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155「魔獣キマイラ戦②」

ナスカ渓谷ではすでに本部隊が陣形を組んで待っていた。

谷底にはプリシア率いる砲撃隊1000名が移動式大砲と高粒子砲を構えている。

両崖上には魔術師部隊1000名とプリ―スト部隊2000名、それに騎士団2000名と弓部隊1000名。

槍部隊1000名は残りの魔術師部隊1000名と共に砲撃隊の後ろに陣取っている。

弓部隊は急きょ配備されることが決まったのだ。


「おとり部隊がやって来たぞ!」

「タクト!こっちこっち!」


目に止まるぐらいまで魔獣キマイラが近づいて来ると本部隊に緊張が走る。

プリシアは相変わらずのテンションで手を振りながら私を呼んでいた。

私達、おとり部隊は魔獣キマイラを爆破ポイントまで誘導すると急いで砲撃隊の後方へ撤退する。


「よし、第二段階の開始だ!プリシア、崖を崩してくれ!」

「待ってました。みんな両脇の崖を目掛けて撃つのよ」


プリシアは砲撃手達に確認をとると右手を空に掲げる。

そして、


「それじゃあ、やっちゃって!」


プリシア語録で砲撃の合図を送った。

砲撃手達は一瞬戸惑うがプリシアの合図に遅れて崖を目掛けて砲弾を放った。

砲弾は狙い通り崖に直撃して大量の土砂を谷底へ落として行く。

魔獣キマイラは大量の土砂に埋もれて、動きを鈍らせた。


「よし、狙い通りだ。次は高粒子砲だ」


私が合図を送ると高粒子砲が前に出される。

その後ろに魔術師撃部隊1000名が構える。

試射式とは違い魔力を注ぐ魔術師を10倍の1000名に拡大させた。

確実に魔獣キマイラに大ダメージを与えるために配備したのだ。

しかし、開発者のひとりであるデルマトは不安を抱いていた。

それは高粒子砲が高出力に耐えうるか懐疑的だったのだ。

まあ、10倍にまで魔術師を増やしたのだから無理もないのだが。


「照準を魔獣キマイラに合わせろ!」


プリシアは照準器を覗きながら砲撃手達に合図を送る。

高粒子砲は巨大なため砲身に照準器は着いていない。

なので別途、用意した照準器で照準を合わせなければならないのだ。

狙いが遠ければ遠いほど緻密な照準合わせが必要になる。

そのためプリシアは砲撃手達に細かく指示を出していた。

そして高粒子砲に魔力が集中されて行くと砲身の中がオレンジ色に輝き出す。

魔力が太陽石を通して魔水晶に収束され魔水晶の中でエネルギーが圧縮されはじめた。


「もう、いいだろう。よし、放て!」


私が右手を振り下ろすと同時に高粒子砲のエネルギーが解放される。

それはオレンジ色の閃光となりて魔獣キマイラ目がけて駆け抜けて行く。

音速を越える光の速さで飛んで行った閃光は魔獣キマイラの左肩を貫いて左肩をえぐり取った。

左肩は丸く穴の開いた状態になり左側の龍は跡形もなく消え去っていた。

その様子を見てグルンベルグ軍から歓声が巻き起こる。


「やったぞ!直撃だ!」

「高粒子砲、すげーぜ!」

「これなら魔獣キマイラも恐るるに足りずだ!」


想像以上の威力に開いた口が塞がらない。

試射式の時でも強力だと思っていたが、その何十倍もの破壊力だ。

これならば魔獣が何体襲って来ても大丈夫と言うもの。

興奮冷めやらぬ私に対してプリシアが思わぬことを叫んだ。


「ちょっとタクト。それは私の役目でしょ。勝手にやらないでよ。次は私が合図をするからね!」


しょうもないことでムキになるプリシア。

この状況を目の当たりにしても動じていないのはある意味羨ましいが。

反対を言えば呑気なのだろう。

すると、魔獣キマイラが暴れ出して土砂を跳ね除けて行く。

あの暴れようからすると、思っていた以上の大ダメージのようだ。


「コレホドノチカラヲモツトハ。センメツシナケレバナラナイヨウダ」


魔獣キマイラは獅子の口を大きく開きエネルギーを収束させて行く。


「マズイ。高粒子砲だ!みんな散会して非難せよ!」

「非難って言ったってどこに逃げればいいのよ」


両脇は高い崖に覆われていて逃げ道はない。

後方に逃げるにしても高粒子砲の的になってしまう。

