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133「ケンタウロス戦」

タクト達はグルンベルグ軍500の兵を率いてグルンベルグ王都の東に聳え立つウルの山岳地帯にやって来た。

ギルド情報によればウルの山岳地帯にケンタウロスが出没するようになったのだと言う。

ケンタウロスは半人半馬の怪物で精霊の使いとも呼ばれているモンスターだ。

こぞって人間を襲うことはないが、一度暴れると手をつけられない状態になるらしい。

ケンタウロスがウルの山岳地帯に縄張りを張ったことで元々いたモンスターはグルンベルグ王都付近まで追いやれてしまった。


「精霊の使いって呼ばれるくらいだから強いのか?」


――ケンタウロス――

特性:群れで行動する半人半馬の怪物

全長:3メートル

知性:高い

耐性:なし

弱点:なし

特徴①:気性が荒い

特徴②:武具を使う

生息場所:ウルの山岳地帯

倒し方:額を貫く


「さほど大きくないが知性が高い。その上、ゴブリンと同じで武具を使うモンスターだ」


ゴブリンと違うところは知性が高いことだ。

知性が高いと言うだけで私達と同じように考えて行動するようになる。

それは戦況を見極めて戦略を立てると言うこと。

言わばケンタウロスと戦うことは他国の軍と戦うようなもの。

訓練を積むには十分過ぎる相手なのだ。


「武具を使うのならクーデター制圧の時と同じね」


その指摘は最もだ。

おそらくケンタウロスが使う武器は剣、槍、弓だと思われる。

ケンタウロスは騎馬隊と弓部隊と同じ戦力を持っていることになる。

どれだけの軍勢で来るのかはわからないが、私達グルンベルグ軍といい勝負になるだろう。

ちなみにグルンベルグ軍は騎馬隊、槍部隊、弓部隊、魔術師、プリ―スト共に100ずつの500だ。

クーデター制圧の時よりも人員は少なくなっているが小隊である方が訓練はしやすい。

グルンベルグ騎士団の中でもえりすぐりの者達を集めた。


グルンベルグ軍は戦闘の経験は豊富なため連携攻撃には慣れている。

足りないのはモンスターと戦う経験だ。

モンスターは人間とは違い耐性を持っていたり弱点があったりする。

あいにくケンタウロスは耐性も弱点もない。

より対人間に近い形で戦闘が出来る相手だ。

だだしモンスターであることを忘れてはならない。

大きさも力も人間以上なのだ。


「精霊の使いとも呼ばれるケンタウロスとどう戦うつもり?」


ケンタウロスの最大の特徴はその機動性だ。

グルンベルグ軍の騎馬隊に匹敵するほど機動力が高い。

いわば動きが素早いとも言える。

それに加えて有り余る力と激しい気性だ。

そこから考えうるに正面から衝突することが予想される。

剣と槍を持ったケンタウロスが先陣を切り突っ込んで来る。

その陣を支援するように弓を持ったケンタウロスが後方支援をして来るはず。

ならば、こちらも騎馬隊と槍部隊で対抗する必要がある。

槍部隊を正面に配置しつつ、騎馬隊を両サイドに回り込ませてケンタウロスを取り囲む。

弓部隊で槍部隊の後方支援をさせつつ魔術師とプリ―ストで追い詰める。

ケンタウロスは魔法が使えないことがこちらの勝機に繋がるだろう。


「戦い方はこれまでと大きな変更はない。ただ、ケンタウロスがどれだけの軍勢で襲って来るかによって変わるがな」


すると、切り立った崖の上まで辿り着いた。

崖には向こうの崖までつり橋がかかっている。

崖の向こうを見やるとケンタウロスの影がちらほら見えた。


「ケンタウロスだ!」

「おいおい、ケンタウロスはいいけど、こんな所で戦うのか?」


崖の高さは100メートルほどあるだろうか。

崖の下には大きな川が流れている。

しかし、崖から落ちたら命はないだろう。

すると、様子を伺っていたケンタウロスが去って行った。


「ケンタウロスも考えているようだな。戦いの場所はここではないと」

