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154「魔獣キマイラ戦①」

サミトスの街へ到着すると誰もがその光景に驚愕を覚えた。

街が半壊して燃え盛っている。

半壊と言う表現よりもこっそりと削り取られたと言った方が正しいだろうか。

魔獣キマイラが街を壊しながら進んで行ったようだ。

街の中には住民が死体となって転がっている。

生存者はおらずゴーストタウンと化していた。


「これは酷い……」

「暴れ猿に襲撃された時の比じゃないな」


エリザ達は街の光景に青い顔をしながら震え出す。

ガルドは辺りを見回しながら生存者がいないか確かめていた。


「これではサミトスの街を復興させることは難しくなったな」

「これだけ破壊されていれば無理もない」


生存者がいれば復興も夢ではないが、その生存者もいない。

魔獣キマイラによって全滅させられていたのだ。

街の護衛に回っていた兵士もみな殺されている。

このまま魔獣キマイラの暴走を許せば他の街も崩壊させられるだろう。

今はいち早く魔獣キマイラの動向を掴んで作戦を実行するべきだ。


「策士タクトよ、迷っている暇はないようだ」

「魔獣キマイラの後を追おう」


私達はサミトスの街をそのままに魔獣キマイラが残して行った跡を辿って行った。

魔獣キマイラはそれほど遠くまで行っておらずすぐにその姿を捉えることが出来た。

魔獣キマイラはグルンベルグ王都へ向けて直進している。

私達は大きく回り込んで魔獣キマイラの前に立ちはだかった。


「よし、魔獣キマイラ誘導作戦を実行する!」


作戦通り部隊は3つに分かれ散会して行く。

まずは第一部隊の騎士団300名が前衛に立ち並ぶ。

その背後にプリ―スト100名と魔術師100名が構える。

まずは最初はプリ―ストのプロテクションの展開だ。


「よし、ルーン。プロテクションを頼む!」

「わかりましたわ。みなさん行きましょう」


ルーン達プリ―ストは両手を胸の前で組み魔法の詠唱に入る。


「次いでエリザ。ドラゴンブレスを頼む!」

「任せておいて。みんな行くわよ」


エリザ達魔術師達は両手を前に突き出すと魔法の詠唱に入る。


「ガルド!エリザ達の魔法の詠唱が終わるまで時間を稼いでくれ!」

「おうよ!みんな行くぞ!」


ガルドを先頭に騎士団300名が魔獣キマイラに向かって駆けて行く。

すると、魔獣キマイラが先手を討って攻撃して来た。

獅子の頭は口から炎を吐き出し、双頭の龍は口から毒ガスを吐き出して威嚇する。

ガルド達はすぐさま足を止めて炎と毒ガスをやり過ごす。


「これじゃあ近づけないぜ」

「ガルド無理はするな。時間を稼ぐだけでいい」

「って言ってもな。やられっぱなしじゃ癪に障る。一発お見舞いしないと気が済まないぜ」


魔獣キマイラの攻撃の隙をみてガルドが奥義を放つ。


「好きにさせておけるかよ。食らえ!『大車輪!』」


ガルドは高く飛び上がると剣を突き立てて体を高速回転させる。

そして、そのままの勢いで魔獣キマイラに切りかかった。

ガルドの一撃は魔獣キマイラの双頭の龍の首を捉える。

しかし、硬い鱗に阻まれて弾き飛ばされた。


「畜生。やっぱり硬いぜ」

「先生、ここは100連爆裂剣の出番では?」

「そうだな。やってやるか」

「はい」


ガルドは立ち上がると騎士団へ向かって言い放つ。


「100連爆裂剣をお見舞いするぞ。準備はいいな!」


レイム達騎士団は剣を掲げて応える。

すると、ガルドを先頭に騎士団が一列に並び魔獣キマイラへ向かって行った。


「行くぜ!『100連爆裂剣!』」