こちらの高粒子砲で迎え撃つこともできるが、冷却時間がかかり過ぎてしまう。

それにプロテクションで防ぎようものならばプロテクションごと消滅してしまうだろう。

手の打ちようがない。


「仕方がない。エリザ、グレイブで魔獣キマイラに攻撃しろ!」

「そんな下級魔法でどうなうっていうの?」

「ダメージを与えることが目的ではない。高粒子砲の軌道を変えることが目的だ。魔獣キマイラの前足目がけて魔法を放て!」

「もう、知らないからね!」


エリザはブツクサ文句を言いながら魔術師300名達と魔法の詠唱に入る。

その間に魔獣キマイラは高粒子砲のエネルギーを圧縮させて溜め込んで行く。


「俺達は何をしたらいい?」

「反撃のための準備をしておいてくれ」


今はそう言っておくしかほかない。

まずは確実に高粒子脳の軌道を変えることに全力を注がなければならない。

万が一にも軌道を変えられなければ私達は消滅してしまうだろう。

そしてエリザ達の魔法の詠唱が終わるとグレイブの魔法を放った。


「「古の大地に眠りし命、漆黒の剣となりて、かの者を貫け『グレイブ!』」」


魔獣キマイラの足元に橙色の巨大な魔法陣が浮かび上がる。

魔法陣の中から剣と化した岩石の槍が出て来ると魔獣キマイラの前足を押し上げる。

高粒子砲の軌道は若干上に持ち上げられる。

そして次の瞬間、魔獣キマイラは高粒子砲を放った。

オレンジ色の閃光が私達に向かって駆けて来る。

私達は思わず地面に伏せて高粒子砲から逃れる。

高粒子砲は私達の頭上を駆け抜けて行き後ろの崖に直撃して崖を吹き飛ばした。

後を振り返ると崖が丸くくり抜かれたように抉れていて向こうの空が見えていた。


「何とかかわせたようだな」

「死ぬかと思ったぜ」


これで魔獣キマイラもしばらくの間は高粒子砲を放てないだろう。

こちらの高粒子砲もしばらくの間、冷却時間が必要だ。

後はどう料理して行くかだ。

私はすぐさま次の戦術を考える。

まずは魔獣キマイラの動きを封じることが必要だ。

大ダメージを与えたからと言って、まだその強さは健在だからな。

ならばグラシスの魔法で動きを封じこめるのが無難だろう。

下級魔法だから詠唱時間も短いし、こちらにはプリ―スト2000名もいるのだ。

1×2000倍のグラシスならば魔獣キマイラとて打ち破ることは出来ないだろう。

その役割は崖上で待機しているプリ―スト2000名に任せよう。


次いで、プリシア率いる砲撃手達に酸倍弾を放ってもらう。

酸倍弾で魔獣キマイラの防御力を落とさせる。

あいにく移動式大砲は200砲もある。

200発も酸倍弾を放てば魔獣キマイラとてただでは済まないだろう。

ちなみに1砲あたりに砲撃手5人が担当している。


そしたら総攻撃だ。

ガルド率いる騎士団1000名とラクレス率いる槍部隊1000名は地上から。

崖上の騎士団2000名と弓部隊1000名は崖上から攻撃を仕掛ける。

崖上にいる魔術師1000名には土魔法の最上級魔法デモンズハンドを放ってもらう。

デモンズハンドは大地から伸びる巨人の手で相手を握り潰す魔法だ。

比較的、狭窄地でも安全に放てると言う特徴がある。

エクスプロードなら間違いなく両側の崖を崩壊させてしまうだろう。

谷底にいる魔術師1000名達は次の高粒子砲のために待機していてもらう。

それとルーン率いるプリ―スト300名は怪我人の治療にあたらせる予定だ。


「よし、プリ―スト!グラシスの魔法で魔獣キマイラの動きを止めよ!」


私が右手を掲げて振り下ろすと崖上で待機していたプリ―スト部隊が一斉に魔法の詠唱に入る。

すると、魔獣キマイラが崖上にいる部隊に気づき双頭の龍で毒ガス攻撃を仕掛けて来る。

しかし、崖は100メートルほどの高さがあり魔獣キマイラの攻撃が届かない。

私がナスカ渓谷を戦場に選んだのは、こう言う場合を想定していたからだ。

魔獣キマイラは50メートルほどの巨体ではあるが、どんなに首を伸ばしても100メートルまでは届かない。

せいぜい伸ばしきれても80メートル程度だ。

攻撃が届かなければ怖いものはない。

こちらが一方的に攻撃を仕掛けることが出来るのだ。