「どう言う意味だ?」

「誘っているんだよ、私達のことを」


私は先頭を切ってつり橋を渡って行く。

それに続くようにグルンベルグ軍も釣り橋を渡って行った。

ガルドはひとり訳の分からない顔をしていたが。


つり橋を渡りケンタウロスがいた場所まで来ると視界が切り開らかれた。

崖の向こうは広大な丘陵地帯になっていて戦場にはピッタリの場所だった。

その中央にケンタウロスの群れが集まっている。

数にして300はいるだろうか。

剣と盾を持ったケンタウロス、槍を持ったケンタウロス、弓を持ったケンタウロスと共に100ずつ。

リーダーらしきケンタウロスは一回り大きなサイズだった。


私達、グルンベルグ軍は丘陵地帯まで辿り着くと陣形を構える。

正面に槍部隊に隊列を組ませ、両脇に騎馬隊を配置する。

弓部隊は槍部隊の後方で魔術師とプリ―ストはその両脇に。

するとケンタウロスも陣形を創りはじめる。

リーダーを先頭に剣と盾を持ったケンタウロスが正面に。

槍を持ったケンタウロスは両脇に。

そして弓を持ったケンタウロスは後方に配置させた。

しばしの間、両者は睨みあう。

戦場を裂くように強い風が土煙を上げながら吹き抜けて行く、と。


ケンタウロスのリーダーが剣を振り下ろすとケンタウロス達が進軍を開始した。

それに対抗するように私も指示を出して部隊を進軍させる。

ケンタウロスは剣を振りかざし土煙を上げながら槍部隊にぶつかる。

ガルド率いる槍部隊も応戦しながらケンタウロスと戦闘をはじめる。

同時にケンタウロスの弓部隊の矢が弧を描いて槍部隊に降り注ぐ。

すかさず私はルーン達プリ―ストにプロテクションをかけるように指示を出した。


ルーン達プリ―ストは両手を組み詠唱に入る。

すると今度はケンタウロスの槍部隊が両サイドから攻めて来た。


「相手も考えて来てるようだ。騎馬隊!ケンタウロスの進軍を止めよ!」


グルンベルグ軍の騎馬隊は両サイドから迫るケンタウロスの槍部隊の群れとぶつかる。

そしてエリザ率いる魔術師部隊に指示を出す。


「エリザ!ダイヤモンドダストでケンタウロスの動きを止めるんだ!」


エリザ達魔術師部隊は両手を翳して魔法の詠唱に入る。

ここまでは戦術通りだ。

すると、東側から土煙が立ち上る。


「何だ?」


ケンタウロスの別動隊が奇襲攻撃を仕掛けて来たのだ。

数にして100。

ここへ来ての奇襲とは考えたな。

はじめからこれが狙いで全軍で攻めて来たのか。

私はプリシア達弓部隊に指示を出す。


「プリシア!敵の奇襲部隊に向けて攻撃を開始せよ!」


グルンベルグ軍の弓部隊は東側に隊列を組み直して矢を一斉に放つ。

土砂降りのような無数の矢がケンタウロスの奇襲部隊を襲う。

しかし、ケンタウロスの奇襲部隊は散会してこちらの攻撃をかわした。


「機動力の高いケンタウロスに分があるか」


近接戦に持ち込まれたらこちらが不利だ。

私はエリザ達魔術師に別の指示を出す。


「エリザ。魔術師部隊の半数をこちらによこしてくれ。ファイヤーウォールで応戦するんだ」

「えっ、ちょっと待ってよ。今、詠唱中なのよ」

「そっちの支援は半数で大丈夫だ。それよりこっちの対応の方を優先してくれ」

「わかったわよ。もう、人使いが荒いんだから」


エリザはブツクサ文句を言いながら魔術師部隊の半数を連れて来て魔法の詠唱に入る。

そのタイミングでルーン達プリ―ストの詠唱が終わり、


「「天より降り注ぎし光、星光の束となりて、かの者を守らん『プロテクション!』」」


ガルド達、槍部隊の前に光の壁を創った。


「助かったぜ、ルーン。敵の弓攻撃が酷くて苦戦していたところだったんだ」


すると、ケンタウロスの弓部隊は一斉に攻撃を止め両サイドに散会して行った。


「あいつら諦めて逃げて行くぞ」

「違う。プロテクションを避けて両側から仕掛けて来るつもりだ」


