし、まだまだ改良の余地はある。

ガルド達が爆裂剣を100連繋いでいるように連撃での攻撃パターンも習得させる必要がある。

それを越えることが出来たのならば奥義の習得も目指せると言うもの。

ヴェズベルト軍はまだまだ強くなる。

そう実感したマリア―ヌだった。


ヴェズベルト軍の猛攻を受けて魔獣ヒュドラの首が捥げ落ちる。

すると、ヴェズベルト軍から歓声が湧き起った。


「やったぞ!我らも魔獣ヒュドラの首を捥ぎ取った!」

「だが気を抜くな。まだ頭は7つもあるんだ」


マリア―ヌが一喝するとヴェズベルト軍が気を引き締めた。





両軍の戦いを目の当たりにしていたグランは驚愕の顔をしたまま立ち尽していた。


「本当に魔獣ヒュドラの首を狩るなんて。両軍も只者じゃない」


同時に自分達もやってやると言う意気込みが湧いて来る。

グルンベルグ軍やヴェズベルト軍にばかりいい思いをさせるのは頂けない。

ここでアルタイル軍の本領を発揮して両軍に見せつけるのだ。


「皆の者、アルタイル軍の誇りを示せ!突撃!」


グランの合図で最前列にいた騎士団5000名が一斉に魔獣ヒュドラへ向かって駆けて行く。

その足音は地響きとなりアルタイルの大地を震わせた。

グランは剣を高く掲げて精神を集中させる。

すると、剣に無数の稲妻が走った。


「これぞ我が奥義『雷虎招来!』」


グランが剣を振り下ろすと同時に雷を纏った虎の幻影が生まれる。

それは衝撃波となりて魔獣ヒュドラを切り刻んで行った。

続くようにアルタイル軍の騎士が『雷神剣』を放つ。

同時に無数の稲妻が魔獣ヒュドラの傷口を襲った。

『雷神剣』はアルタイル軍に受け継がれている必殺技のひとつだ。

騎士団長であるグランはもちろんのこと、ただの騎士でさえ習得している。

アトス政権に変わってからは必殺技の習得がマストとなった。

それは過激派だった頃のアトスが実際に感じて来たことだ。

アルタイル軍は数は多いが火力が弱いと言うことが唯一の弱点だった。

ドワーフが造る新兵器に頼ってばかりいたので騎士団の質が落ちたのだろう。

アトスは政権を取ると同時に騎士達の質の向上を図ったのである。

おかげで全ての騎士が『雷神剣』をマスターするまでに至った。

しかし、それだけではまだ不十分と感じていることも忘れてはならない。

ここでグルンベルグ軍とヴェズベルト軍の戦いを目の当たりにしたのだ。

その差は歴然としている。

グルンベルグ軍とヴェズベルト軍の騎士団長の統率力の高さ。

それに加えて類まれなる剣技腕前。

どれをとっても今のグランをはるかに凌駕していたのだ。

グランの中に沸々と湧き上がる激しい感情が心を満たす。

同時にグランは更なる強化を誓うのだった。


「我らも魔獣ヒュドラの首を落とすのだ!」


グランは再び同じ場所を狙って奥義を放つ。

その雄姿を見て他のアルタイル軍の騎士団も続いた。

アルタイル軍の必死の猛攻で魔獣ヒュドラの3つ目の首が捥げ落ちる。

すると、アルタイル軍から歓声が湧き起った。

それは魔獣ヒュドラを討ち取ったかのような喜びようだ。


「まだ戦いは終わっていない!気を引き締めてかかれ!」


喜び合っている騎士団にグランが一喝すると再び緊張が戻って来る。

魔獣ヒュドラの首をとったと言えまだ6つもあるのだ。

どれか一つでも残していれば、また再生されてしまうだろう。

そんな失態だけは避けなければならないのだ。





続いてグルンベルグ軍はラクレス達の攻撃がはじまる。

もちろん事前にルーン達プリ―ストのチャクラはかけてあるが。

ラクレスは槍を掲げながら槍部隊を鼓舞する。


「この勢いで魔獣ヒュドラの首を根こそぎ狩るぞ!進撃!」


ラクレスの掛け声でグルンベルグ軍の槍部隊の士気が一気に高まる。

そして、その切っ先を魔獣ヒュドラに向けた。

ラクレスは第一撃を魔獣ヒュドラに加える。


「お前の運も尽きた。奥義『次元裂波!』」