ガルドが魔獣キマイラの左足を目掛けて爆裂剣を放つ。

次いで間髪入れずにレイム達が爆裂剣を次々に放って行く。

それは一筋の川のような光景で爆炎が絶えず湧き上がった。

いわゆる爆裂剣の連続技。

それも数回ではなく数十にも至る。

100連爆裂剣が30まで続いた時、双頭の龍が毒ガスを吐きながら襲って来た。

ガルド達は素早く散会して攻撃をかわす。


「畜生。30までしか行かなかった」


ガルドは悔しがっていたが魔獣キマイラの左足には斬撃の痕がはっきりと残っていた。

これは効いている。

酸倍弾を使わなくてもダメージを与えられるだけの破壊力はあるようだ。

すると、ルーン達が詠唱を終えプロテクションを放つ。


「「天より降り注ぎし光、星光の束となりて、かの者を守らん『プロテクション!』」」


ガルド達の足元に金色の魔法陣が浮かび上がると光の壁が競り立って行く。

それは幾重にも重なり強度を高めて行った。


「よし、ガルド後退だ!プロテクションの中まで入るんだ!」

「もう、終わりか。みんな後退だ!」


ガルド達は前線から引き上げてプロテクションの内側まで後退して来る。

それを負うかのように魔獣キマイラが炎と毒ガスを吐き出して来た。

しかし、プロテクションに阻まれて攻撃が届かない。

次いでエリザ達が魔法の詠唱を終える。


「「古より戻りし蒼き龍、時の川を遡りて、空間の海を渡る、その力で永遠の約束を『ドラゴンブレス!』」」


魔獣キマイラの足元に青い巨大な魔法陣が浮かび上がると空が雲が立ち込める。

そして雲の切れ間から青いドラゴンが顔を出して冷たい吐息を吹きかけた。

一瞬で魔獣キマイラは氷像と化す。

それを確認してから私は全部隊に指示を出した。


「全軍後退せよ!」


私の合図で全部隊が離れた場所まで後退をはじめる。

そして第一部隊と入れ替わるように第二部隊が前衛に出て隊列を整えた。

魔獣キマイラはしばしの沈黙の後、氷を破壊して再び動きはじめる。

そして狙い通り私達がいる場所まで近づいて来た。


「狙い通り魔獣キマイラが釣れたぞ。第二部隊、戦闘体制をとれ!」


第一部隊と同じように第二部隊の騎士団300名が前衛に。

その後ろにプリ―スト100名と魔術師100名が並ぶ。

そして先ほどと同じようにプリ―スト達と魔術師達が魔法の詠唱に入ると騎士団が時間を稼ぎに行った。

ガルドと言うリーダーがいないので100連爆裂剣は放てないが普通の爆裂剣は使いこなしていた。

それでも魔獣キマイラにダメージは与えることは出来ない。

硬い装甲に阻まれて弾かれてしまうだけだった。

魔獣キマイラも対抗するように炎と毒ガスで応戦して来る。

その度に騎士団は散会して攻撃をかわしていた。

しかし、直撃こそ交わしているが毒ガスの影響で疲弊しはじめている。


「怪我を負った者は速やかに後退せよ!プリ―ストの回復を受けるんだ!」


私の合図で怪我人が前線から離脱して後退して行く。

タイミングよくプリ―ストの詠唱が終わりプロテクションが築かれる。

すると、前線にいた騎士団も後退してプロテクションの中に入った。

怪我人は待機している部隊のプリ―スト達から回復魔法を受けている。

そして魔術師達の詠唱が終わるとドラゴンブレスを放った。

再び魔獣キマイラは氷像と化し沈黙をする。

それを確認してから全部隊を後退させた。

先ほどと同じ要領で魔獣キマイラを誘導するように距離をとる。

魔獣キマイラは氷を破壊して私達の所へ近づいて来た。


「よし、次は第三部隊、戦闘体制をとれ!」


第三部隊の騎士団300名が前衛に。

プリ―スト100名と魔術師100名が後衛に隊列を組む。

そして騎士団の攻撃。