ルーン達プリ―ストが創り出したプロテクションは一枚板のように防壁の形状を創る。

しかし、両サイドを覆うほど大きい壁ではない。

なので両サイドから攻められたらひとたまりもない。

ケンタウロスはこちらの弱点をつくような攻撃を仕掛けて来ている。

さすがは高い知性を持っているモンスターだけのことはある。


「ガルド、今のうちに体制を整えておけ。ダイヤモンドダストと同時に仕掛けるんだ」

「任せておけ。俺達の本気を教えてやるぜ」


すると魔術師部隊が詠唱を終えてダイヤモンドダストの魔法を放つ。

ダイヤモンドダストはケンタウロスの剣士部隊を氷像へと変えて行く。

いくら機動性の高いケンタウロスと言えども広範囲の全体攻撃が出来るダイヤモンドダストはかわせない。

剣を持ったケンタウロス部隊は沈黙をした。


「よっしゃー!俺達の出番だぜ。食らいやがれ『爆裂剣!』」


ガルドは勢いよく飛び上がると大剣を翳して爆裂剣を放つ。

ガルドの大剣がケンタウロスを捉えると大爆発を起こして包み込む。

ケンタウロスは粉々に砕けて地面に伏した。

それに続くように槍部隊が刺突をケンタウロスに向かって放つ。

刺突はケンタウロスの額を貫き粉々に砕いて行った。


一方でケンタウロスの奇襲部隊がプリシア率いる弓部隊の前まで辿り着く。

そして剣を振りかざして一斉に襲いかかって来た。

間合いを詰められたら弓部隊達に勝機はない。

プリシア達弓部隊は散会しながら後退をはじめた。


「タクト、助けて!」


これで陣形が崩されてしまえばこちらが不利になる。

かと言ってケンタウロスの奇襲部隊を追撃する兵力はこちらにはない。

しかし、進撃を止めることは出来る。

エリザ達魔術師部隊が詠唱を終えて魔法を放つ。


「「爆炎より生まれし炎、業火の壁となりて、世界を覆い隠せ『ファイアーウォール!』」」


ケンタウロスの奇襲部隊の足元に赤い魔法陣が浮かび上がると。

奇襲部隊を取り囲むように業火に焼かれた炎の壁が競り立つ。

ケンタウロスの奇襲部隊は攻撃を止めて周りの様子を伺う。

これで敵の奇襲部隊の進軍は止めることが出来た。

しかし、その背後にはケンタウロスの弓部隊が迫っていた。


「プリシア!体制を立て直して敵の弓部隊の進軍を止めよ!」

「わかったわ。みんな行くよ!」


プリシア達弓部隊は隊列を組み直すと追撃して来るケンタウロスの弓部隊に一斉射撃をはじめる。

その猛攻にケンタウロスの弓部隊は足を止め弓で反撃して来る。

双方を飛び交うように矢の雨あられが降り注ぐ。

攻撃は互角と言ったところか。

するとルーン率いるプリ―ストが応援に加わる。

今度は防御ではなく攻撃側として。


「ルーン。レイで敵の弓部隊を一掃せよ!」

「任せてください。みなさん行きましょう」


ルーン達プリ―ストは両手を組んで魔法の詠唱に入る。

ガルド達はと言うとケンタウロスの剣士部隊を半数あたりを倒していた。

その間にダイヤモンドダストの効果がなくなり再び応戦をはじめる。

魔術師部隊は次の魔法を放つため詠唱に入っていた。

それぞれ自分のやるべきことがわかって来たようだ。


騎馬隊はケンタウロスの槍部隊と交戦中だ。

どちらの攻撃も拮抗しているようで一進一退の攻防となっている。

ガルド達の方が片付いたら応援に向かわせよう。

するとルーン達が詠唱を終えて魔法を放つ。


「「天空より溢れしし光、数多の閃光となりて、大地を貫け『レイ!』」」


ケンタウロスの弓部隊の足元に金色の大きな魔法陣が浮かび上がると空が白い雲で覆われる。

そして天雷の如く、無数の光の光線が降り注いだ。

ケンタウロスの弓部隊は光線に撃ちぬかれて倒れて行く。

レイは光の魔法の最下位の魔法だけれど、プリ―ストの数に応じて効力を増して行く。

ルーンをはじめプリ―スト500人分の力を結集させた魔法なのだ。

ケンタウロスの弓部隊のほとんどはレイの餌食となり沈黙して行った。