ラクレスの掲げた槍に激しい覇気が渦状に絡みつく。

その槍を魔獣ヒュドラに向けると肉片を抉りながら深く突き刺さって行った。

チャクラの効果もあって槍は深く、傷口は大きく広がっている。

そこへグルンベルグ軍の槍部隊の『水渦衝』がヒットする。

水流を纏った槍は魔獣ヒュドラの肉を抉りだして骨を露わにした。


「これを破壊すれば首は討ち取れる。攻撃を集中させよ!」


ラクレスの合図でグルンベルグ軍の槍部隊は『水渦衝』を放つ。

すると、骨にヒビが入り粉々に砕け散った。

そしてラクレスが最後の一撃である『次元裂波』を放つ。

魔獣ヒュドラの首は攻撃に耐えられずに根元から捥げて行った。


「よし、これで4つ目」


残る首は5つ。

再びプリシア達弓部隊が『酸倍弾』で装甲を削ぎ落す。

斬撃の傷跡に集中させて『酸倍弾』を放った。

地味な攻撃方法だが、それが功を奏したようで。

さすがの装甲も数多の酸には勝てないようで防御力を一気に下げた。

そしてルーン達プリ―ストがガルド達に『チャクラ』をかける。


「よーし!これでケリをつけるぞ!」


ガルドは再び『100連爆裂剣』を放つ。

ここまで来るとグルンベルグ軍も慣れたようでリズムよく『爆裂剣』を繫げて行く。

遠くから聞こえる爆音がまるで交響曲のように心地よいリズムを刻む。

これだけ精度が高まって来れば奥義の連撃にも繋がるはず。

ガルドのことだ。

攻撃している間にも、今後の特訓のメニューを考えているはずだ。

ガルドはいつの間にかグルンベルグ軍を指揮するまでに成長をしていたのだった。

それは私としてもグルンベルグ軍としてもありがたいことなのだろう。

ラクレスは終始、満足気にガルドの様子を見ていた。

この戦いが終わるころにはラクレスの腹も決まっているかもしれない。

ダゼル国王に進言してガルドを騎士団長に命名するはずだ。

そんなことを考えているとガルドが奥義で締めくくった。


「これで終わりにしてやるぜ。奥義『大車輪!』」


ガルドは高く飛び上がると大剣を垂直に立てて体を高速回転させる。

そして大車輪の如く、魔獣ヒュドラの首を根元を捉える。

激しい血飛沫を上げながら魔獣ヒュドラの首が捥げ落ちて行った。


「よし、これであと4つ!」





戦いは首取り合戦の様相に呈して来たようだ。

三軍とも必殺技を駆使して魔獣ヒュドラの首を捥ぎ取って行く。

どの軍がたくさん取れるか競い合ってさえいる始末。

それはそれで私達、人間達に有利な展開になったことを表している。

魔獣ヒュドラはプリムの聖女の力を受けて身動き一つとれずにいる。

聖女の力が尽きる前に首を狩り取れれば私達の勝ちだ。


「ガルド。根こそぎ魔獣ヒュドラの首を狩るんだ!」

「もちろん最初からそのつもりだ!お前ら、遅れをとるなよ!」

「はい、先生!どこまでもついて行きます!」


ガルド達騎士団は再び攻撃を再開する。

もちろん決める技は手慣れた『100連爆裂剣』。

レイム達もはじめからわかっているようで手際が良くなっている。

再びリズム良い爆裂音が響き渡ると魔獣ヒュドラの首が捥げはじめた。

そこへ攻撃を仕掛けて来たのはマリア―ヌ。

ガルド達の手柄を盗み取るかのように奥義『紫電一閃』を放った。


「おい、マリア―ヌ。それは俺達の獲物だぞ!」

「早い者勝ちだ」

「やろう、ふざけやがって。よし、俺達も奴らの手柄を横取りするんだ!」


ガルドの指示を受けてグルンベルグ軍の騎士団がヴェズベルト軍の戦域まで侵攻しはじめる。

そして戦いは混戦模様へと色を変えて行く。

両軍入り乱れての戦いにグランは引き気味で眺めている。


「何をしているんだ、あいつ等は?まだ、勝った訳じゃないんだぞ」


あいつ等に付き合ってはいられない。

アルタイル軍の力を見せつけるためにもひとつでも多くの首を取るのだ。


「我々は我々の戦い方で首を捥ぎ取る!突撃!」


グランは再び騎士団を鼓舞すると魔獣ヒュドラに『雷虎招来』を放つ。