プリ―ストのプロテクション。

魔術師のドラゴンブレスで魔獣キマイラを翻弄していった。

同じことが3度も続くと魔獣キマイラもこちらの意図に気づいたようで追撃するのを止めた。


「あいつ、動かないぞ」

「こちらの作戦に気づいたようだ」

「どうするの?」

「このまま作戦は続行する。ただ、攻撃パターンを変えてみよう」


まずはプリ―スト達にアシットレインを放たせ魔獣キマイラの防御力を落とす。

そして騎士団の攻撃でダメージを与える。

同時に魔術師達にアースクエイクを放たせ足元を崩すのだ。

その隙に部隊を後退させる。

攻撃パターンが変われば魔獣キマイラも混乱するだろう。


「第一部隊、戦闘体制をとれ!」


第三部隊と入れ替わって第一部隊が前衛に出る。

そして騎士団300名を前衛にプリ―スト100名、魔術師100名と後衛に並ぶ。


「まずはルーン。アシットレインで魔獣キマイラの防御力を落としてくれ!」

「今度はアシットレインですね」


ルーン達プリ―ストは魔法の詠唱に入るとアシットレインを放った。


「「大いなる大地に降り注ぐ雨よ、蒼き酸の飛礫となりて、かの者を洗い流せ『アシットレイン!』」」


魔獣キマイラの足元に白銀色の巨大な魔法陣が浮かび上がると空が鈍色の雲で覆われる。

そして雲の中から酸の雨が土砂降りとなって降り注いだ。

魔獣キマイラの鱗は酸の雨を受けて白い煙を上げながら溶けて行く。


「ガルド!魔獣キマイラに総攻撃だ!」

「今度こそ100連爆裂剣を決めてやるぜ」


ガルドを先頭にレイム達騎士団が一列に並んで魔獣キマイラに突っ込んで行く。


「食らいやがれ『100連爆裂剣!』」


ガルドは先ほどつけた魔獣キマイラの左足の斬撃の痕目がけて爆裂剣を放つ。

入れ替わるようにレイムが爆裂剣を放ち、次々と爆裂剣を連発して行った。

今度は先ほどよりもリズムよく爆裂剣が続いている。

しかし、魔獣キマイラが再び炎と毒ガスで応戦して来た。

100連爆裂剣は50まで続いた。

アシットレインのおかげで斬撃の痕は深くなっている。

ガルド達は散会して前線から後退をはじめる。

同時にエリザ達の詠唱が終わりアースクエイクを放った。


「「深淵より蘇りし紅の、大地を胎動する血液は、この惑星の核成り『アースクエイク!』」」


魔獣キマイラの足元に橙色の巨大な魔法陣が浮かび上がると大地が激しく揺れ出す。

そして大きな地割れを起こしながら魔獣キマイラの足元を崩した。

魔獣キマイラはバランスを崩してその場に膝まづく。

その隙を見て全部隊を後退させた。

魔獣キマイラは崩壊した大地の中から立ち上がると私達向けて突進して来た。


「おいおい、こんなの聞いてないぜ」


私達はすぐさま散会して魔獣キマイラをやり過ごす。

しかし、そのせいで隊列が大きく崩れてしまった。


「どうするの、タクト。部隊がぐちゃぐちゃよ」

「後退をして体制を整える。全軍、撤退せよ!」


あくまで魔獣キマイラを誘導することが目的だ。

まずは体制を立て直して作戦を続行させる。

私達は魔獣キマイラから距離をとって隊列を組み直した。

あいにくまだ犠牲者が出ていないことが幸いだ。

このまま攻撃パターンを組み直して攻撃して行けば魔獣キマイラを誘導できるはず。

しかし、先ほどの反撃のように予想してない行動をとることもありえる。

反撃を予想した攻撃パターンを考える必要があるのだ。


「第二部隊、戦闘体制をとれ!」


先ほどと同じ要領で第二部隊が攻撃をはじめる。

まず、プリ―ストがアシットレインを放ち、騎士団が爆裂剣を放つ。

そして最後は魔術師達がアースクエイクを放ち、部隊を後退させる。