「「大地よりい出し伊吹よ、漆黒の鎖となりて、かの者を絞殺せ『グラシス!』」」


崖上のプリ―スト2000名が詠唱を終えるとグラシスの魔法を放った。

白銀色の巨大な魔法陣から緑色の大きなツタが伸びて来る。

そして魔獣キマイラの体に絡みつきキツク締め上げた。


「よし、次はプリシアだ!魔獣キマイラに向かって酸倍弾を放て!」

「みんな準備はいいわね。行-くよ!」


プリシアが腕を振り下ろすと同時に砲撃手達が一斉に酸倍弾を放つ。

砲弾は揺るやな弧を描きながら魔獣キマイラに向かって飛んで行く。

そして魔獣キマイラに着弾すると大量の酸を放って硬い鱗を溶かす。

ジュワジュワと白い煙を上げながら魔獣キマイラの鱗は爛れた。


「戦いの準備は整った。ガルド、総攻撃だ!」

「おうよ。この時を待っていたぜ。今度こそ100連爆裂剣を決めてやる!」


ガルドはレイム達騎士団1000名を連れながら魔獣キマイラに向かって駆けて行く。

同時に崖上で待機していた騎士団2000名も崖を駆け降りる。

弓部隊1000名はその場から一斉に爆弾付きの矢を放った。

弓部隊が放った矢は魔獣キマイラに着弾すると爆発を起こす。

威力はさほどでもないが、けん制攻撃には向いているようだ。


「さすがは策士タクトだな。我がグルンベルグ軍の底力を見せつけてやるぞ!」


ラクレスは私を見てニヤリと笑うと槍部隊1000名を率いて魔獣キマイラ目がけて駆けて行った。

魔獣キマイラは炎と毒ガスを吐きながら必死に応戦する。

しかし、グラシスの魔法が利いていて思うように動けないでいる。

そこへガルド達騎士団が100連爆裂剣を放つ。


「決めるぜ『100連爆裂剣!』」


ガルドは高く飛び上がり魔獣キマイラに向かって爆裂剣を放つ。

間髪入れずにレイムが続き、残りの騎士達もレイムに続いた。

爆裂剣は連撃の如く魔獣キマイラを襲う。

その度に爆炎が巻き起こり魔獣キマイラを包み込んで行った。


「爆裂剣!爆裂剣!爆裂剣!……」


騎士達の爆裂剣を放つ叫び声が絶え間なく続いて行く。

魔獣キマイラも動きを封じられているためロクな反撃も出来ずされるがままになっている。

これなら今度こそ100連までつなげられることが出来そうだ。

一方でラクレスはガルド達とは反対の方向へ回り込み攻撃を仕掛ける。


「グルンベルグ軍の神髄を見せてやる。奥義『次元裂波!』」


ラクレスが槍を構えると槍先を囲うように覇気の波が生まれはじめる。

そして刺突を加えると同時に覇気は渦となって魔獣キマイラの肉を抉り出した。

続くように槍兵がラクレスの傷つけた痕に水渦衝を放つ。

それはガルド達の100連爆裂剣のように連続で刺突を放って行った。

元祖、100連爆裂剣と言ったところだろうか。

その様子を見ていたガルドが悔し気な顔を浮かべていた。

結局、ガルド達の100連爆裂剣は70止まりだった。

100連続で爆裂剣を繋げるのは思う以上に難しことなのだろう。

みんなでリズムもタイミングも合わせることは容易ではない。

意志を統一していても、どんなに訓練を重ねてもうまく行くとは限らないのだ。

一方でラクレス達の動きには無駄がない。

突いてから引き抜くと言う手間がかかるのにも関わらす、あっさりと連続攻撃をやってのけていたのだ。

さすがに100連とまでは行かなかったが30は続いていただろうか。

魔獣キマイラの右足に大きな穴を開けるまでに至っていた。


「おいおい、なんであいつ等、簡単にやってのけるんだ。100連爆裂剣は俺達のものだろ」

「これがグルンベルグ軍の神髄だからですよ。グルンベルグ軍はもともと単独攻撃よりも連携攻撃が得意な部隊ですから。連続攻撃なんてお手の物ですよ」

「レイム、お前、嬉しそうじゃないか?奴らに先を越されているんだぞ。喜ぶ奴があるか!」


ガルドの叱責にレイムは顔をしかめる。

ついつい浮かれてしまって、うっかり本音を話してしまったようだ。

まあ、レイムはガルドとは違って根っからのグルンベルグ軍の騎士だ。

味方の功績ほど嬉しいものはないだろう。

ガルドはまだまだグルンベルグ軍に染まる必要があるようだ。

すると、不意をついて魔獣キマイラの双頭の龍が毒ガスで反撃をして来た。