それに追従するかのようにプリシア率いる弓部隊の攻撃が降り注いだ。

それでもケンタウロスの弓部隊は攻撃をやめることなく反撃して来る。

しかし、プリシアとルーン達の攻防に打ち破れ討ち取られて行った。

同時にガルド達もかたがついたようで騎馬隊の応援に回っていた。


「これで敵の剣士部隊と弓部隊は殲滅出来た。残りは槍部隊と奇襲部隊だけだ」


エリザ達のファイアーウォールは効果が切れてケンタウロスの奇襲部隊が姿を現していた。

ケンタウロスのリーダーはガルド達の方で交戦をしている。

なので奇襲部隊を指揮しているモノはいない。

しかし、ケンタウロス達は仲間を殺されたことで酷くいきり立っていた。

こちらの戦力はエリザ率いる魔術師が50、ルーン率いるプリ―ストが100、プリシア率いる弓部隊が100の250。

ケンタウロスの奇襲部隊の100に比べたら数で勝る。

しかし、こちらは間接攻撃がメインで敵は近接攻撃がメインだ。

間合いを詰められたらこちらが不利であることは間違いない。

ならば敵を近づけさせないようにプリシア達弓部隊で攻撃をしつつ、魔法で殲滅するしかない。


「プリシア!敵をこちらに近づけさせるな!」

「わかってますって」


プリシア達弓部隊は隊列を組むと一斉に攻撃をはじめる。

ケンタウロスの奇襲部隊は散会しながら攻撃をかわす。

その間にルーンに指示を出す。


「ルーン。グラシスで敵の動きを封じるんだ!」


ルーン達プリ―ストは魔法の詠唱に入る。

同時にエリザ達魔術師に指示を出す。


「エリザ。サンダーストームで敵を殲滅せよ!」


エリザ達魔術師も詠唱に入る。

グラシスの魔法は最下位魔法なので詠唱時間が短い。

サンダーストームの魔法が放てるまでは時間稼ぎになる。

それまではプリシア達に活躍してもらわなければ。

ケンタウロスの奇襲部隊は素早く動きながら弓攻撃をかわしている。

それを狙い撃ちをするように矢を放つが敵の動きが早くて交わされてしまう。


「もう、動かないでよ。当たらないじゃない」


プリシアも爆弾を放つタイミングを見失っているようで苦戦していた。

その間にルーン達が詠唱を終えて魔法を放つ。


「「大地よりい出し伊吹よ、漆黒の鎖となりて、かの者を絞殺せ『グラシス!』」」


ケンタウロスの奇襲部隊の足元に緑色の魔法陣が浮かび上がると無数のツタが伸びて来る。

ツタは逃げ惑うケンタウロスの足を捉えてツルのように絡みついて行く。

ケンタウロス達は暴れ回るが、ツタがキツク撒きついて締め上げる。

続けてエリザ達の詠唱が終わり魔法を放った。


「「瞑無より生まれし蒼き閃光、雷神の裁きとなりて、大地を震撼させよ『サンダーストーム!』」」


ケンタウロスの奇襲部隊の足元に黄色の魔法陣が浮かび上がると空が真っ黒に染まる。

そして暗黒の空を裂くように青い閃光が轟きとともに走り出す。

天を裂くような轟音と共に無数の雷がケンタウロスの体を貫いた。

ケンタウロス達は白い煙を上げながら、その場に倒れ込む。

100ほどいたケンタウロスの奇襲部隊は神の一撃により全て躯と化した。


「やるじゃん、エリザ!」

「みんながいてくれたおかげよ」

「何だよ、そっちも片付いたのか」

「ガルド。もう終わったの?」

「あたり前だよ。あのぐらい朝飯前だ」


ガルド達の活躍もあり全てのケンタウロスを殲滅させることが出来た。

グルンベルグ軍の騎士達も満足そうな顔を浮かべている。

しかし、これはあくまで訓練の一環だ。

本番はこうもうまくは行かないだろう。

何せ相手は魔獣なのだからな。

それでも経験を積めたことは大きい。

グルンベルグ軍の弱点もわかったことだし、次の訓練ではそこを補強しておこう。

私達は気分よくグルンベルグ王都へ戻った。


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