続くようにアルタイル軍の騎士達が『雷神剣』で繋げる。

それの繰り返しで魔獣ヒュドラの7つ目の首を捥ぎ取った。


「残るは2つだ!」


すると、混戦を続けていたガルド達の様子が一転する。


「不味い。アルタイル軍に並ばれた。このままでは負ける。残り2つは俺達が取るんだ!」

「そうはさせんぞ、ガルド。残り2つを取るのは私達、ヴェズベルト軍だ!」

「早い者勝ちだよ。ルーン、『チャクラ』を頼む!」

「ガルド、勝手なことを言って戦術を乱すな。次はラクレスの番だ!」

「みみっちいこと言うなよ、タクト。残り2つなんだぜ」


ガルドを褒めたのは間違いだったようだ。

まだガルドは戦術の意味が伝わり切れていない。

今は優勢をとっているが、いつ覆るかもわからない。

プリムの『聖女の力』が尽きれば、そこでアウトだ。

魔獣ヒュドラは再生をして復活してしまうだろう。

その前に確実に魔獣ヒュドラを殲滅しなければならない。

それが一番の戦術目標なのだ。

私はガルド達を下がらせてラクレスに指示を出した。


「ラクレス。確実に魔獣ヒュドラの首を狩ってくれ!」

「承知した。あと一息だ。抜かりなく行くぞ!」


ラクレスが槍部隊を鼓舞すると士気が一気に高まる。

そして再び魔獣ヒュドラに向けて奥義『次元裂波』を放った。

続くようにグルンベルグ軍の槍部隊が『水渦衝』を。

その太刀筋は鮮やかで連撃とも呼べるほどリズミカルに繋がって行った。

ガルド達の『100連爆裂剣』に匹敵するような破壊力だ。

刺突を繰り出す分、ガルド達よりも深く抉って行く。

一撃で骨まで辿り着き粉々に粉砕する様は見事と言うようしかなかった。


「残るはあと1つ」


ガルド達は目をギラつかせながらお互いをけん制しあう。

そしてプリ―スト達に『チャクラ』をかけさせて準備を終える。

最初に火ぶたを切ったのはガルドだった。


「最後を取るのは俺達だ!グルンベルグ軍の底力を見せつけてやるぞ!」


ガルドはグルンベルグ軍の騎士達を鼓舞すると魔獣ヒュドラに向かって行く。

同時にマリアーヌもヴェズベルト軍の騎馬隊に指示を与えた。


「グルンベルグ軍に先を越されたらヴェズベルト軍の恥を晒すようなものだ。奴らより先に首を取るぞ!」


マリア―ヌの合図でヴェズベルト軍の騎馬隊が一斉に魔獣ヒュドラに立ち向かって行く。

両軍が混戦模様を極める中でひとり冷静だったのはグランだった。

まともにやり合っても両軍に勝つことは皆無。

なので両軍が魔獣ヒュドラの首を狩る寸前で突入して勝ちを取る作戦に転じたのだ。

グランの思惑は功を奏したようでガルド達が魔獣ヒュドラの首を取る寸前で横取りをした。

ガルド達は頻りにグランを非難していたが勝負とはそう言うものである。

正々堂々と戦おうが、姑息な手段をとろうが勝ちをとった者が勝利するのだ。


「畜生。あの野郎、俺の手柄を横取りしやがって」

「ガルド。これでわかったろ?戦いには戦術が必要なことを」

「それにしてもよ、タクト。あれはないんじゃないのか?」

「いいや、アルタイル軍の勝利だ」


縋るように訴えて来るガルドに対して私は首を横に振って答えた。

これで魔獣ヒュドラの首は根こそぎ狩ることが出来た。

すでに魔獣ヒュドラは魔獣とも思えぬ姿になり果てている。

しかし、これで魔獣ヒュドラを討ち取った訳ではない。

とどめを刺さなければまた再生されてしまうだろう。

肉片も残すことなく消滅させなければならない。

私は3軍の魔術師達に指示を出して最上級魔法『エクスプロード』を放たせた。

さすがに3軍の魔術師1万1000名が一斉に放った魔法だけあって魔獣ヒュドラは跡形もく消え去った。

そして私達は勝利を収めることになったのだ。

それは歴史的に見ても希な戦いであったことは間違いない。

先の聖戦でも成しえなかったことを成しえたのだから。


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