14「総力戦②」
「死神を半減させることに成功したが、こちらの戦力も大幅に減ってしまった。残った戦力で死神を討伐しなければならない」
「だけど、頼みの剣士が半分になってしまっては、死神を引きつけておくことはできないぞ」
半ば諦め顔のガルドも怪我を負っている。
次の戦いはこれまで以上に神経を使う物になりそうだ。
「次の作戦は戦力を集中させ短期戦に持ち込む。最大の火力で死神達を一網打尽にするんだ」
「魔法使いやプリーストはいいとして、物理攻撃が効かない相手に俺達、剣士と弓使いはどうやって戦えばいいんだ?」
私の提案に、剣士のリーダーが疑問を投げかけて来た。
「それは武器に魔法を帯びさせる方法がある。まだ、試したことはないが比較的弱い魔法なら武器に魔法を帯びさせることができる。その武器なら死神にも効くはずだ」
「そ、そんな方法があるのか!?」
周りにいた戦士たちは一同に驚いた顔を浮かべ。
お互いの顔を見合わせながら、武器を手に取った。
大胆な作戦であるが、武器に魔法を帯びさせることは物理的に可能だ。
「しかし、魔法が効果的に発動している時間は限られている。だから、短期戦に持ち込まなければならない。今ある戦力を全部集中させて攻撃をするんだ」
「わかった。タクトを信じるよ。みんないいな、次の作戦は短期集中戦だ!」
ガルドが士気をあげるように叫ぶと、周りにいた戦士たちが一同に声を上げて応えた。
最後の戦いの幕が降ろされた。
私は高台に陣取り、作戦の指示を出す。
「魔法使い!サンダーボルトで剣士達の武器に雷を帯びさせろ!」
「わかったわ、タクト。雷雲より生まれし雷、雷神の雷となりて、大地を切り裂け、『サンダーボルト!』」
エリザの返事の後を追うように、他の魔法使い達も詠唱をはじめる。
その間に剣士達は剣を天に翳すと、その時を待った。
空が黒い雲に覆われ、稲光が縦横無尽に走る。
そして次の瞬間、雷光が剣士達の剣に降り落ちた。
「これが魔法を帯びた剣か!すさましい威力を感じる。これならイケる。ようし、お前達、死神に剣をぶち込むんだ!」
青い稲光を帯びた剣は、まさに魔法剣。
ガルドは士気を高めると、剣士達を率いて、死神達へ突っ込んで行った。
私の読み通り、剣士達の魔法剣は死神達を捉える。
剣士達は水を得た魚のような勢いで死神達を対峙していた。
「次はプリーストだ!レイの魔法を唱えるんだ!」
「わかりましたわ、タクトさん。天空より溢れし光、数多の閃光となりて、大地を貫け『レイ!』」
そして、すぐさま私弓使いに指示を出した。
「弓使い達は空に向かって矢を放つんだ!」
「任しとけ」
弓使いは横一列に並ぶとすぐさま弓を構えた。
そして呼吸を合わせて一斉に弓を放つ。
その間にプリースト達の詠唱が終わる。
「よし、プリースト。弓使いの放った弓を目掛けてレイの魔法を放つんだ!」
「天空より溢れし光、数多の閃光となりて、大地を貫け、『レイ!』」
次の瞬間、空から光の光線が降り注ぎ、無数の矢に光を纏った。
そして、その光の矢は雨のごとく死神達に降り注いだ。
剣士と弓使いの二弾攻撃で、死神達はほぼ壊滅状態。
残った死神も一匹残らず殲滅した。
「あーあ、終わっちゃった。今回は私の出番がなかったね」
「プリシアには最後の仕事があるよ」
そう言って、私は少し残念そうに呟くプリシアに、最後の仕事を与えた。
それは勝利を歓迎する花火の打ち上げだ。
プリシアは意気揚々と花火に点火する。
すると、白煙をあげながら空に花火が打ちあがった。
緊急事態を逃れた街ではちょっとしたお祭りが催されていた。
冒険者達を称えるように街の至る所に勇者象が飾られ。
リーフやきらびやかな装飾が店のあちこちに施されている。
主役の冒険者達は広場で街の人達と酒を酌み交わす。
その横でダンスを踊りながら、勝利を分かち合っていた。
「まるで、お祭りね」
「無理もないさ。みんなの力で緊急事態を乗り越えたのだから」
グラスを手にしながらエリザが嬉しそうに言って来る横で、私は祭の様子を眺めていた。
酒に強いガルドは剣士達と酒の飲み比べ。
ルーンはテラスに腰を掛けながら、出し物を見物している。
それぞれが思い思いの時間を過ごしていた。
「タクト、あれ食べたい!」
プリシアは露店のジャンクフードに魅了されている。
涎を垂らしながら、ガラス越しにホットドックを見つめていた。
「わかったよ。買ってやる。ひとつでいいか?」
「三つ!」
「そんなに食べるのか?」
驚いている私をよそに、プリシアはお腹を押さえて腹ペコをアピールして来た。
若いから食欲旺盛なのはわかるが、お腹を壊さないだろうか心配だ。
「おじさん、これ三つください」
「はいよ、三つね」
露店のおじさんはアツアツのホットドックを袋に入れ渡して来る。
私はお金と引き換えにホットドックを受け取った。
「プリシア、食べ過ぎるなよ」
「わかってるって」
そう答えるプリシアだったが、ホットドックを受け取るなり勢いよくかぶりついて食べはじめた。
「ところでタクト。私達も踊らない?」
「踊りはちょっと苦手だな」
「心配ないわ。私がリードしてあげるから」
エリザは私の手を取ると、半ば強引にステージに引っ張り上げる。
そして、エリザの手を取りながら、リズムに合わせてステップを踏んだ。
「あっ、ごめん」
「気にしないでタクト。はじめは誰でもそうだもの」
足がもつれてエリザの足を踏んでしまうと、エリザは優しく言って来た。
エリザはどこでダンスを習ったのだろうか。
いいとこのお嬢さんとかかもしれない。
私とエリザは心行くまでダンスを楽しんだ。