背後をとられるように騎士団の一部が毒ガスに包まれる。

そして毒にやられて咳き込みながら激しく悶えはじめた。


「ゲホゲホ、く、苦しい……」

「怪我人を引き上げらせろ!ルーン達は怪我人の治療だ!」


傍にいた騎士達が怪我人を引きずりながら後退して行く。

ガルド達は魔獣キマイラの注意をそらすために攻撃を仕掛ける。

崖の上からも弓部隊が援護射撃を送る。

その間に怪我人を安全圏まで運び終えた。

ルーン達プリ―ストはすぐさま魔法の詠唱に入りキュアとアンチデットを同時にかける。

怪我人30名に対しプリ―ストは10倍の300名。

すぐに治療は終わり騎士は戦えるまで回復していた。


「回復が終わったら攻撃を再開せよ!」


少しでも戦力を上げるため怪我人でも回復したら戦場へ戻す。

それは対魔獣戦だからと言うことではない。

対人間戦でも同じこと。

犠牲による戦力の減少は戦況をひっくり返すぐらい大きなことに繋がる。

だから、回復を終えたら、すぐにでも戦場へ戻らせる必要があるのだ。

魔獣キマイラの反撃は続き、次々と怪我人の数が増えて行く。

その度に一時退却させて回復に専念させる。

そして回復が終わると再び戦場へと向かわせるのだった。

そうこうしているうちに魔術師達の詠唱が終わりデモンズハンドを放つ。


「「冥界より生まれし、破邪なる覇王、漆黒の瞳は深淵で、その力は大地の怒り『デモンズハンド!』」」


魔獣キマイラの足元に橙色の巨大な魔法陣が浮かび上がる。

その中から巨大な右手が這い出て来ると魔獣キマイラを鷲掴みにする。

指先にまで青筋を立てながら右手に渾身の力が込められた。

魔獣キマイラは唸り声を上げながら、体からはギシギシと鈍い音が出はじめる。

デモンズハンドに付属する効果はないが一時的に動きを止められる。

ガルド達はここぞとばかりに攻撃を仕掛けた。

今度こそ100連爆裂剣を決めるつもりのようだ。

攻撃を仕掛ける前にレイム達に気合を入れ直していた。

一方で冷静なラクレスは先ほど穴を開けた傷跡を広げるかのように必殺技を放っている。

同じように槍部隊達もラクレスに続いて水渦衝を連続で放っていた。

さすがはラクレスだ。

戦いのポイントを抑えている。

地道な作戦だが蓄積されて行くと大きな効果が期待出来るのだ。

ガルドはと言うと100連爆裂剣にこだわるあまり攻撃を一ヶ所に集中させていなかった。

その為、魔獣キマイラのダメージも僅かばかりだった。

私はすぐさまガルドに指示を出す。


「ガルド!攻撃を左足の一点に集中させろ!前につけた傷跡がある!」

「わかってるよ!それよりこっちは大変なんだ!100連爆裂剣を成功させなければな!」

「何をしょうもないことにこだわっているんだ!今は戦闘中だぞ!」


私の声も虚しくガルド達は100連爆裂剣にこだわっていた。


「頑固者のガルドに何を言っても無駄よ。それより次の準備が出来たよ」

「高粒子砲の二射目が撃てるんだな?」

「十分に冷却出来ているから大丈夫よ」

「なら、高粒子砲の発射の準備に取り掛かってくれ」

「今度は私が合図をするからね」


プリシアは砲撃手達に指示を出して高粒子砲を移動させる。

丁度、魔獣キマイラに照準が合うような位置に動かす必要があるのだ。

エリザ達魔術師達も手伝って高粒子砲を狙いの場所まで運んだ。

そしてプリシアが照準器を使って狙いを定める。

今度は魔獣キマイラの胴体に直撃するような角度に微調整。


「タクト。狙いは定まったわ」

「よし、エリザ。魔力を注ぎ込んでくれ」

「今度こそ、仕留めてあげるわ」


エリザ達魔術師1000名は高粒子砲に魔力を注ぎはじめる。

二射目と言うこともあり手慣れて来た感じだ。

今はデモンズハンドの効果で魔獣キマイラの動きが止まっている。

ここでガルド達を撤退させて発射の準備を整える。

そして追い打ちをかけるようにグラシスで再び動きを止める。

そこへ高粒子砲だ。

次で仕留められるだろう。

私はガルド達に撤退命令を出した。


「騎士団および槍部隊は安全圏内まで撤退せよ!」


と。


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