魔獣キマイラは体制を立て直しながら距離を縮めて来た。

第三部隊も同じ要領で攻撃と後退をし魔獣キマイラを誘導した。


次はグラシスで動きを封じつつ騎士団の攻撃を加える。

そしてインテグニションで麻痺させる攻撃パターンだ。

これならば安全に全部隊を後退させられる。


「第一部隊、戦闘体制をとれ!」


第三部隊と入れ代り第一部隊が前線に出る。

騎士団が前列に並び、プリ―ストと魔術師達が後列に並ぶ。


「ルーン、グラシスの魔法で魔獣キマイラの動きを封じこめろ!」


ルーン達プリ―ストは魔法の詠唱に入り、グラシスの魔法を放つ。


「「大地よりい出し伊吹よ、漆黒の鎖となりて、かの者を絞殺せ『グラシス!』」」


魔獣キマイラの足元に白銀色の巨大な魔法陣が浮かび上がると太いツタが伸びて来る。

そして魔獣キマイラに絡みつくとキツク締め上げた。

魔獣キマイラは暴れ回るが、暴れれば暴れるほどツタは絡みついて行く。


「ガルド、任せたぞ!」

「おし、100連爆裂剣だ!」


ガルドはレイム達に合図をすると一列になって魔獣キマイラに突っ込んで行く。


「食らいやがれ『100連爆裂剣!』」


まずはガルドが先頭を切って爆裂剣を放つ。

次いでレイムが爆裂剣を放ち、入れ代るように次の騎士が爆裂剣を放つ。

3度もやれば慣れて来たようでリズムよく爆裂剣を連続で放っている。

爆裂剣は魔獣キマイラの左足を捉えて激しく爆炎を巻き上がらせた。

ガルド達は続けて同じ場所に爆裂剣を放っていたので魔獣キマイラの左足に大きな斬撃の痕が残っている。

ちりも積もれば山となるではないが堅牢な装甲を持つ魔獣キマイラには効果的な攻撃方法だった。

続くようにエリザ達魔術師がインテグニションを放つ。


「「暗黒の冥界に走りし閃光、天を裂く轟音と共に、その紫電の雷で大地を貫け『インテグニション!』」」


魔獣キマイラの足元に黄色い巨大な魔法陣が浮かび上がると空に鈍色の雲が立ち込める。

それは青い稲光を走らせながらゴゴゴと体の芯まで震えるような鈍い音を轟かせる。

そして一瞬、空が明るくなると同時に無数の稲妻が魔獣キマイラの体を貫いた。

白い煙を立ち昇らせている魔獣キマイラは麻痺していて動かない。

それを確認すると私は全部隊を後退させた。


攻撃、後退、攻撃、後退を繰り返しながら魔獣キマイラをナスカ渓谷へと誘導して行く。

もちろん攻撃パターンを変えて魔獣キマイラにこちらの意図を読み取られないようにするのも忘れない。

時たま魔獣キマイラは不意を突くような反撃をして来て犠牲者を増やしたのだが。

そう言う場合は後ろに控えているプリ―スト達の回復魔法で対応させた。

その素早い判断で死亡者は出さずにすんだ。

戦術は思いのほかうまく行き、今ではリズムよく行えるにまで至っていた。

しかし、ガルド達の100連爆裂剣は最後まで成功しなかった。

まあ、100連も爆裂剣を繋げるなんて時間もかかるし無謀とも言える。

大抵は魔獣キマイラの反撃によって阻まれてしまっていたのだ。

ガルドは終始、悔しそうにしていたが魔獣キマイラのダメージは蓄積されて行った。

その証拠に魔獣キマイラの左足は抉れ、大きな斬撃の痕が残っていた。


そして私達は作戦通り魔獣キマイラをナスカ渓谷まで連れて来る。

後は谷底まで移動させ爆破ポイントまで誘導すれば第一段階は終わりだ。


「よし、最終仕上げだ。みんな気合を入れて行け!」


私は部隊を鼓舞しながら最後の仕上げに取り掛かからせる。

部隊は攻撃と後退を繰り返しながら魔獣キマイラをポイントまで誘導した。


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